企業風土

女性管理職が活躍する会社の働き方

投稿日:2013年9月12日 / by

どうすれば女性管理職を増やせるのか

NJC会社フロント

株式会社エヌジェーシー

女性の活用が叫ばれる一方、女性管理職については世界に大きな後れを取る日本。女性が職場で真の意味で活躍するためには、女性管理職が増えなければ、その実現は困難といわざるを得ない。(株)エヌジェーシーの現在の女性管理職は4割以上。今後さらに女性役員の登用も目指すという。同社はいかにして、女性の活用を実践しているのか――。

女性管理職率42%

男女の壁はほとんどない

こうした風景も同社では全く違和感がない

少子高齢化により、労働人口が減少すること避けられない中、女性の活用が今後企業活力を高める“戦力”として、重要になりつつある。ところが、現実にはまだまだオフィスの女性活用は十分とはいえない状況にある。ある調査では、66%が女性管理職「5%未満」と回答している。正社員比率でさえ十分でなく、男女格差がくっきりと出ている現状がある。

同社の女性管理職率42%という数字。これがいかに高いものかは、男性サラリーマンなら体感でも理解できるのではなかろうか。医療業界の人材サービスという、女性が活躍しやすい分野であることを差し引いても、参考にすべき点は多くありそうだ。

なぜそんなに女性管理職が誕生するのか

前線で活躍する女性社員

NJCでは多くの女性が活躍する

「そもそも圧倒的に女性が多い職場であるという点で、この数字はある意味では当然のものといえるかもしれません。しかし、弊社として、女性の活用が重要であるという強い認識は持っておりまして、今後はさらに女性の役員を増やしていきたいと考えています」と数少ない男性のひとり、営業本部常務取締役本部長の古賀茂氏は説明する。

女性が多いから女性管理職が多い、というのは当たり前のようだが、現実にはなかなかそうもいかない。そもそも女性が管理職になりたがらないケースや、やはり管理職は男性、という根強いムードもまだまだはびこっている。実際に、同社でも必ずしも主体的に管理職なることを望んでいる女性ばかりではないという。それでも、多くの女性が管理職となっているのは、同社の風土が強いフォローとなっているといえる。

キーは男性の意識にあり

大きなカギは、男性の意識だろう。古賀氏は、女性管理職が多い状況について「特にそういう意識はしないですね」と明かす。つまり、同社では男女の区別で上下関係を判断することはしないのである。象徴的なのは、同社トップの理解だ。自身が女性中心の職場に長くいたことに加え、家族の介護関係で仕事との両立の難しさを体感しているだけに、女性の労働環境の整備の大切さを十分に理解している。

加えて、同社では社長自ら参加する、ランチミーティングを随時開催。各拠点における部署や役職の垣根を越えたコミュニケーションの場を率先してつくり、社員との相互理解を深め、気軽な意見交換の中からワークライフバランス改善につなげる取り組みも行っている。ともすれば、こうした制度は形だけになりがちだが、同社の場合、トップが自らの耳でしっかりと現場の意見を吸い上げることで、現実に即した対応を可能としているといえるだろう。

柔軟な対応力で復職フォロー

女性社員活躍の要素裏付けるデータがある。同社の直近1年間の産休取得者数は5人で、その内4人が復職。復職しなかった1人も夫の海外赴任が理由。制度はあっても、会社の無言の圧力や様々な事情から、復職をあきらめるケースも少なくない中で、非常に高い割合といえる。

最近のケースでは、同じ時期に3人の女性が産休を取得。その後復帰したが、それぞれ「パート」、「時短勤務」、「フルタイム」と偶然ながらも、見事に三者三様のワークスタイルだったという事例がある。子供の事情、家庭の事情、物理的な事情など、女性は子供を抱えることで様々な制約が加わるが、こうした柔軟な対応を可能にしたのも、トップがしっかりと末端の状況を把握しているからこそといえるだろう。

今後は女性役員の育成も

古賀本部長

今後は女性役員育成にも力を入れていくという

同社では今後、さらに女性管理職を増やすべく、新たな施策にも取り組む。“次世代リーダー育成プログラム”だ。同社ではこれまで経営を意識したサービスの研究および発想力のアップとプレゼン能力などビジネス力アップを軸にした社内塾を開催してきたが、さらに上を目指すプログラムを実施する。具体的には、経営課題を自ら設定し、実際の業務に落とし込み、その解決策を探るというもの。きわめて実践的であり、現実的に役員育成を見据える。

「女性管理職を増やすにはその先にある女性役員を育成する必要がある。ロールモデルができることで女性社員も目標が設定できる。そしてなにより、女性の役員が入ることで経営にも女性目線を入れることができ、新しいものが生まれてくる可能性も広がる。5年内には何らかの形として成果を出せれば、と考えている。とにかくまず、選出された人は今回の経験によって、視野を広げてほしい」と同社古賀本部長は期待を寄せる。

プログラムへの参加は、選抜制を採用。ここでも社長が先頭に立ち、直々に該当者に声をかけたという。男性社員も対象に入っているが、結果的には女性が9割以上となった。指名された女性にとっては重圧もあるが、それ以上にやりがいを感じ、なにより、トップの本気を直接感じながらのチャレンジとなり、自ずと力が入る。ちなみに、今回の選抜メンバーには、子育て中のママや介護の家族を抱える女性、新婚女性など多様な人材が含まれており、様々な境遇の女性役員誕生を想定しているのかもしれない。

女性活用という、これからの日本に課せられた重要なテーマ。分かってはいてもまだまだ現実との乖離が大きな部分だが、まずはトップが本気で取り組むことが大きなカギを握る。その上で、管理職登用となれば、必ずしも当人が乗り気でないケースも多いが、しっかりと“器づくり”をし、男女の偏見のないムード作りを徹底する――。同社の取り組みから透けてみえるのは、そうした本気のムード作りと明確な方向付け。男社会の方程式とは少々異なるアプローチが、やはり必要のようだ。


<女性管理職登用の動き>

女性の管理職比率を高める動きを経営戦略に盛り込む企業が少しずつ目立ち始めている。日産は、2016年までの中期経営計画で管理職の女性比率を約7%から10%に高める目標を設定。イオンは部課長や店長などの管理職に占める女性の割合について、平成32年までに現状の7%程度から50%に引き上げる方針を明らかにしている。女性登用は政府の成長戦略の柱にも掲げられており、今後の日本の国力を担う労働力としてもその活用が大いに期待されている。

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