
残業代ゼロになったら働き方はどうなるの…
お毒 “残業代ゼロ”へ向けて動きがまた活発になってきたようね。
猫田先生 ホワイトカラー・エグゼンプションの件だな。8年前に導入が検討され、再燃って感じだな。「残業代ゼロ」ってことばかりが注目されて、労働者側からは総スカンだが、もう少し冷静になる必要はあるぜ。
お毒 どう見たって、サービス残業を助長させる制度にしか思えなんだけど…。時間じゃなくて成果で評価でしょ。成果が出なけりゃいくらでも働けってことじゃない。
猫田先生 そうやって考えるから悪くしか見えねぇんだよ。成果を出せばすぐに終わってもいいんだぜ。それでもしっかりと給料ももらえる。いい制度じゃねぇか。言われなくても似たようなことをしてしっかり成果を出している企業もすでにたくさんあるぜ。そもそも、一体なぜこの制度の導入を政府が叫んでいるのか…。すでに右肩上がりの時代は終わり、産業構造が変化してるだろ。つまり、モノをたくさん作って売る時代が終わって、知的な部分で成果を出す仕事が増えてきてるわけだ。報酬を時間で考えることがナンセンスになりつつある。もちろん、全員にあてはまる制度ではねぇ。それは確かだけどな。
お毒 なんだか、全労働者に適用されるかのような勢いじゃない。そうじゃないのね。
猫田先生 いまのところ、年収1000万以上で高度な職業能力を持つ労働者が対象で、業種についても検討中だ。仕事によっちゃ、どうしても時間がかかるモノだってあるわけだし、そうした部分はしっかりと見極めるハズだぜ。
お毒 ふーん。でもなんだか嫌な予感はしちゃうわね。いつもこういうのは、結局、全体に拡大されていくイメージが強いのよね。それに成果で評価するっていっても、どこまでフェアにできるのかしら…。日本で成果報酬制を導入した企業はほとんど失敗してるじゃない。
猫田先生 課題はたくさんあるが、導入することで、サービス残業じゃなく、ダラダラ残業はなくなるんじゃねぇか。労働者の意識革命につながる可能性は秘めてるよ。“居るだけ”で手当がもらえる、悪しき日本型スタイルは撲滅だな。ということは、成果を出すために各自が必死に知恵を絞る必要が出て来るってこと。ただし、導入においては、同時に残業代ゼロに便乗して長時間働かせる企業にくぎを刺す意味でも、その上限時間をしっかりと国が設定する必要はあるだろうな。でなければ、死人が出ちゃうぜ。そうなったら、これまでは訴える相手が会社だったのが、国になりかねねぇぜ。
お毒 これからは労働条件の表記が「時給=1000円」から「接客10人=1000円」とかになっちゃうのかしら…。やっぱりやだわ。客が来なけりゃ、アタシは24時間店にいないと1000円すらもらえなくなるじゃない。ホワイトフェイス・イグゾースト(顔真っ青ゲッソリ、疲弊しまくり)、ヤダーっ、やっぱり死んじゃうわよ。
猫田先生 座布団2枚!。とにかく、勘違いしちゃいけないのは、もはや産業構造が昔と違う。だから働き方を考える上で、新しい概念が必要なんだ。単に時間で報酬を決めるのはあまりにもナンセンス。山積みの書類を処理する仕事もあるが、実働5分で大金を稼げるような仕事も増えている。だから、何らかの線引きをする必要があるってこと。導入によって残業が横行するよりも、別の形で売り上げアップを考えるようになるだけのことだとワシは思うんだがな。健全に導入が進めば、の話だけどな。
伝衛門 ブルーカラー・エグゼンプションはねぇんですか。
お毒 残業代以前に労働時間ゼロのアンタにこの話に加わる資格はゼロ。シッシっ。
猫田先生 政府がブラック企業対策に精を出していることを考えると、この流れは、少し矛盾があるんだよな。そこが少しひっかる。ブラック企業にとっちゃ、これほど都合にいい制度はねぇからな。もちろん、そんなつもりは毛頭ねぇんだろうけどよ。でも、この動きをもっと推進させてぇなら、そうした不信感を払しょくする、もう少し明確で分かりやすいメリットを提示してほしいところではあるな。メリットという次元の問題ではねぇんだろうけどさ。