インタビュー

「変な」アクションが秘める職場改善の可能性

投稿日:2016年9月15日 / by

リクルートדベツルート”の異色対談【前編】
これからの時代に求められる職場活性化アワードの在り方

転職情報サイト・「リクナビNEXT」編集長とマニアックすぎる採用を行う「ベツルート」の元編集長。対極にある2つの転職就活メディアに携わる2人が、異色の融合を果たした。「リクナビNEXT」を運営するリクルートキャリアが主催する「グッド・アクション」に研究者で人材プロデューサーの若新雄純氏が審査員として新たに参画することになったのだ。予想外のスーパー触媒となるのか、激辛のスパイスとなるのかーー。あいさつ代わりの特別対談は、いきなり若新氏の強烈なカウンターパンチで幕を開けた。

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新審査員として参画する企業表彰アワードにいきなり物申した真意

転職市場に一定のスタイルを築き上げたリクルートで、この4月よりリクナビNEXTの新編集長に就任した藤井薫氏。リクルート一筋で様々な事業を渡り歩く同氏だけに、その遺伝子がしっかりと刻み込まれている。3回目を迎えるグッド・アクションには、新たにどんなカラーを持ち込み、新風を吹き込もうというのか。

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藤井氏 もともと財務部からスタートして、B-ing、TECH- B-ing、アントレやワークス研究所などを経て、28年。リクルート一筋で今に至っています。転職という行動自体がまだ肩身の狭い思いをする時代から転職市場をみてきています。多様な働き方が注目される昨今ですが、いまだ「定時に帰宅することも肩身が狭い」という職場は多いのではないでしょうか。しかしいまは、みんなが一律で同じがいいという時代ではない。一人一人の働き方で本領を発揮し、企業と共進することこそが、求められている時代です。しかし、どうすればそうした個人と組織の新しい関係が実現できるのか分からない。そんな企業の現場からの声を、私たちは多くいただいてきました。グッド・アクションは、そうした企業の皆様の声に応え、支援する目的で、職場を盛り上げる取り組みに光を当て、表彰。他の企業がヒントにできるようにと共有し、世の中全体の職場変革を後押しできないか、という思いでスタートし、これまで2回実施してきました。3回目を迎える今回は、職場で誰もが肩身が狭くない世の中に変えることをひとつのキーワードに臨みたいと思っています。新しく審査員に加わって下さる若新さんには、我々にない全く新しい視点を期待しています。

リクルートとは対極といえるスタンスで、ニートやはみ出し者に特化したマニアックな就活サービスを実施するなど、就活市場のマイノリティを掘り起こす活動で、独自路線を突き進む異色の人材プロデューサー・若新氏。かつて関わった就活媒体は「ベツルート」と命名されるなど、アンチマジョリティ路線で、就活戦線にうねりを起こし続ける同氏は、ここまで堅実に歩んでいるグッド・アクションでどんなアクションを起こそうというのか…。

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ベツルート編集長時代に若新氏がプロデュースした占い就活

若新氏 最初に思ったのは、「グッド・アクション」という名前についてのことです。「グッド」って言葉は、「バッド」との対比なので、多様性を打ち出すグッド・アクションでは邪魔になると思うんです。理想を言えば、グッドを評価して上に上がるのではなく、横に広がる社会にするような取り組みになれば面白いかなと。いまは社会全体においても、頑張って上に上がるのが簡単じゃない時代でもありますから。名前は簡単には変えられないかもしれないけど、例えば「マニアック・アクション」とか、「変なアクション」とか、ね。「変な」という言葉は、HISの澤田社長が運営ホテルを「変なホテル」と命名したけど、アレはホントに素晴らしい。ロボットを導入したからといって、人より付加価値の高いサービスが提供できるとは限らない。期待値を上に挙げるんじゃなくて、横に広げた。

新しい価値観や文化を横に広げるようなアワードに

さすがに、今年から「変なアクション」への改名はなさそうだが、若新氏ならではのスパイスたっぷりの参画宣言だ。もっとも、リクルートはいわば元祖、新しい働き方の実践企業でもある。巨大化してその印象が薄れているが、藤井氏にとって、若新氏の指摘は、眠りかけていた本能をしっかりと刺激したようだ。

藤井氏 「変な」というと例えば「変態」という言葉があります。いまの時代は、会社組織が新しい様態に変わるためのサナギの期間だと思います。まさに変わろうとする取り組みに注目する点では面白いネーミングといえるかもしれません。ここまでの1年、2年は、グッド・アクションはどちらかといえば真面目路線でした。でもこれから先を考えたときには、おじさん世代の支持はもちろんですが、若者世代に興味を持ってもらわないといけない。その意味でも若新さんには、常識に捉われない全く違う視点で、「それもありだな」という斬新な発想をどんどん打ち出してもらいたい。

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若新氏 変な話、このアワードが失敗したとしても、リクルートにとっては経済的にはほぼ痛みはないでしょ。逆に、これによってなにか利益を得ようという考えも、ゼロではないにしてもそれほどはないでしょう。だからリクルートには、稼いだお金を活用すべく、このグッド・アクションを通して、新しい価値観や文化を横に広げるようなことをして欲しいですよね、偉そうなこと言っていますが。僕は関わる以上、それくらいのところを一緒に目指せたらうれしいです。リクルートさんなら資金力はもちろん、それだけの知見も余裕もあるわけですから。

激辛のスパイスが、一転、すぐれた触媒のようにアイディアをスパークし、膨張させる。グッド・アクションが、若新氏によってその殻を破り、新編集長の藤井氏の創造性をも刺激する。勢いづいた若新氏はもう止まらない。話題は、本筋の職場についてから雇用形態についてまで、どんどん広がっていくーー。(後編に続く)


<プロフィール>
fujii藤井薫:1988年慶応大学理工学部を卒業後、リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。B-ing、TECH B-ing、Digital B-ing(現リクナビNEXT)、Works、Tech総研の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・ゼネラルマネジヤーを歴任。2007年より、リクルートグループの組織固有智の共有・創発を推進するリクルート経営コンピタンス研究所コンピタンスマネジメント推進部及グループ広報室に携わる。2014年よりリクルートワークス研究所Works編集兼務。主な開発講座に『ソーシャル時代の脱コンテンツ・プロデュース』『情報氾濫時代の意思決定の行動心理学』などがある。

wakashin若新雄純:(株)NewYouth 代表取締役、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任講師、国立福井大学産学官連携本部 客員准教授。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。様々な企業・団体の人材・組織開発、コミュニケーション開発コンサルティングを行う一方で、人と組織の多様な成長モデルや新しい社会コミュニケーションのあり方を研究・模索し、実験的なプロジェクトを多数企画・実施中。NEET(株) 代表取締役会長、鯖江市役所JK課 プロデューサー、ナルシスト採用 、「ゆるい就職」 、くじ引きと占いの就活「ベツルート」など、数々のマニアック就活をプロデュースする。


グッド・アクション
近年、職場の環境や雰囲気が、働く人の「働きやすさ」「モチベーションアップ」の重要な要素とされる現代。企業が独自に取り組む研修や社内イベント等の取り組みを募り、紹介することで、自分らしい「働き方」や「やりがい」のヒントを発掘するきっかけとすべく設立された。企業規模を問わず、あらゆる企業に門戸を開放するオープンな企業アワードとなっている。3回目となる今回の締め切りは9月30日。詳細はコチラ

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