
若者離職率
【若者離職率】
中学、高校、大学の卒業3年後の離職率。厚労省が調査を行っている。長らく高い水準で推移し、それぞれの離職率から「7・5・3問題」とも いわれた。2012年の調査では、業種別に公開され、大卒では教育、学習支援事業、宿泊業、飲食サービスで48%、一方で工業・採石業で6%と業種別に格差が見られる。最新のデータでも傾向は変わっていない。

平成生まれの新人は控えめ?
業種別に見る若者離職率
厚労省は、2012年、初めて若者の離職率を公表している。最新となる2013年のデータを紹介する。
若者離職率が高い業種
・宿泊・飲食サービス51.0%
・教育・学習支援48.9%
・生活関連・娯楽45.4%
若者離職率が低い業種
・電気・ガスなどのライフライン産業8.8%
・鉱業・採石業など13.6%
・製造業17.6%
2013年の若者離職率も、前年同様の傾向で推移している。教育・研修が少なく、入社早々から売り上げやノルマが求められる業種と、じっくりと技術を習得して現場に出る仕組みがある業種の特徴が、そのまま反映されているような結果といえる。
若者離職率が高い理由
企業と求職者のミスマッチが起こりやすいため
「会社の人はいい人だったが、どこか本音で話せる感じがしなかった」、「自分は会社の求めている人材像にはなれないと思った」、「どうしても雰囲気 になじめなかった」…若者の離職理由に特徴的なことは、金銭以外の理由がほとんどとなっていることである。
理想と現実の違いに失望し、耐えられなくって離脱というのが典型的パターン。旧型社員からみれば、「甘っちょろい」となりがちだが、当人にとっては、深刻であり、単なる「自分勝手」と決めつけるのは早計といえる。
就職活動の在り方が問題となっている
就活の在り方にも問題があると言われている。自社にとって都合のいい情報しか発信しない企業に対し、それをしっかりと見極める目を持たない若者。そこにベストマッチングが起こるとは思えない。
今話題のマッチングサービス【Wantedly】について
これに対し、近年ではこれまでと違うスタイルの採用サイトが登場している。
例えば、Wantedlyというサイトがある。
Wantedlyは、フェイスブックを活用した、ソーシャル・リクルーティング・サービス。従来のように、待遇や福利厚生などではなく、ビジョンややりがいなどでのマッチングを目指す。
仕組みとしては、求人側は第一段階として書類選考でも面接でもなく、プロジェクトを企画する。例えば「自社のデザイナーとランチしませんか?」というもの。これに参加できるのは、求職側の社員とフェイスブック上でつながりがある人のみだ。
初めから「社員の知り合い」というフィルタを掛けることで、その社員から評判や、雰囲気を聞き出すことができる。これを加味した上で、プロジェクトに参加させる人を選ぶことができる。
今話題のマッチングサービス【日本仕事百科】について
もうひとつ紹介したいのが、日本仕事百科というサイト。
日本仕事百科では、求人企業へ取材に行き、「企業概要」「給与」「福利厚生」などの情報ではない、「職場の空気」や「そこで働く人のやりがい」などを詳しく伝えている。
また、「仕事の厳しさ」についても包み隠すことなく記事にすることで、就職したあとに発生するミスマッチを防ぎ、求職者・求人企業ともに幸せなつながりを生み出すことを目指している。
若者離職率は20年以上前から変わっていない
若者が就職して3年以内に離職することを指す「7・5・3」現象は、実は1990年代前半からともいわれる。昔は、精神的にはタフな若者が多かったものの、いま以上に就労環境が非常に過酷だったり、職選びのインフラが不十分だったりということもあって、離職率は今とあまり変わらない。
しかしその質を考えれば、十分な就活インフラが整備された状況下での現在の高離職率には、深刻な問題が内包されている。景気低迷による求人数の低下はもちろん、行き過ぎた売り上げ至上主義による過酷なノルマ負荷。経費削減による人材育成の貧弱化など、である。
ブラック企業はその象徴のように扱われているが、日本の将来を考えると、現状の若者離職率の高さは、企業の存亡危機の顕在化ともシンクロし、看過できない深刻な問題と捉える必要がある。
企業に失望は日本に失望?
才能と希望にあふれる若者が、企業の現実に失望して離職するというのは、日本そのものに失望していると捉えてもいいくらい深刻な問題といえる。大企業の大量リストラやブラック企業の横行は、多感な若者の就職への希望を削ぐだけでなく、働くことの意義すら考えさせる事態である。
最近では、就活においても企業側が、大学1年生の段階から職務をオープンにする活動を積極的に行うなど、ミスマッチ改善に工夫し始めている。会社に見切りをつけ、起業する若者も増え始めている。
少子高齢化で労働力が先細りする中で、日本の将来を担うのは若者に違いはなく、そうした世代が活躍できる土壌づくりは、急務であり、非常に重要 といえる。