働き方

なぜ転職理由の上位にはいつも「人間関係」が君臨するのか…

巻き戻し検証で探る転職理由

大手転職サイトの最新の転職理由をみると「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」、「上司または人間関係に失望」が2媒体でトップ。「他にやりたいことがある」がトップの媒体もありましたが、マイノリティという印象です。こうしたランキングでは、この結果でも分かるように「人間関係」を転職理由にするケースがとても目立ちます。なぜでしょうか。

順を追って検証してみましょう。求職者は自分ができる仕事、興味のある仕事を取っ掛かりに就職先を探します。あくまでも報酬という人もいるでしょうが、それは除外します。首尾よく、就職が決まり、そこで新しい社会人生活がスタートします。ここからいきなり、離職へつながる兆候をチェックしていきましょう。

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まず、まともな会社なら教育係がつくでしょう。その人物が、とても冷たく嫌味な人だったらどうでしょう。「仕方ない」、「最初だからガマン」。とりあえずは踏みとどまるかもしれません。とはいえ、新鮮な気持ちと高いモチベーションはいきなり大幅に低下することでしょう。

不快な気持ちを抱きながらも業務につきます。あなたはこれまでのスキルを活かし、スムースに業務に取り掛かります。「いい感じだ」。ところが、快調に作業をしていると、横やりが入ります。「ウチのやり方でやってくれないと困るんだよ」。誰よりも快調に仕事をこなしているのに、全く持って意味不明です。ここでまた、やる気がごっそりと削がれます。

この辺りであなたは感じるでしょう。「何だ、この会社は…」。でも、まだ入社1週間。「すぐに転職も面倒だし、もう少し我慢だ」。なんとか、不愉快なムードを吹き払い、頭角を現し始めたあなた。上司の信頼も得られ始め、周りの対応もだいぶよくなってきました。するといきなり、「これやってくれ」。直属の上司から大量の業務が押し付けられます。

不信感が退職決断に変わるタイミング

「私を信頼して、こんなに仕事を任せてくれたんだな」。少し不満を抱えながらも、あなたは前向きに業務をこなします。しかし、連日の残業です。周囲に手伝ってくれる人は誰もいません。やがてあなたは、心身をすり減らし、疲れ果てます。そこで、少し仲良くなった同僚に相談します。するとその時の話が、上層部に筒抜けで、悪者扱いされます。人間不信に陥ります。

慰めてくれる仲間もいましたが、「仕方ないんだ。頑張ろう」が精一杯。会社に巣食う、やる気を削ぐムードを誰も改める気はありません。「失敗したな…」。あなたはついに転職を後悔することになります。水面下での転職活動再スタートです--。

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どうでしょう。あくまで、退職することを前提に、入社時から退職へ至る兆候をチェックしましたが、気が付きましたか?。全てのプロセスで、人が関与していることを。高い能力で、仕事は順調にこなし、頭角もあらわしていました。しかし、ことあるごとに、「人」が、つきかけた勢いにブレーキをかけてくるのです。会社は人の集まりで成り立っているわけですからある意味仕方がありませんが、だからこそ、人間関係がうまくいかなければ、力を存分には発揮できないのです。

ビジネスパーソンンにとって、その力を発揮できないことほど不幸なことはありません。その意味で、転職理由の上位に「人間関係」が君臨するのは、必然といってのかもしれません。付け加えるなら、会社を外から眺めてもみることのできない決定的な要素が「人間関係」という点も大きいでしょう。入ってみなければ分からない。「人間関係」とは、職場選びの上でなんとも厄介なものなのです。

本来なら、転職理由は「他にやりたいことがある」が健全です。ひとつの仕事を経験し、それなりの満足を得たから職場を変える。それが、正しい転職というものだからです。人間関係が問題で転職するということは、満足以前に、力を発揮できる場ではない、ということです。会社が人を活かせてないだけでなく、有能な人材が無駄に時間を費やしていることでもあり、経済全体にとっても大きな損失です。その意味では、「人間関係」が転職理由の上位に君臨し続ける日本は、かなりヤバい状況にあるともいえます。

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