
人と違うことは欠点ではなく、アイデンティティ
変人・安田の境目コラム
なぜ私はズレていることを隠していたのか
私はかなりズレた人間です。物心ついた時に、既にズレていました。そのズレを受け入れられるようになったのは、つい最近のことなのです。
ズレていることを自覚したのは、高校生の頃です。周りの同級生たちと、明らかに何かが違う。優れているのではなく、欠落している。高校生ながらに、そう自覚しました。
ズレていることを、恥ずかしいとは思いませんでした。でも同級生にバレないようには、気をつけていました。だから全員が受験勉強に向き合う中で、一生懸命に勉強するフリをしていたのです。
きっと仲間外れが嫌だったのでしょう。何とか、同じ輪の中に入っていたい。でも心の中は、疎外感で一杯でした。同じじゃない、という自覚があったのです。
ズレた自分を嫌になったことはありません。それが自分なのだと受け入れていました。でも、肯定したこともありませんでした。ズレを肯定する根拠が、私にはなかったのです。
学生時代、会社員時代、社長になってからも、ズレないように気を配っていました。ズレているからこそ、ズレているぞと言われないように。上手く、社会人のマナーに溶け込めるように。
浮く、という事が怖かったのです。それは今も同じかもしれません。信じてもらえないかもしれませんが、私は人一倍浮くことや目立つことが、苦手なのです。
40代になって気づいたズレていることの価値
ズレている自分。本当の意味でそれを受け入れたのは、40代になってからです。それが自分の価値なのだと、気がついたわけです。どんなにズレないようにしても、ズレてしまう。それが20~30代の私でした。でも結果的に、そのズレが成果を生み出していたのです。40代になって、ようやく私は自分の立ち位置を理解しました。
それまでの私は、自分のことをアイデアマンだと思っていました。ズレているのではなく、発想が豊かなのである、と。頭が柔らかいのである、と。
でも気がついてしまったのです。アイデアの源泉と言うべきもの。それがズレから生まれているという事実。それは閃きではなく、違和感だったのです。同じものが違って見えること。同じシーンなのに、人とは違う感情が沸くこと。私はそれを、欠落だと思っていました。でも今は、アイデンティティだと思っています。
結婚式なのに、おめでたいと感じない。お葬式なのに、まったく悲しくならない。そういう自分を恥じず、肯定する。周りに合わせるのではなく、自分の感情を受け止める。それが私であるから。私の人生に必要なのは、私の答えであるから。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。