企業風土

働き方改革推進のために必要となる“春闘改革”【瓦の目】

投稿日:2015年1月23日 / by

賃上げ濃厚は本当に喜べるのか

もはや賃上げだけがテーマでは無意味となりつつある春闘

もはや賃上げだけがテーマでは無意味となりつつある春闘

今年の春も温かさを感じられそうな雲行きだ。春闘の話だ。昨年に続き、今年も賃上げの方向で企業側も概ね理解を示している。経済界がアベノミクスに同調している事を考えれば、まだ途上にある中で政府の賃上げ要請を無下にはできない背景もあるだろう。総じてみれば決して悪い方向ではない。

しかし、この賃上げ要請は、国民にアベノミクスの効果を実感させる意味合いが強い。つまり、企業は儲かっている。にもかかわらず国民はそれを実感できない。なぜなら、企業が利益を溜めこんでいるからだ。内部留保するのでなく、吐き出して社員に還元しなさい、というワケである。そう考えれば、国民にとってはありがたい要請だ。

一方で、政府は延期したもののさらなる消費税増税を断行する。物価も上昇しているし、させている。もしも、賃上げがなければ、国民は景気の停滞を実感してしまう。それはアベノミクスの失速と同義となるので、避けねばならない。そうした側面から、賃上げ要請を見ると、誰のためでもない、アベノミクスのための天の一声といえる。その成功が経済や国民にとって本当にベストならそれでいいが、そうなる保証はどこにもない。その意味では、なんとも独善的な印象はぬぐえない。

“闘う”テーマはもはや賃金ではない…

さらにいえば、政府が推進する「時間より成果」の動きとリンクさせれば、賃上げは、結局は長時間労働を助長する方向へと進ませかねない。なぜなら、企業側は内部留保したいところをあえて<賃金を上げてやった。しっかりと結果を出してくれ>、となる一方、労働側は、結果が出なかった場合、時間をかけてでも成果を出すことに血眼になるしかなくなるからだ。「時間より成果」の「時間」は8時間労働の消滅を意味する。従って、4時間でもいい反面、10時間でもいいとうことだ。賃上げはそうした意味で後者に作用する可能性は否定できない。

賃上げが大手中心という点も問題だ。労働者の大半を占める中小、さらには非正規の賃金も同時に上がらなければ、真の意味で国民にその恩恵は伝わらない。その意味で、新しい働き方へのシフトが必然の流れの中で、本気でそこに向き合うなら、今後の春闘は、正社員としてのあり方、さらに、契約形態による賃金格差の是正も明確にテーマとして織り込むべきである。政府が真剣に国民の幸せを考えているなら、要請するのは賃上げではなく、春闘の在り方そのものに踏み込むべきであろう。右肩上がりの時代が終わってなお、昔ながらの春の闘いが続く様では、日本の明るい未来など期待できない…。

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