
経営トップが女子高生に本気で経営を語った結果…
経営トップは女子高生になにを語ったのか
さきごろ、都内である会合が行われた。場所は、社長室。そこで経営トップと対峙したのは、都内の名門校に通う女子高生。経営トップと女子高生のやり取りは、実に2時間にも及んだ。密室の中で、一体、なにが行われたのか…。

進路指導の三者面談のようだが、実は経営トップの経営特別講座だ
経営者は、林順之亮氏。全研本社(株)(東京都新宿区)の社長だ。女子高生はTさん。メガネが似合う知的な高校2年生。歳の差なんと35歳。なぜ、こんなマッチングが実現したのか。決して、将来性を見込んでの超青田買い面接ではない。実は、同席した女性は彼女の母親。全研本社の社員なのだ。
同社が毎年行っている、七夕の願い事を実現する企画で、「経営学部を志望する娘に社長の話を聞く機会をください」という願いがあり、それに応える形でこの対談は実現した。お願いした母親の娘への熱い思いと、受けた社長の心意気が一致した格好だ。
どんどん熱を帯びた“特別講座”
スタート時はさすがに硬い表情だったTさん。だが、林社長の分かりやすいトーク術にいつの間にか、和んでいく。話題は、なぜいま、アジア各国が躍進しているのか、各分野で世界レベルに到達するためには何が重要なのか、そして、経営におけるマーケティングの重要性…など、「経営」をキーワードに多岐に渡った。

メモを取りながら真剣に耳を傾けるTさん
普段、社員に語りかけるような内容もふんだんに盛り込まれていたが、Tさんはしっかりと食らいつく。その知能指数の高さに可能性を感じたのか、林社長のトーンも徐々に熱を帯びる。時に生い立ちも交えながら、赤裸々に自身をさらけるほどで、Tさんもプライスレスな“特別講座”にどんどん吸い込まれる。
「私は、経営というものを知らなくて大変苦労しました。もし、Tさんの年齢でそれだけの頭があれば、とうらやましいですね。出来るだけ早い段階で、やりたいことをみつけ、それを磨き上げていってほしいですね。飲食店でバイトするなら、企業のインターンシップに積極的に参加し、内側から経営の一端に触れるといいと思います。本当にすごい可能性を秘めていると思います」と林社長は、Tさんの潜在性を絶賛しつつ、迷走しない社会人になるためのアドバイスを贈った。
100回の授業より、1回の帝王学?
2時間に及ぶ、初体験を終えたTさんは、「お話の中には授業で習ったこともありましたが、その時は全然ピンと来ていませんでした。でも、きょうお話を聞いて、ストンと腹に落ちてきました。経営を学ぶと決めていましたが、正直よく分からない部分もありましたけど、きょうで明確になりました」と目を輝かせながら感想を語り、自身の進路に目を向けた。

最後は将来に期待してガッチリ握手して特別講座は幕を閉じた
若者離職率は、久しく3割前後で推移。昨今は、先の見えない景気動向もあり、将来に希望を見いだせない若者も増えている。確かに高度成長期に比べれば、いまの若者は不遇かもしれない。だが、早い段階で働く“現場”を知ることで、職業や企業選びの目は確実に磨かれる。そうしたことを踏まえてか、企業のインターンシップはこの5年で743社から8,500社以上に激増。実施の前倒しも進んでいる。
とはいえ、今回の企画のように経営トップに学生がアプローチするのは至難の業。Tさんのように、親が社長にお願いするのも一手だが、それとて簡単ではないだろう。それでも希望を捨てることはない。林社長が明かす。
「もしも、Tさんのように興味本位でなく、本気で経営に触れたいと思う女子高生が手紙などでお目当ての経営者にその思いを伝えれば、6割の経営者は会ってくれると思いますよ」。これは、将来を悲観する若者にとって、何とも心強いお言葉だろう。逆にいえば、自ら動けば、不可能なことはない。将来を決めるのは、学歴や景気動向ではない。自分自身だ。そんなメッセージということかもしれない。