企業風土

革新的な職場に共通する2つの要素

投稿日:2014年10月9日 / by

人生に占める職場での時間

講演するゲンスラー アンド アソシエイツ インターナショナル リミテッド ワークプレイス/コンサルティング部門リーダー プリンシパル、 ワシントンD.C.オフィス ジャネット・ポーグ・マクローリン氏(千葉・幕張メッセ)

講演するゲンスラー アンド アソシエイツ インターナショナル リミテッド ワークプレイス/コンサルティング部門リーダー プリンシパル、 ワシントンD.C.オフィス
ジャネット・ポーグ・マクローリン氏(千葉・幕張メッセ)

「仕事は好きだが職場は嫌い」。多くの社員がこんな風に思っているとしたら、かなり危険な兆候だ。経済情勢が不透明な中、企業が生き残っていくためには、職場環境は極めて重要な要素となる。革新を起こすべく、優秀な人材を集めることはもちろん、各社員が取り組む仕事そのもののクオリティを高める上でも、オフィス環境が大きな影響を持つからだ。

よく考えれば当然だろう。人生80年とすると、労働に占める時間は大まかに9万時間。睡眠時間を除くと人生の約四分の一を労働が占める計算になる。これはあくまで全人生だが、労働のスタートを20歳からと想定すると、3割近くが働いている時間ということになる。それだけの時間を過ごす場所が、好ましくない環境だとすれば、いい成果物を期待できるわけがない。

世界のワークプレイスをデザインするゲンスラーは、2008年から米国でのワークプレイス調査を行っている。その結果、アメリカにおいては、4人に1人しか自身のニーズにふさわしい職場環境にいないという実態が分かっている。つまり、75%ものビジネスパーソンが、職場で効率的に働けず、生産性を落とし、革新性や貢献度を落としているということだ。

米最新調査からみる職場変革のヒント

世界的に生産性が低いとされる日本では、さらにこの数値が悪いことは間違いないだろう。グローバルの中で取り残される日本企業の問題点がワークプレイスにあると仮定したとしても、あながちズレてはいないといえる。では一体どうすれば、世界に後れを取る日本を、少しでも世界へ近づけることができるのか。最先端のIT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2014」(10月7日~10月11日=幕張メッセ)で公開された同社の最新の米国ワークプレイス調査からそのヒントを探ってみよう。

最新調査で同社が導き出したのは、「(1)理想的なワークプレイスとは、集中とコラボレーションのバランスが取れた空間である。さらに(2)選択がパフォーマンスを向上し、革新性を創出する」ということである。

具体的に説明しよう。(1)は、集中できるスペースを確保しつつ、コラボも出来るデザインということ。(2)は、いつでもどこでも働けるという多様な選択肢を持つ企業がより革新性を持ち、より高いパフォーマンスの社員を有するということである。

両方を実現できるワークプレイスはつまり、自立した社員がそのパフォーマンスを最大限に発揮できるということである。自分の意思で行動し、自分の決断で最善を選ぶ。その上で、同僚や社外の人間と意見を交えながら、アイディアを高め、煮詰めていく。グールグルやフェイスブックなど、アメリカの先進企業はまさにそうしたスタイルで次々と革新を生みだしている。

新しい働き方へのシフトが進む中で、日本でもこうしたスタイルを導入する企業は着実に増えている。テクノロジーの進化によって、日本古来の風土を凌駕する革新の波が押し寄せていることもこうした動きを後押ししているといえる。とはいえ、まだまだ事例は少なく、「箱」と「中身」が見事にマッチしているとも言い難い。

次世代の職場では他社との同居も

ネットワンシステムズ

職場変革を提案するネットワンシステムズのオフィスはショールームも兼ねており近未来的だ

同社は、今後のワークプレイスの流れも予測している。それは、企業が他企業にスペースをシェアするというもの。すでに実践している企業もあるというこの大胆なスタイルは、機密情報の漏えいリスクということ以上にイノベーションを重視するが故の動きだ。コワーキングスペースでは、個人間でこうした連動が実現しているが、その企業版ともいえる、大きな流れだ。

革新を目指すグローバル企業がどんどん先へ進む中、日本でこうした動きが実現するには、かなりの時間を要するだろう。だが、競争から「共創」への流れは徐々にでき始めている。予兆レベルでいえば、大企業の年功序列の廃止といった動きもある。社内評価に一般消費者や外部有識者を加えたところもある。大企業によるクラウドソーシング活用の増加もこうした流れの一環といえるだろう。なにより、各社が自社のリソースのみで革新を生み出すことに限界を感じ始めている。

イノベーションを生まねば生き残れない…。もはやそうした視点でなく、いまこそ純粋に、仕事は働く人と働く場所で行われることに立ち返り、どんな場所なら人はより良く働き、パフォーマンスを発揮するのか。そこに焦点をあてることが成熟フェーズにある日本企業にとって、これからは重要になりそうだ。職場は、人生の3分の1を費やす場所。そこがワクワクする場なら、企業も個々の人生も潤う。新しい働き方へのシフトにおいて、ハードとしての職場変革は必須といっていいのかもしれない。

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