
“公私混同経営”の正しいやり方
“公私混同”の理想のカタチ
(株)バイタルエリア
代表取締役 上田健一氏
“公私混同”というと、あまりいいイメージはない。「公」と「私」を分けることがビジネスパーソンとして正しい振る舞いという風潮があるからだろう。仕事によっては不正につながることもある。だが、やり方次第では、「公私混同」が、事業を活性化することにつながることもある。ソフトウエアの開発・保守サービスを行う「バイタルエリア」の上田健一社長は、週末のほとんどをサッカーに費やす現役のアマチュアフットボーラー。「中心はサッカー」と公言するものの、そこで得たものを「公」である仕事でも存分に活かし、快調に業績を伸ばしている。
仕事とサッカーが深くシンクロした経営術
サッカー好きの社長は別段珍しくはない。アマチュアレベルで現役を続けながら、社長業と両立する人も少なくない。だが、上田社長のサッカーへの力の入れようは、半端じゃない。あくまでサッカーが中心にあって、社長業を行っているといっても過言ではないほど、「公」と「私」が深くシンクロしている。

まるでサッカーチームの選手募集サイトのようなつくりの採用サイト http://www.vital-area.co.jp/
まずは社名。「バイタルエリア」は、攻守における重要なゾーンを指すサッカー用語。それを「企業の最重要エリアを守り、未来を描くITマネージングリーダーへ」という意味を込め、ネーミングした。ただのサッカー好きではない、サッカーへの強い思い入れを感じさせるトピックといえるだろう。
新卒の「採用サイト」はさらにサッカーへの想いがあふれている。確かに「採用サイト」に違いない。だが、その項目は「入団サイト」となっている。さらに「チーム バイタルエリアは、常に優秀な選手を求めています!」と記されている。思わず、プロサッカーチームの入団ページと間違えてしまうほどだ。
長年携わってきたサッカーの力をフル活用
サイト内には、上田社長も「監督」として登場し、社長ブログへのリンクが張られているが、その内容は、ほとんどが上田社長の週末のサッカーの活動報告。これほどまでに、サッカー一色の企業は珍しいといえるだろう。念のため言っておくと、もちろん、サッカー関連の会社ではない。ソフトウエアの開発・保守がコアコンピタンスだ。

サッカーのことを話すと止まらなくなる
「小学校からはじめて現在まで続けているサッカーに、私はいろいろなことを教えてもらいました。特にどの世代でもキャプテンを務めていたので、マネジメントについては多くを学びました。サッカーでは不測の事態もよく起こります。ですが、ビジネスでは基本、そうしたことはほとんどありません。ですから、たいていのことは乗り越えられるんですね」と上田社長はサラリという。
同社の業務は、その性質上、企業に入り込み、チームを結成し、案件に取り組むスタイル。従って、サッカーにおけるチームワークやコミュニケーション能力が存分に活かせる。野球と違い、ピッチ上で自分で判断するシーンも多いサッカーは、現場での急な変更やトラブルなどに対しても、臨機応変な対応力にも長け、ビジネスパーソンとしての潜在力が高い。上田社長はそう信じ、サッカーで体に染み込ませたマネジメント力を発揮し、現場ではプロジェクトリーダー(PL)として、大きなプロジェクトを効率的に回す。
入社人材も“サッカー高学歴”がズラリ
実際、その“入団選手”は、ユース世代の日本代表候補や全国大会優勝経験者など、サッカーにおけるハイレベル人材がズラリ揃う。2014年度からは新卒採用もスタートし、両親との面談に加え、一人暮らしをさせることで、スキルはもちろん、人間力もしっかりと磨き上げる。サッカーを熟知する上田社長だけに、サッカー経験者がどうすれば伸びるのかのツボもキッチリとおさえているのだ。
「別に社会人リーグに参戦するための“戦力補強”じゃありませんよ(笑)。サッカーの力を信じているだけです。だからサッカーをプレーすることについては、あくまで、遊びレベルでできればいいんです。だた、トップレベルでサッカーを続けてきた人の就職難という問題もある。だから私は、入社する社員には、不安定な営業でなく、技術者になるようアドバイスしています。そうした経歴がなくてもしっかり教育する環境は与えます。数年で立派なPL・PMレベルまで育てるのが使命と思っています」と上田社長は、先を見据えた人材育成への想いを熱く語る。
人材としての恩恵はもちろんだが、仕事の受注においても、上田社長のサッカー人脈が案件につながるケースも少なくないといい、同社の業績はまさに“サッカーの力”が押し上げているといっても過言ではない。現役プレイヤーとして、サッカーを存分に楽しみながら、サッカーで培ったもの全てをビジネスにも転用し、相乗効果を生みだしている上田社長。まさしく理想的な“公私混同経営”の実践といえるだろう。
公私の比重はサッカー>>仕事

芝生のサッカースタジアムを保有するという壮大な夢に突き進む上田社長
「仕事」にも「サッカー」にも厳しい姿勢を貫く上田社長。あえてその比重を聞くと「仕事はあくまでサッカーをするため。人生は仕事だけじゃないですから」とキッパリ言う。起業に至るまでに、技術者としていくつかの企業を渡り歩き、フリーランスも経験するなど、豊富なキャリアと実績を積み重ねてきた上田社長には、大手企業から誘いもあったというが、「自分が社長になれば、スケジュールは自分で決められるから、サッカー重視の生活ができる」と全てを断り「バイタルエリア」創業の道を選んだ。その意味では、上田社長のサッカーへの想いが凝縮された一つのカタチが「バイタルエリア」ともいえる。
上田社長の週末のスケジュールは、ほとんどがサッカーで埋め尽くされている。なんと1年先までビッシリだ。こんなことが可能なのも、仕事のスケジュールは社長である自分の権限でコントロールできるからにほかならない。そのかいもあってか、上田社長は、所属チームで2013年度の東京都シニアサッカーリーグ(40歳以上)で優勝。しかも、自身が決勝ゴールまで決めるおまけつきだ。
「私」の目標を「生涯現役」に設定する上田社長は、同時に「芝生のサッカースタジアムを建設したい。そのためにもっと会社を大きくしたいですね」と「公」における壮大な目標を胸に秘め、“現役サッカー選手社長”としてピッチ上、そしてビジネスロードを妥協なく突き進む――。
【会社概要】

2013年の東京都シニアリーグでは決勝点を決め優勝
会社名: 株式会社 バイタルエリア
創業: 2002年04月01日
設立: 2010年07月07日
住所: 〒105-0022 東京都港区海岸1-2-3 汐留芝離宮ビルディング21F
資本金: 3,000,000円
代表取締役: 上田 健一
取締役: 関口 伸夫
顧問: 原田 一男 (元丸紅)
顧問: 根田 利勝 (元東芝システムテクノロジー代表取締役)
顧問: 鴨井 功 (元NECシステムテクノロジー代表取締役)
顧問: 小川 弦一郎 (元三井住友銀行、元日本総研取締役)
顧問: 鳴海 隆治 (元京セラ)
顧問: 西村 俊郎 (元NECビックローブ 常務取締役)
顧問: 羽田野 耕一 (元日電卓越軟件科技(北京)有限公司 総裁)
事業内容: ソフトウェアの開発・保守