働き方

HRテックの進化はなぜ、転職を増大させるのか

進化するHRテックで採用プロセスが一気に短縮

あちこちで人手不足が叫ばれている。耳をすませば、応募はあってもしっくりくる人材が少ないという側面も少なくないようだ。「Aさんのような人が欲しい」。そうしたところから採用活動がスタートしても、そのプロセスでは多大な労を要し、それでも希望の人材と出会えない――。人事領域に着実に浸透するHRテックを活用することで、こうした課題を解決することも可能になるかもしれない。

(株)カオナビがこのほど開発した人材採用アシスタントサービス「TALENT FINDER」は、クラウド人材管理ツール「カオナビ」上で社内人事データがそのまま募集要項に反映され、提携先の求人サービス「リクナビHRTech 転職スカウト」へ直接求人募集できる機能。管理画面で「こんな人ほしい!」ボタンをクリックすると、その人事データが求人サービスへいき、それをもとに求人サービスから希望に合った人材候補がレコメンドされる(下図参照)。

この機能により、採用プロセスで人事を介す必要がなくなり、現場の温度感がキープされたまま選考が進行。よりスピーディーにかつ、従来の履歴書や面接ベースの選考によるミスマッチ軽減も期待される。

このデータが充実している人ほどマッチング精度が高まることになる

気になるのはその精度。利用企業によって登録データが異なるため、それ次第の側面もあるが、登録データは自在に変更可能で、この機能を見越したデータを充実させることなどでより高めることは可能だ。逆にいえば、この機能の導入を機に、人事データの項目見直しをすれば、欲しい人材をより採用しやすくなるだろう。

人事データからレコメンドされた求職者候補

「AIを活用したサービスが登場するなどHRテックは急速に拡大しています。そうした中で弊社はクラウド人材プラットフォームとして産声を上げ丸6年。1,100社導の導入実績があり、その活用ノウハウを蓄積していることが強みです。この機能は、人材データプラットフォーム構想を推進するもので、人事マスターデータのルール統一や整備なども視野に入れています」と同社広報の宮地正惠氏は説明する。

人材データプラットフォーム構想は、散在する社員のデータを集約し、人事マスターデータとして活用するためのプラットフォーム構想。同社ではこの運用のため、データの揺らぎをなくすフォーマットも開発し、HRテックにおける人材データの有効活用を推進していく。

この構想の実現と並行し同社は2020年には導入企業3,000社を目指す

まだ構想段階ながら、準備は着々と進められており、実現すれば人材の流れにも大きなうねりが起こりそうだ。先の「Aさんのような人が欲しい」の場合、最小限のプロセスでかつ、かなりの高精度で目的を達成。さらに退職者ともつながり、データを保有し続けることで出戻り採用などで活用…。人事に関する取り組みがデータベースにシフトすることで、不透明感や非効率が解消され、組織構成やそのマネジメントの最適化、ひいては社会全体の人材最適化へもつながる道が拓けてくるだろう。

急速に拡大するHRテックはいま、プラットフォームの覇権争いも激化している。求人やスカウトサービスを基盤に総合型へシフトする企業も少なくないが、タレントマネジメントシステムをベースに拡張する同社のプラットフォーム構想は、入社前から退職までの人事情報を押さえることができる点で優位ともいえ、今後の展開が注目される。

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