
グロースハッカー
【グロースハッカーとは】
Qualarooの創業者であるショーン・エリスが、2010年頃初めて自身のブログで“グロースハッカー”を提唱した。現在では、アメリカのシリコンバレーを中心に話題となっている言葉である。
グロースハッカーを一言で表すと、数値やユーザーの声を分析し、プロダクト自体のアップデートを重ね、何倍、何十倍ものユーザーにリーチさせることを目指す人、となる。よく成長請負人と言われることもある。
マーケティングやエンジニアと混同されがちだが、グロースハッカーの特徴は
サービスの開発中でもリリース後でも、サービスが続く限りはグロースハッカーの仕事が終わることはない
―リリース後でもユーザーの声をサービスに反映し、改善を繰り返す
プロダクトの成長とマーケティングを切り離して考えることはない
―プロダクトとマーケティングの双方における相乗効果を最大にするためのグロースハッカーである
莫大なプロモーション費用を必要としない
―基本的にグロースハックは、テレビCMを放映することなく、イベントを開催するでもなく、プロダクトそのものの力でユーザーに訴えかける手法である
という3点だ。
グロースハッカーに求められる能力
基本的にはWEBサービスを運用する企業において重宝される役割で、第一にマーケティング、加えてプログラミングの能力があればさらに良いと言われている。
例えば、実際にグロースハッカーを募集する株式会社VASILYは、グロースハッカーにどのような能力を求めているのか。VASILYは、ファッションコーディネートアプリ「iQON(アイコン)」を運営しており、2013年にはグロービス他から3億円を調達し、今勢いにのる注目企業だ。
仕事について
VASILYでは2013年初頭からグロースハックを掲げ、リーン的アプローチ、アジャイル、ABテスト、改善サイクルの最大化と様々なグロースハックのフレームワークを実践し、iQONを劇的に成長させ続けてきました。海外サービスの成功事例導入や定量&定性データの分析からの新しい試験的施策など他社を圧倒する量と質のリリースを続けてきたのがVASILYのグロースハックです。
必要なスキルについて
・サービスの成長を会社に約束する自信と覚悟
・デジタル課金商材の経験
・川上から川下までのメディアマネジメント経験
・論理的思考
・数値分析が得意
・粘り強い
・新しい事に挑戦できるマインド
グロースハッカーが必要とされるスキルは、各企業によって様々だが、どのグロースハッカーにも共通して必要な能力は、論理的思考を持って数値分析をすること、そして失敗しても挑戦し続ける粘り強さだ。グロースハッカーの仕事において偶然の成功は無く、すべての作業は数字に基づいて行われる。
この地道な繰り返しこそ、Facebook、twitter、dropboxなどの名だたる企業が、プロモーションにコストを掛けずとも、多くのユーザーを短期間で獲得した秘訣である。
グロースハッカーが行ったグロースハックの事例
グロースハッカーがどのような仕事をするかについては、具体例を紹介するのが最も分かりやすいだろう。
Hotmail
例えばHotmailの事例が有名だ。サービスの提供開始からユーザー数の伸び悩みに苦しんでいたHotmailだが、様々な検証を行った結果、新規ユーザーの登録のほとんどが友人の紹介によるものだと気づいた。友人が使っているサービスというのは、興味が湧いてくるものだ。
そこで、利用者が送るメールの文末に“Get your Free Email at Hotmail”という一文を自動で差し込むようにした。このことで、Hotmailを利用して送られるすべてのメールが、Hotmail自体の広告の役割を果たすことになったのだ。一切の広告費を投じることなく、新規ユーザーが爆発的に増加した。
このHotmailの成功により、他の会社でも同じ手法が使われるようになった。見たことがある人は多いはずだが、iPhoneでメールを送信するときには「iPhoneから送信」という一文が付け加えられる。グロースハッカーが、自社サービスをどのようにして広げるかを地道に考え続けた結果、生まれた成功事例である。
グロースハッカーは今後様々な分野で必要とされる
低予算で多くのユーザーに訴求する、というのはテレビCMに大金を投じている企業からすれば当然のように魅力的なプロモーションだ。現在、グロースハッカーが所属するのは主にIT企業だが、もしかしたら今後はより広い分野で必要とされるようになるかもしれない。
実際、2012年のアメリカ大統領選挙の際、共和党のミット・ロムニー陣営はグロースハッカーとして実績のある人物を招き、グロースハックを駆使して献金集めを行った。WEB上に散らばるあらゆる支持者との接点において、情報分析をもとに改良を繰り返したことで、結果的に1億8000万ドルもの個人献金を集めるという成果を得た。グロースハッカーにあらゆる権限が与えられる場においては、彼らはさらにその力を発揮することができるのだ。
このように、アメリカではすでにグロースハックにおいて有名な人物が出ている。日本でもカリスマと言われるグロースハッカーが誕生するのも時間の問題だろう。