企業風土

“銭闘”から“人生ゲーム”へのシフトが必然の春闘【瓦の目】

投稿日:2015年3月20日 / by

質が問われるこれからのベア

timecard春闘は概ねベア回答で決着した。昨年に続く高水準の賃上げで、アベノミクスがいよいよ好循環するのか見ものである。それにしてもいまや、ベアの意義は大きく変わりつつある。社員のやる気を促進するという側面は不変だが、どう上げるのかが、企業の浮沈を占う上でも非常に重要になりつつある。

若手、非正規、シニア、女性…。こうしたいわゆる本流から少し外れた層の賃金をいかに調整するのか…このさじ加減が、ベアを単なるコスト負担とするか、相乗効果を生む「力水」とするのか、のカギを握る。若手の給与は、人口動態を踏まえても上げるのが妥当だろう。大幅に割合いが増加している非正規もアップが当然といえる。シニアにおいては、下げるのが妥当と思われがちだが、これは熟考の余地があろう。女性についてもしっかりと状況を見極める必要があるだろう。

要は、今後、ますます多様化が進む労働市場において、給与体系も多様にならざる得ないということだ。「同一労働同一賃金」という言葉がある。この「同一労働」が、働き方によってバラエティに富むのだから、当然「同一賃金」では、バランスが崩れてしまう。分解して時給ベースとすることで、時短勤務の社員に合理的に報酬を支払うことも可能だが、そうなると1時間でどれだけの仕事ができるのかを厳密に可視化する必要が出てくる。これは決して簡単なことではないし、本当に労働者の動機づけになるかは疑問だ。

多様性と報酬のバランスをどう調整するのか

理詰めで考えれば、仕事と報酬の関係を合理的な形に収めることは可能だろう。だが、同時に必ずひずみも発生する。働くのは人間だからだ。体調や年齢、人間関係、家庭の事情…など、働く人にはその数だけの背景がある。そうしたことを踏まえながら、十分にマインドにも配慮してはじめて、適性な報酬を設定することができる。非常に煩雑で困難な作業だ。だが、逆にいえば、ここをしっかりしたものにできれば、企業はまさに多様性にあふれ、活気がみなぎり、創造性に富むのではないだろうか。

超高齢社会ニッポン。他に類を見ない歪な人口動態の中、どうやって豊かな社会を築いていくのか。世界がその背中に注目している。上質に成熟していくのか、急速に腐っていくのか…。もはや毎春の賃上げ闘争は、単に懐を温める“銭闘”ではなく、各企業がこの難局をどう乗り越えるか、というレベルの高度な経営戦略であり、日本の命運を握る会社員全体が対象の究極の“人生ゲーム”となりつつある。

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