働き方

全国初の民間女性副市長の採用はなぜ成功したのか

1700人の関門を突破した女性が備えていた資質とは

全国初の民間女性副市長を採用し、しっかり成果にも結び付けている大阪・四条畷市。前例のない採用を同市はどうやって成功に導いたのか。同市東修平市長の証言からみえてくるのは、スキルを超えた“目線”という地方自治体独特の資質の重要性だ。

女性副市長選考のポイントを明かした東市長

人口減少で衰退局面が続く四条畷市の市長に2017年1月「現職最年少」で就任した東氏。強い危機感を抱きながら、東市長が掲げたのは、「変えること」「守ること」「創造すること」の3つ。そこで取り掛かったのが、「女性副市長の公募」。男性中心の体制で、真に市民目線で「変えること」はできないという問題意識からだ。

自治体の採用では前例はなかったが、「変革」が求められる任務にはやりがいがあふれており、想像を超える応募が集まる。その数なんと1700人。魅力があるとはいえ、地方自治体にしては異例の数だった。

これまでに自治体における採用支援の実績のあるエン・ジャパンのサポートを受けたこともあり、質の面でも優秀人材が多く集まり、選考はハイレベルなものとなる。そんな難関を突破し、副市長に選出されたのが、現副市長の林有理氏だ。

東市長が振り返る。「前例がなく、本当に応募が来るのかさえ不安な中でスタートしたが多くの応募があり、本当に優秀な人も多かった。大企業で大きなプロジェクトを成功させたような方も少なくなく、プレゼンは見事で、課題解決に対する策もすぐに提示する。そんな中で林副市長だけは、常に相手の目線に立った提案で他の応募者とは異なっていた。役所がやりたいことでなく、市民がやって欲しいことをやるのが我々の役目。最終的に林氏を選ぶのは難しくなかった」。

自治体で活躍するために不可欠な資質

民間企業で活躍した人材に優秀人材は少なくない。課題解決のノウハウも持ち合わせている。だが、そこに市民の目線がなければ、自己満足に終わりかねない。その点で、応募動機として「まちづくりそのものに飛び込んでみたい」があり、当時、生後間もない子の母という状況。出身も大阪だ。当事者意識という観点で林氏が、市民目線に立っていたのはごく自然の成り行きだったのかもしれない。

就任後、2歳の娘のママとして市民目線で「改革」に臨んだ林副市長は、子育てしやすい環境整備を次々実現。受動喫煙防止条約の制定や親子で利用しやすいお店マップの配布など、母として自ら現場に足を運び、感じた課題を市民目線で解決策に落とし込んでいった。こうした取り組みは市民からも評価され、さらに2018年11月には微増ながらなんと人口増を達成した。

民間からの優秀人材獲得に成功した同市はさらなるまちのアップグレードを目指し、このほど、新たに人材募集を開始。ICT、公聴、助産師の独自ポジションの他、保健師、市職員など全7職種で募集を開始した。

女性副市長の活躍という“前例”ができたことで今回も同市にはやりがいに満ち溢れた人材からの多くの応募が予想されるが、重要なのは目線。民間で磨き上げた十分なスキルがあり、課題解決能力があったとしてもそこに市民目線がなければ、受け入れられづらい。転職の成功ノウハウがストレートに応用できないのが、自治体転職。応募を検討するなら、そこは少しでも念頭に入れておくのがスマートかもしれない。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について