インタビュー

最強のナンバー2はなぜ、“ビッグ・アクション”の母になれたのか

投稿日:2017年3月23日 / by

意志なき社員が夢中になって生み出した職場のいい取り組み表彰イベント【後編】

転職からほどなく、プロジェクトオーナーとして動き出すことになった鈴木。十分すぎるやりがいに心は充実するが、今度はノウハウがついてこない。まさに身を削るような怒涛の半年間を経て、「グッド・アクション」は晴れて産声を挙げることになる。

初めて先頭に立って実行したプロジェクト

「最強のナンバー2」。前職での鈴木の異名だ。褒め言葉ではあるが、微妙なニュアンスが含まれるフレーズ。前職の先輩で、現在もパートナーとして、グッド・アクションをサポートするパブリックグッドの五十嵐綾は、その理由を次のように説明する。「とても優秀な人材。でも与えられた業務を完ぺきこなす一方、意志があまりないというか、サポート役に回ろうとするところがある」。そんな鈴木だけに、自らが先頭に立ち、プロジェクトを動かすのはこれが初めての経験だった。

実行するのは、職場の取り組みを表彰するイベント。やることは山のようにある。企画が通り、予算もついた。だが、プロジェクトのメンバーは実質1人。上司のサポートや外部パートナーの協力もあるが、コアメンバーは最少人数。大変なことはある程度想定できたが、それがどれほどのものかを考える暇もなく、グッド・アクションは開催へ向け、問答無用でそのスタートを切る。

イベントタイトル、コンセプト、審査基準、審査方法、審査員、実施日、実施会場…。ひとつずつこなすしかない中で、鈴木はがむしゃらに突き進んだ。象徴的なのは、審査員のアサインだ。第一回から継続中の審査員のひとり、守島基博氏は、人材分野では重鎮の一人。ある程度のネットワークを活用するのが常識的だが、鈴木は書物を読み漁った末に、独断で人選。いきなりメールでアプローチ。初めは驚かれながらも最終的には快諾をもらい、難関を突破する。

節目で節目で訪れる苦難に心身はギリギリ状態

もがきならも前進を続け、ある程度形が出来上がり、なんとか開催のめどはついた。だが、今度は、取り組みの応募が集まらない。応募ゼロは、なんと締め切り3日前まで続いた。鈴木の胃はキリキリ痛み、頭には、審査員や協力してくれた人の顔が浮かぶ。「中止になったらどうしよう。申し訳ない…」。それでも、駆け込むように締め切り直前に一気に応募が集中し、最悪の事態は免れる。

審査は、書類審査を経て、現場訪問。最後に審査員が集まり、選考する流れ。当初、現場訪問なしで書類選考のみというスタイルも検討されたが、「現場を見ることは重要」と審査員の一人から声が挙がり組み込まれた。この役割を担ったのはもちろん鈴木だ。最少人数ゆえだが、審査を左右するプロセスのひとつだけに、大きな役回り。全国を行脚するハードさもなかなかのものだ。鈴木は、ほぼ1か月丸々を費やし、結果をレポートにまとめ上げる。

実際の審査では、鈴木がヒアリングした企業の取り組みを審査員にプレゼン。資料と合わせ、審査の材料とする。厳しいツッコミが入れば、電話で追ヒアリングもした。怒涛の半年は、物理的な忙しさに加え、気を抜くヒマのない緊張の連続から食事も満足に喉を通らず、体重は8キロも減少した。久しぶりに気を抜けたのは、授賞式が終わったようやくその瞬間。鈴木にとって、人生を大きく変えるような時間はあっという間に過ぎ去った。

3回目にした初めて舞台に上がった真意

ある程度勘所をつかんだ2回目も目まぐるしく時間が過ぎたが、より良いものにしようという意欲はどんどん増していく。「最強のナンバー2」が、3回目にして初めて表舞台に立ったのは、まさにその象徴だ。「自分が目立つより、みんなと喜びを分かち合う方が性に合っている。グッド・アクションも自分が表に出るのは違うと思っていた。でも、取り組みが主役のイベントで、そこに光をあてるのに、私が出ることが役に立つならそれもあり、と思うようになった」と鈴木は、表舞台登場の経緯を明かす。

自身の原体験をきっかけに生まれたグッド・アクションによって、自らもイキイキと働く楽しさを体感した鈴木は声を大にする。「職場で愚痴をいっている人は、ぜひ行動を起こしてもらいたい!」。そういうや否や「そのためにはグッド・アクションをもっと多くの人に知ってもらわないと。まだまだやるべきことはたくさんあります」と続けた。鈴木の頭の中は、もはやすっかりグッド・アクション漬けだ。

最強のナンバー2が成し遂げたナンバーワン級の大仕事

嬉しいこともあった。同社には、年に一度、4月に全社員が一同に会し、開催される”Vision Mission Award”という表彰の場がある。同社が掲げるVision Missionの実現に向けて高い影響力を発揮した仕事を共有する場だ。2017年1月、その社内アワードで表彰される9つの仕事の一つに「グッド・アクション」が選出された。約3,500人もの社員が1年間で生み出した仕事の代表。かつて最強のナンバー2と呼ばれていた人間は、ナンバーワン級の大仕事をやってのけた。

自ら生み出した仕事が、意志のあまりなかった鈴木を変え、無我夢中で取り組んだ仕事は、社内で高く評価された。3回目を終えたグッド・アクションはいま、鈴木に大きな手ごたえと使命感を与えている。生みの親の意志を飛び越え、いまや、その存在そのものが、鈴木の背中を力強く押している印象さえある。みじんも感慨にふけるそぶりをみせない鈴木の頭の中はいま、「グッド・アクション」の影響力を社会全体にまで広げ、一社でも多くの職場をイキイキさせることで一杯だ。(了)

◇前編→ 職場のモヤモヤを晴らす、シンプルで最強の方法とは


<プロフィール>鈴木いづみ
1987年1月生まれ。2009年新卒でPR会社へ入社。2014年、(株)リクルートキャリアへ転職。前職で職場改善を起案した経験を活かし、いい取り組みを表彰するイベント、「グッド・アクション」を立ち上げる。同賞で、複数の社内表彰を受ける。夢中になると時間を忘れ、働き過ぎる悪い癖がある。ストレス発散法は、大人買いした漫画の週末まとめ読み。

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