インタビュー

フリーランス美容師に転向してみえたもの

投稿日:2016年4月4日 / by

座談会で語ったメリット・デメリット

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前近代的ともいわれる、旧来型の働き方が根強い美容室の世界。徐々に経営改革を進めるサロンも増え始めているが、抜本改革にはまだ遠い印象だ。そんな中、組織を飛び出し、自分の腕一本で勝負する「フリーランス美容師」がジワジワ増え始めている。そのメリットや課題、可能性などについて、現役フリーランス美容師に座談会形式で語ってもらった。【前編】

なぜフリー転向を決断したのか

--フリーランス美容師という働き方は、一般にはまだなじみがないように思います。普通の会社勤めと比べると、手に職があるワケですから、転向はしやすい気もしますが、一方でやりたいことができているのだから、そのまま店舗所属でもいいのかな、という気もします。

多賀谷 フリーランスが、所属の美容師と圧倒的に違うのは、時間の使い方です。店舗に勤務していると、雑用からスタッフ管理など、やることがたくさんあり、ほとんど自由がありません。私はまつげエクステやメイクなど幅広くやらせていただいていましたが、それらをもっと自分のものとして充実させるためには、お店にいると、物理的に難しかったですね。

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多賀谷氏(左)と矢作氏(右)

矢作 若いうちは下積みではありませんが、ある程度、雑務などに追われてしまうのは仕方がない側面はありますよね。ただ一方で、そうした経験は、技術はもちろん、人間力を鍛える意味で不可欠な部分でもあるのかな、という気はしています。それにしても、拘束時間はちょっと長いですけどね。そうなると、美容関係の以外の経験をする時間もなくなってしまう。これが、人生全体で考えたときにとても大きな負の要素になります。在籍しながらでも幅を広げていくことは可能ですが、やはり、フリーになると全ての時間を自分で管理できるワケですから、そのメリットは非常に大きいです。

フリー美容師のメリット

多賀谷 接客の部分でも、フリーランスでは、目の前のお客さんのために時間を費やすことに注力できるので、質の高いサービスを提供できます。時間に追われるのじゃなくて、時間をコントロールすることで、いろいろなことへの密度を高めることができます。

矢作 その通りですね。だから、私はフリーランスになって、よりやりがいを感じるようなりましたね。

集客における苦労はないのか

--気になるのは、フリーランス特有の集客の問題です。店舗なら、お客さまは、待っていても来てくれますが、フリーではそうはいかない。その辺りの不安はどうでしょうか。

多賀谷 特に不安はないですね。スタッフや知人の紹介などの横のつながりで、仕事はコンスタンにある状況ですし、接客がない時間は、美容師以外の収入源であるアクセサリーつくりに時間をあてたりしますので。もちろん、安定はしていませんから楽観はしていません。ブログやSNSを活用して、情報発信しながら自分ブランディングは強化していかないといけないとは常に思っています。

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渋川 スタッフからの紹介というのは、お客様の取り合いにもなるかと思うのですが、その辺りは問題ないのですか。

多賀谷 まつげエクステの方のスタッフなので、お客様が被ることはありません。大丈夫です。

渋川 その辺りは、フリーランスで多様に事業に取り組んでいるメリットですね。仕事の広がりが、そのまま顧客開拓につながっていく、という部分で。

矢作 私もフリー美容師以外にコンサルのお仕事もしていますが、そっち方面からお客さんを紹介してもらったりもします。実はフリーになって、お客さんの数自体は減ったんですが、売り上げは上がっています。店舗を介さない分、自分の取り分が多く、客単価がアップしているので、効率がいいという側面はあります。プラスして、他の仕事の収入もあるので、この辺はフリーランスの強みといえるかもしれません。とはいえ、集客という部分では、確かに自分ブランディングは、私もしっかりとしていかなければいけないと思っています。

フリー美容師のタイムスケジュール

ーーフリー美容師としての動きは、大体どんな感じになるのでしょうか。

多賀谷 お仕事は基本予約に応じてになります。最近の1週間では、土日にブライダルのメイクのお仕事をして、月曜日に出張のまつ毛エクステ、夕方にはアクセサリーつくり、火曜日はお休みして、水曜日は出張まつ毛エクステに夕方にサロンワーク…といった感じです。予約を軸に、あとはやりたいことややるべきことを自分で決めて埋めていく感じです。

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矢作 私は日曜日に午前中ヘアメイクをして午後からはサロンワーク、月曜日も予約のサロンワークを意見をこなし、火曜日はオフ。水曜日は午前中にコンサルティング。夜には自宅で業務といった感じです。出向くこともありますが、家での作業も臨機応変に行っているので、家族との時間がたくさん取れています。(後編:フリーランス美容師という働き方で広がる可能性へ続く)。

関連記事→ フリーランス美容師の普及を目指すサロンの思惑とは


【プロフィール】
多賀谷紘美:1979年5月生まれ。フリーランスの美容師として活躍するほか、ブライダルヘアメイク、アクセサリーづくりなど、ダブルワークを実践する。趣味は登山、旅行、美術館巡り。フリーになったのは2014年。
矢作祐輔:1985年10月生まれ。フリーランスの美容師の他、コンサルティングや貿易、商品開発など多様な分野で活躍する。趣味は音楽・芸術鑑賞。フリー転向は2014年。

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