働き方

挑戦が無謀でないことを体現する男が目指すゴールとは

投稿日:2017年11月24日 / by

株式会社誠/銀河ヒッチハイカーズ代表
星野誠

エベレスト登頂実現のため、多くの人を踏み台にした星野誠。行動先行主義の悪しき部分が噴出したカタチともいえるが、それだけ世界最高峰制覇への思いが強いということでもある。それにしてもなぜ、星野はそんな無謀で無茶な挑戦を続けるのか。その先には、さらに壮大なチャレンジ、そしてどうしても実現したい夢への燃えたぎる思いがあった--。

3年前のインタビュー→行動を優先するとどんな人生になるのか…

懲りない男に下った天罰

自身のわがままで、支援者が差し伸べてくれた手を振り払った星野。その直後には、ひょんなことからインドネシアIT企業の現地代表に収まってしまう。運命の悪戯といえば聞こえはいいが、実際には卑劣といっても言い過ぎでない行動だ。こんな人間がのさばれるほど、世の中はおかしくないハズだが…。

案の定、会社は立ち上げから苦境が続く。1年が過ぎても思うように利益を上げられず、気が付けば社長としての給料は実質ゼロ。その間、星野は多くの時間を「コンテンツ研究」と称し、映像コンテンツ鑑賞に多くの時間を費やしていたのだから当然報いだ。これぞ天罰、といえるだろう。それでもエベレスト登頂へのチャレンジだけは並行して続けていた星野。2016年1月に南米最高峰アコンカグァ(6,962m)登頂、同年9月には世界6番目のチョーオユー(8,201m)を制覇するなど、着々と最高峰制覇へ近づいていた。

それにしても星野。誠眼鏡の創業者としての収入はあるものの、どうやってこんな行き当たりばったりの生活を成り立たせているのか。いわく、代表に就任しているインドネシアの企業からの報酬がメインで、つつましく生活していたとのことだが…。そうはいっても、誠眼鏡として融資を受けた数千万円も、そのほとんどをエベレスト登頂に費やしており、星野のエベレスト登頂は、どうしようもないわがままと多くの人の“犠牲”の上に成り立っていると言っていいだろう。ちなみに星野は3児の父でもある。

多くの人の“犠牲”と多額の借金を背負って制覇した最高峰

まさに「全てを捨てて」、多くの人の“犠牲”と借金を背負って挑んだエベレスト登頂は、2017年5月に制覇。同年1月には南極大陸最高峰のビンソン・マシフ、2月にオーストラリア大陸最高峰のコジオスコ、9月にはアフリカ大陸最高峰のキリマンジェロ、そして10月にオーストラリア最高峰カルステンツピラミッドの登頂を果たし、星野は一気に7サミット制覇を達成する。怒涛の勢いで公約を達成した星野だが、「山頂に行った時はうれしくてはしゃぎましたが、感覚としては高尾山を上った時と変わらない感じでした。登るまでのプロセスはすごい感動や実感もありましたけどね」とその感想は意外なほどそっけない。

その理由は、そもそもなぜ、星野がエベレスト登頂を目指したのか、へ遡ればみえてくる。それは、宇宙事業への再挑戦の足掛かりとするためだ。「27歳の時、初めて自分で立ち上げた宇宙旅行の会社『銀座ヒッチハイカーズ』。3年ほどで潰れましたが、『絶対復活してやる』、と心に誓っていました。性懲りのない挑戦の数々はそのため。ようやく地球上の一番高いところを制覇でき、ひと区切りできました」と晴れやかに語った星野。宇宙事業の再開。それこそが、無謀で無茶苦茶なチャレンジの原動力だったのだ。

2017年7月、星野は晴れて『銀河ヒッチハイカーズ』を復活させる。もちろん、何をするかは決まっていない。いつものことだ。それでも、7サミット制覇のプロセスで確固たる信念はできた。「これまでは結局、なにかをやるにしても誰かに頼ったり、流れに乗ってきたのが実状。そうじゃなく、今度は自分の足で主体的にやりたい。あっと驚くオリジナルのサービスで宇宙産業に食い込みたい。それが何かはまだ何も分かっていないんですけどね」。そう無邪気に微笑み、星野はレンズの奥の目を輝かせた。

恩返しをエネルギー源に目指す究極の目標

3年前に宣言したことを“7倍返し”でクリアした星野。本人は謙遜するばかりだが、多くの人を“犠牲”にしたことをしっかりと噛み締め、人間として着実に成長して帰ってきた。いま、星野の全身にみなぎるエネルギーの大半は、そうした人たちへの恩返し実現という情念が占めている。

根回しする前にまず行動。あまりに身勝手なアクションは、社会人として、ましてや経営者として、決してほめられたものでない。だが、行動しなければ、どんな偉業も成し遂げられない。常識に縛られていては、予定調和は壊せない。3年前同様、あえてメディアに宣言することで、行動への逃げ道を自ら封鎖した星野。それは、必ずやり遂げる、という究極の決意表明でもある。次は3年後か、10年後か。その胸に抱く野望とメッセージで土産話の幕を閉じることにする。

大偉業達成直後にこの決意表明。これが星野誠、としか言いようがありません…

「10年後には宇宙事業を軌道に乗せたい。宇宙産業参入への具体的プランはまだないんですけどね。個人としては火星最大の火山、オリンポス山(標高約2万7000m)を制覇したい。これは20年後かもしれませんけどね。この3年、本当にすごい体験をいろいろする中で、ホンモノがいることをものすごく実感しました。同時にニセモノはそれ以上に多いことも知りました。ネット全盛の時代、ネットサーフィンやSNSに没頭することを否定するつもりはありません。でも、そこにどれだけホンモノがいるのか…。その時間があるなら一人でも多くのホンモノにあって欲しい。それはしみじみ思います」。(了)

前編→ 奔放不羈を地でいく男が成し遂げた偉業と愚行


<星野 誠 Makoto Hoshino>
(株)誠/銀河ヒッチハイカーズ代表。ほぼ思いつきで書き込んだ「人生のやったら面白そうリスト」に従い、前後関係無視、人間関係グダグダにしてでも突き進む“盲進”男。アイアンマンマラソン、宅建20日間合格、ゴビ砂漠250キロ…どれも未経験で無謀だが、結局達成してしまうから恐れ入る。2017年5月のエベレスト登頂は、予定の2年前倒しに加え7サミット制覇のオマケつき。もはや「無謀」というのは不適切な域に足した感のある有言実行男はいま、復活させた宇宙旅行社の代表として「いまできる人類最高地点に足跡を残すこと」を宣言し、宇宙産業での火星オリンポス山制覇を目指す。星野誠

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