働き方

やがて人類がひとつの共同体に近づくとき、境界線をどう考えればいいのか…

投稿日:2017年3月27日 / by

愛国心は高まっているけれど…

18歳で日本を出た時、私には愛国心などありませんでした。だって日本しか知らなかったのですから、そんなものは持ちようが無かったのです。日本ではない国に行き、日本人ではない人たちと出会い、私の中に少しずつ「日本人である」というアイデンティティーが育っていったのです。


アメリカで5年近くを過ごすうちに、私の愛国心はどんどん強くなっていきました。日本に帰ってからも、歴史小説を読みまくり、日本人の素晴らしさ、日本文化の素晴らしさを再認識し、愛国心は高まっていったのです。

今でも私は、愛国心溢れる、良き国民であると自負しています。でもやっぱり、国境はいつか無くなるべき、政府は統一されるべきではないかと、考えています。なぜなら国家と国境を守るために、人類は莫大な投資をし続けなくてはならないからです。隣の国が軍事力を高めれば、こちらもそれに負けないように、高めなくてはならない。その繰り返しによって、軍事予算は拡大し続けているわけです。国境を守るために、そして、国家を守るために。

人や文化を守ることは大事だと思います。でも国境を守ることは本当に大事なのでしょうか。たとえば新宿区と中野区は、その境界線に軍隊など置いていません。本州と九州の境界線にも、九州と沖縄の境界線にも、軍隊は必要ないのです。なぜ軍隊が必要ないのか。それは、どちらも同じ国家だからです。そんなのは当たり前だ、と思われるでしょうか。私はそうは思いません。

あるべき境界線となくなるべき境界線

日本は島国なので、イメージが湧かないだけなのです。大陸にいけば新宿区と中野区の境界線みたいなところに、国境があります。そしてその境界線を守るために、お互いが軍隊を構えているのです。沖縄と山形は同じ国家ですが、違う文化が尊重され、残っています。それは日本人同士だから、可能なのでしょうか。

アメリカでは、たくさんの人種が一緒に暮らしています。それによって争いごとも起こりますが、お互いを尊重することによるイノベーションも生まれます。それはまさに、アメリカの強さの源泉でもあるのです。トランプさんは一時的に、アメリカを孤立に向かわせるかもしれません。でも最終的には、世界はひとつの国に、人類はひとつの共同体に、近づいていくのではないでしょうか。

隣の家と、壁の高さを競い続けることに、意味などない。私たちは薄々、その事実に気がつき始めています。だからこそヨローッパでは、その境界線を無くすために、様々な努力が続けられているのです。

いずれ世界はひとつに向かう。私はそう思っています。ではその時、個人の境界線はどうなるのでしょう。隣の家との境界線も、無いほうが平和なのでしょうか。あるべき境界線と、なくなるべき境界線。それを真剣に考える時が、近づいているのです。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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