働き方

「怒り」を把握するためにコアビリーフを分析すべし

怒りにのまれないためのアンガーマネジメント 第四回

sub-can-do-not2ここまで「怒り」とはどのようなものかについて触れてきたが、ここからはその「怒り」をアンガーマネジメントによってどのようにコントロールしていくか、具体的な方法論を述べていこうと思う。長期的な施策から、いますぐ出来る簡単なものまであるので、それらを組み合わせて自分に合った方法を探ってみて欲しい。

「怒り」に強い体質をつくる

まずは、長期的に対策していく方法をいくつかご紹介したい。客観的に自分の怒りを把握することが有効であることは先に述べたが、そのための手助けとして有効なアンガーマネジメントの手法を紹介する。
自分の「べき論」=コア・ビリーフを分析する『アンガーログ』

コア・ビリーフとは?

知らず知らずのうちに人は「こうあるべきだ」という自分の理想像を作り上げ、その理想に従って生活している。こうした意識から生まれる「べき論」は、アンガーマネジメントの用語で「コア・ビリーフ」という言葉に置き換えられる。コア・ビリーフとは、個人が正しいと思っている信念や価値観のことであり、人によって様々なコア・ビリーフを持っている。
また、コア・ビリーフは個人の中だけでなく、同じ目的を持った集団や仲間意識を持ったグループの中にも存在する。日本人は比較的帰属意識が強く、そうした集団の持つコア・ビリーフに従おうとする気持ちを強く持っている傾向にある。

コア・ビリーフの押し付け合いが争いを生む

言い争いが起こる原因に、実はコア・ビリーフの押し付け合いが起こっていることにお気づきだろうか。
コア・ビリーフそれ自体は悪いものではない。信念や価値観を持つことは単調な日常にメリハリを付けるために大事なことであるし、目標を達成するためにコア・ビリーフが必要であることもある。しかし、それを他人に押し付ける行為はたちまち争いを引き起こす。
自分と他人はあくまで全く違う人間であって、他人には他人の自分の理想とする姿がある。そこに自分の理想を押し付けることは、相手にとっても自分にとってもストレスにしかならない。自分に厳しい人ほど自分のコア・ビリーフに他人を従わせようとする傾向が強いので気を付けたいところだ。

『アンガーログ』で自分のコア・ビリーフを意識する

コア・ビリーフは自分の育った家庭環境や、経験からくる教訓に基づいていることが多いので、ほとんど無意識に身についていることが多い。したがって、なかなか自分では意識しにくい。その解決策として、自分の中にあって他人との摩擦の原因になっている「コア・ビリーフ」を洗いざらい発見し、客観的に意識する方法として『アンガーログ』という手法がある。

「アンガーログ」の手順

怒りを感じたとき、以下の項目について書き出してみる
・怒りの度合いを10点満点で評価
・怒った日時
・怒った場面
・誰に対して
・どんな出来事、言動に対して
・どのような言葉で怒ったか
・怒った時の気持ち
・怒った理由
・怒った結果、相手にしてほしかったこと
・怒った結果、実際どうなったか

必ずしも上記の項目そのままでなくても構わない。自分が必要だと思う項目を付け足してもいいし、面倒くさいと思ったら項目を減らしてもいい。大事なのは、記録を付けることで自分の怒りに客観的になることなのだ。
上記項目の「怒りの段階を評価する」ことは「スケールテクニック」とも言い、数値化しデータ化することで心を落ち着ける効果がある。
上記の「怒った理由」「怒った結果、相手にしてほしかったこと」が自分の持つ「コア・ビリーフ」にあたる。毎回このような記録を付けることで、自分はどのような相手にどのような場面で怒りやすいか分析でき、どのようなコア・ビリーフが自分に怒りをもたらす傾向が強いかを把握できる。
「怒った結果、相手にしてほしかったこと」と「怒った結果、実際どうなったか」の項目にギャップがある場合、あなたのコア・ビリーフが相手を傷つけたり不快にさせたりしている可能性があることにも注意したい。
自分の怒りが有効的に働いたか、はたまた自分の個人的な感情をぶつけただけだったのか、省みて反省する機会をアンガーログは与えてくれる。

コア・ビリーフを修正する「リフレーミング」

怒りの瞬間から離れて頭が冷静になったら、今一度「アンガーログ」を読み返してみよう。あるコア・ビリーフが、怒りの原因になる傾向が強いと理解したら、次のステップ「リフレーミング」に進もう。
「リフレーミング」はまず、その問題となっているコア・ビリーフに対して、反論になるような質問を自分の中にしてみることから始まる。例としてある上司が部下に対して叱責したシーンについてリフレーミングしてみよう。

上司の場合

・忙しい時に部下が当たり前のことを聞いてきて煩わしく思い叱責してしまった
(当たり前のことを他人に聞くべきではない、というコア・ビリーフ)
・(反論)自分は経験も長く当たり前だと思っていることが、経験の浅い部下にとっては当たり前のことではないのでは?
・経験が浅いことを十分に配慮に入れた教え方が出来ていなかったのではないか?という新しい見解の発生

部下の場合

・上司は分からないことを聞くと「どうして分からないのか」と無遠慮に一蹴してしまう
(分からないことは率先して質問するのが正しい、というコア・ビリーフ)
・(反論)本当に上司に聞かなければ分からないことなのか?今すぐにすべき質問だったか?
・まずは自分で理解する努力をしてみるべきではないか?という新しい見解の発生

「リフレーミング」は自分のコアビリーブに縛られない、多方面な考え方を身に着けるテクニックである。これにより中立的な立場に立って物事を考えられるようになる。
相手の考えを自分の中で消化して受け入れることで、自分の怒りも受け入れることが出来るようになる。相手を受け入れることはそのまま自分を受け入れることに繋がるのだ。
自分の怒りと上手に付き合っていくには、自分の外側の世界にも目を向けることが必要である。考え方の世界を広げれば、自ずと心にも余裕が生まれ、今よりものびのびと生きていくことがきっとできるはずだ。

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