
外国人労働者が増大する一方で“正門”がない日本の矛盾
【集中連載】歪な外国人労働者受け入れが招く、日本の末路Vol.1
日本企業が外国人を雇用する/採用する。少子高齢化による人手不足を背景に、こうした潮流が加速しつつある。政府も外国人労働者の受け入れを緩和する方針を示し、いよいよ日本も“開国”へ――。だが、正門は見当たらず、勝手口が点在しているのがその実態だ。歪んだ開国の先に明るい未来はみえづらい。外国人労働者や彼らを受け入れる日本企業の実状から健全な外国人労働者活用のカタチを展望する。
需要はあるのに誰も得をしないビジョンなき“開国”
いわゆるインバウンドで観光目的の訪日外国人があふれ、一見するとグローバル国家にも見える日本。コンビニやファストフードの店員も都心ではそのほとんどがアジア系の外国人だ。外国人観光客の接客ニーズ増大、少子高齢化による人手不足。需給関係が合致するこの分野にフォーカスすれば、外国人の就労事情はうまくっているようにもみえる。
だが、このシーンは日本での外国人労働者を語る上ではホンの一側面でしかない。その立場やアングルを変えると状況は一変し、まるで別モノにみえてくる。多様性が相乗効果を生み出すのが真のグローバル社会だが、日本では歪んだ“入口”が存在することで結果的に外国人労働者活用の本質がぼやけ、目くらましにするよう作用しているから始末が悪い…。
政府は2025年までに新たに50万人の外国人の就労者を増やす方針を打ち出した。技能実習による外国人労働者への規制を緩和し、新たな在留資格を設定。人手不足が深刻な建設や農業など5業種に対し、外国人労働者の活用を推進する狙いだ。技能実習を大義名分に、外国人労働者を受け入れるこの“入口”は、一見すると何の問題もないようみえるかもしれない。だが、技能実習が「移民政策とは異なる」ことを示すためだけの“言い訳”でしかない実態は、長い目で見てなんの発展性もないことが明らかで、場当たり的な印象が強く残る。
目的が“不純”で健全に機能しない就労資格
週28時間の労働が許される留学生として来日する外国人の側から就労事情をみると、また違った風景が浮かび上がる。日本語学校に入学し、留学生として就労する外国人の多くは冒頭のコンビニ店員などとして就労する。日本語が不十分でも接客にそれほど支障がなく、仕事も比較的ソフト。時給もそれなりだからだ。もっとも、その先に日本語をマスターして日本で就職という道が拓けているわけではなく、学費や来日に要した経費を稼ぎながら日本での就職を模索するのが実態で、必ずしも健全とはいえない。
外国人にとって日本での就職へ向け、壁になっているのは日本語力だ。他言語に比べても難解な日本語の習得は留学生にとって大きな障壁。中には人材としてのスペックは優秀だが、日本語が十分に話せないという理由だけで不採用というケースもあり、“開国”とは名ばかりのお粗末な実状も透けてみえる。
“規制”の仕方がアンバランスな日本
こうした事例をみるだけでも明確だが、主に単純労働において日本はあくまでも都合に合う外国人しか受け入れないスタンス。その上、入国後のフォローが薄い。だが、労働力は不足しているから門は開く。そこにはビジョンも教育も何もない。それが、日本の外国人労働者受け入れの実態だ。
当然、こんなスタンスでいいはずがない。そもそも、外国人労働者にとって、働く国は日本に限らない。他のアジア諸国ももちろん選択肢にある。特に日本に活力をもたらす高度人材にとって、日本はあくまで就労先のワンオブゼムでしかない。もはや、かつてのような経済大国とはいえない日本。おまけに、外国人労働者への受け入れ態勢がお粗末では、そっぽを向かれるのも時間の問題だ。
本連載では、外国人労働者の実状や戦力として有効活用するための取り組み、外国人を積極採用し、成功している企業の事例を紹介しながら、日本流の健全な“開国”のカタチを模索していく。(続く)