働き方

35歳転職限界説崩壊時代のミドル転職成功への5つのヒント

激化する人材流動化の波に飲み込まれないために

転職成功のリミット年齢は35歳はいまは昔。人材流動化が激化する中で、ミドル層の転職成功率が右肩上がりで上昇している。人口減少による人手不足を背景にした求人の増加に加え、先行き不透明な経済情勢の中で、よりスキルの高い即戦力を求めるニーズが増大していることなどが、追い風となっている。“35歳転職限界説”が崩壊したいま、その成功へのポイントはどこにあるのか。

拡大するミドル転職市場の背景

(株)インテリジェンス(本社:東京都千代田区)が運営する転職サービス「DODA(デューダ)」が行った最新の調査では、2015年下半期の転職者の平均年齢は32.1歳で、2007年下半期の調査開始以来、過去8年間で最も高い年齢となっている。さらに同期の35歳以上の転職成功者の割合は28.2%で、過去3年間で2倍以上伸長している。

DODA調べ

DODA調べ

この結果だけをも見ても、もはや35歳転職限界説が崩壊したことは明白だ。その要因について、DODA編集長の木下学氏は、次のように解説する。

「今回の調査では『24歳以下』の若手と、『40歳以上』のミドル層の割合の変化が目立つ結果になりました。『40歳以上』の転職者増加については、中途採用のマーケットが拡大し、『35歳転職限界説の崩壊』を裏づける結果になったと言えるでしょう。東京オリンピックの開催に向けた需要の高まりやインバウンド市場の拡大に加え、グローバル化やIT化の動きに向けて、設備投資や事業拡大を進める企業は増加傾向にあります。原油安や株価の下落などによる経済懸念がないとは言いませんが、求人ニーズは引き続き高く、転職マーケットはこの先も活況な状態が続くものと考えられます。転職希望者にとって今は、性別、年代を問わず、やりたい仕事やあこがれの仕事に挑戦できるチャンスや、キャリアの選択肢が豊富なタイミングと言えます」。

→ 高齢社会は転職年齢も底上げ社会

ミドル転職を成功させる5つのポイント

ミドル層にとってはいままさに大きなチャンスが到来している転職戦線。一体どうすれば、この波にうまく乗り、“第二の社会人人生”を成功に導くことができるのか。落とし穴はないのか…。5つのポイントを指摘する。

1:市場を見極める

積極的に求人している企業は、当然ながら、人材が不足している。その理由はなんなのか。有望ながらきつくて人が集まりづらいのか、今後の隆盛は確実ながら、新しい分野などでいい人材が採れないからなのか…。求職を希望する業界の将来展望をしっかりと見極め、自分の方向性とマッチしているのかを的確に判断することは、ミドル転職成功への必須条件だ。「ミドル歓迎」といった求人にホイホイと食いついても、その中身まで深読みできなければ、その先には後悔しか残らないだろう。

2:専門性を活かす

ミドル層に求められるのは熟練の技術や積み重ねてきた経験だ。例えばそれが技術なら、それがどんなもので、どこまでできて、どんな応用範囲があるのかを的確に求人企業へ説明できれば、転職シーンでも大きな武器となる。逆にいえば、それが出来なければ、宝の持ち腐れになりかねない…。マネジメントスキルももちろん、立派な武器だ。どれくらいの人数を束ね、どのようにチーム力を最大化し、難題を切り抜けたのか、などを再現性のあるノウハウとして人事担当者にプレゼンできれば、引く手あまたになることは間違いないだろう。

3:異業種を狙う

ミドルでの転職は、どうしてもこれまでのキャリアの延長として考えがちだ。だが、いまの時代はむしろ、異業種を狙う方が、いろいろな点で利があるといえる。なぜなら、そもそも求人を出す企業が、既存にないものを求めているケースが多いからだ。家電メーカーであってもIT系人材へのニーズがあったり、金融系でもエンジニア系の需要が増大するなど、IoTの拡がりもあり、すぐれた“異能”へのニーズは急速に高まっている。「自分は○○だから」。そう決めつけ、転職対象を狭め、現状と同じ業種しか狙わないのは、この転職チャンスはいかせても、満足度は並み以上にはならないだろう。

4:経営・経営企画にニーズあり

35歳以上に求人企業が期待するのは、その年齢ならではのキャリアでもある。最高ランクといえる、経営の経験は、比類なき武器になるのはいうまでもないが、ビジネスを俯瞰し、戦略を練り上げる経営企画のスキルや経験も貴重で強力な戦力として重宝される。現在の求人増大の背景には、新たな事業を始める場合やインバウンド需要増大に伴う店舗拡大なども少なくなく、そうした場面で的確な判断力、戦略を描ける人材は特に求められている。そうした経験はなくとも、積み上げたキャリアで思いを形にし、採用の場でしっかりアピールしてみるのも“華麗なる転職”を狙うなら、挑戦してみる価値は十分にある。

5:お金よりやりがいを重視する

決して、「年収をアップを諦めろ」、という意味ではない。しかし、ミドル層が転職で本当に手にすべきは、実は「やりがい」というのが実態ではないだろうか。「このままこの会社にいても先が見えている」。そうした理由で転職を考えているとすれば、まだ30年近くある転職後の人生を考えても、重視すべきは「やりがい」となるハズだ。これまでのキャリアを整理し、本当にやりたいことをあぶり出し、これだと思った求人に応募する。仮に当初は給与が低くても、そこがやりがいを持って働ける職場なら、自ずと報酬アップも後からついて来るだろう。なにより、充実した会社員生活を送れるという、金銭には代えがたい大きなリターンが得られるハズだ。

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なぜ転職したいのかを考えぬくことが重要

ミドル転職増大の波に乗り切る処方箋を5つ提示したが、転職が必ずしもバラ色の人生を約束してくれるわけではない。現状から逃げるように転職し、いわゆるブラック企業にはまり込み、後悔するミドルも少なくないのだ。重要なことは、なぜ転職したいのかを、明確にすること。人間関係も大事だが、ミドルになってその理由では、転職しても同じ結果が待ち受けている可能性は否定できない。それよりも、残りの社会人人生をいかにすれば有意義に、充実して過ごせるかを最優先に転職の理由をハッキリさせることが重要だ。それが出来れば、イコール、ミドル転職もほぼ成功といっていいだろう。

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