働き方

理由から考察する転職活動の成功と失敗の境目

ビジネスパーソン1万人調査からみえてきた転職の“質”

人口動態や産業構造の変化で、人材市場が大きくうごめいている。水面下では転職活動も活発で、多くのビジネスパーソンが“隣の芝”をチェック。エン・ジャパンが同社が運営する「エン転職」のユーザー1万人に行ったアンケート調査は、ビジネスパーソンの転職状況とともにその背景をあぶりだしている。今回は、その理由別に失敗しない転職をテーマに結果を考察してみる。

転職のきっかけトップとなったのは「給与が低い」。全体で43%と4割を超え、特に20代では過半数に迫る割合となっている。回答した29歳男性の声は切実だ。「給料が30万円を超えるのに、いまの会社だとどのくらいかかる計算したところ、思ったより時間がかかることが分かった」。給与アップのあてがあるにしても、いまのご時世、企業寿命は3年とも5年ともいわれ、待っていれば共倒れになる可能性もある。回答者の意見は深くうなずけるところだ。

同理由ではその他、「7年在籍してもほとんど給与アップはなく、本社に勤めない限り報酬もなく、転職を決心した」(34歳女性)や「役職についても忙しいだけでほとんど給与も変わらない」(32歳男性)などの声が上がり、低調な給与水準が、社員のやる気をそぎ、将来不安も誘発することで転職への思いを強めていることが透けてみえる。

「給与が安い」が理由の転職は、仮に現状、その他の環境が恵まれているとしても、転職をした方が得策といえる。理由は2つ。ひとつは、給与を上げられないほど業績が芳しくなく、会社としての将来性もおぼつかないこと。もう一つは、必然的に同業他社で好待遇の会社が選択肢になりやすく、スキルに自身さえあるなら、転職後の定着も比較的容易なことだ。逆にいえば、高報酬につられ、背伸びして転職をすると、辛い展開が待ち受けている可能性があるので要注意だ。

次に多かった理由は「やりがい・達成感がない」(40%)。これについては、「周りの同年代が活躍している中、自分だけが成長せず、社会貢献していないように感じる」(35歳男性)、「今の仕事に対し、本当に相手のためになる提案なのか、自分の都合を押しつけているだけではないかという疑問が離れない」(31歳男性)といった声が上がっている。「なんのために働くのか」に通じる、本質的な理由といえるが、この理由での転職は一度踏みとどまることが肝要だ。

なぜなら、単に自分がやりがいを感じられていないだけのこともあり得るからだ。つまり、やっている仕事の本質を理解せず、売り上げ目標や上司の声に振り回されているだけということだ。それを排除し、仕事内容のみにフォーカスすれば実は十分にやりがいがあるということは珍しくない。周囲が活躍しているように見えるのも、本当のところはどうかは分からない。うまくやりがいを見出して頑張っているだけかもしれないし、そう思い込んでいるだけかもしれない。となれば、転職しても状況は変わらず、虚しさが残るだけになりかねない…。

3位に入ったのは「業界・企業の将来性に不安を感じる」(31%)。これについては、内側にいて心底そう感じるようなら、すぐにでも転職したほうがいいかもしれない。理由として上がっている声としては「今後、海外展開をしてかなければいけないが、経営層が英語すら全く話せず、他国の競業企業に明らかに劣っている点を指摘しても努力しようとしないので将来はないと感じた」(36歳男性)、「一族経営で指示内容に振り回されることが多く、退職者も絶えないので不安を感じた」(25歳女性)などが上がっている。

上がっている声からすると、内側から強い危機感を感じているようで、すぐにでも転職した方がよさそうではある。ただし、踏みとどまる方がいいケースもある。業界は転換点に差し掛かっており、変革が求められる中で、全く違う分野への進出を図るケースもあるからだ。これについては、会社の動きを待つのではなくある程度主体的にそう仕向けなければ実現の可能性は低いが、ピンチはチャンス。そう思える忍耐力とパイオニア精神があるならあえて残留という選択肢もアリだろう。

閉塞感が漂い続ける日本経済。そのことが人材市場に大きな影響を与えていることは間違いない。加えていま、かつての成功法則が無意味になり、産業構造の変革が求められている。転職理由のトップ3は、お金とやりがいと産業そのものの“劣化”であり、言い換えれば日本経済に未来がないことを示しているともいえる。だからこそこの時世で転職を考えるならむしろ、より慎重に、リサーチも単なる業界調査に留まらないレベルで臨む。そうでなければ、飛躍のつもりが後退、ということにもなりかねない…。

 

 

 

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