ムダを取り込むことがお金になる理由とは
変人・安田の境目コラム
ムダを省くだけでは利益は増えない
欲しいをつくり出す。それこそまさに、経営者のやるべき仕事。でも簡単ではありません。なぜなら経営者には、合理的な人が多いから。
ムダを省き、効率よく仕事をする。それは、とても大事なことです。どんなに売上を上げても、ムダが多かったら利益は残りません。
では、ムダを省けば利益は増えるのか。いえ、残念ながら、そう単純ではないのです。なぜなら、ムダがない商品は、価格以外の競争力を持たないから。
たとえば、ムダがないエアコン。それは、部屋がきちんと冷えるエアコン。ムダな電気代が、かからないエアコン。そして、販売価格も安いエアコン。
消費者から見た、ムダがない商品。それは、きちんと機能して、安いこと。きちんと部屋が冷えて、安いエアコン。きちんと米が炊けて、安い炊飯器。
この場合のムダとは、最大公約数のムダ。つまり、みんなに共通するムダ。それをどんどん省いていくと、結局は同じような商品になってしまうのです。
ムダでお金を設けるための着眼点
では、どうすればいいのか。ムダをなくすのではなく、ムダを取り込むのです。取り込むべきは、お金になるムダ。それは、誰かにとっての「欲しい」ムダ。
何万円もする釣り竿や、自転車や、ゴルフクラブ。欲しくない人にとっては、ムダ以外の何者でもありません。でも欲しい人にとっては、ムダではない。だから高いお金を出して、買うわけです。
誰から見ても、これは絶対にムダではない。実は、そういうものは、とても限られています。つまり、一人ひとりの目から見たら、世界はムダなもので溢れているのです。
自分にとって、ムダではないもの。普通はそれだけを、眺めていればいいのです。ゴルフが好きなら、ゴルフ場に行けばいいし、骨董品が好きなら、骨董店に行けばいい。
でも、経営者は、それではダメ。なぜなら、ムダなものの中にこそ、儲けのヒントがあるからです。
経営者に必要なのは、売れるムダを見抜く能力。自分が欲しいか、欲しくないか、ではなく、「こりゃあ、良いムダだ」と分かること。つまりは、ムダのセンスが重要なのです。
ムダのセンスを磨くこと。そのためには、ムダなことをするしかありません。ビジネス書しか読まない人も、小説を読んでみる。食器に興味がない人も、高い湯のみを買ってみる。
人間社会には、ムダなものなどありません。いや、ムダこそが、人間社会の本質なのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。