
お金を稼ぐ前に「お金を使う才能」があるかを知る重要性
変人・安田の境目コラム
人としての器にもある、生まれ持ったサイズ
会社に適正サイズがあるように、人にも適正なサイズがある。この歳になって、ようやく、その事実に気がつきました。運動神経や、芸術のセンスなど、人には持って生まれた才能があります。人としての器もまた、生まれ持ったサイズがあるのです。
その器のひとつに、財布の大きさがあります。どのくらいのお金を稼ぐのか。どのくらいのお金を使うのか。それは、財布の大きさによって決まるのです。
努力すれば、誰だって金持ちになれる。私はずっと、そう信じてきました。だからこそ起業し、社長にもなったのです。でも私は、その器ではなかったみたいです。
努力が無駄だったとは思いません。実際に会社は大きくなったし、収入も増えました。そういう意味では、努力は報われたのです。ただ私の器が、その収入に見合っていなかったというだけ。
私の器は、せいぜい二~三千万円だと思います。それを超えて稼いでしまったために財布が壊れてしまったのです。そして私の価値観も、壊れてしまいました。
持って生まれた財布の大きさ。それは、お金を使う才能なのだと思います。才能のある人が持てば、お金は生きる。才能のない人が持てば、お金は死ぬ。
お金を使う才能。それは単にお金を増やす才能ではありません。世の中にとって、そして、たくさんの人にとって、役に立つ使い方をする才能なのです。
お金を使う才能がない人が大金を稼ぐと起こる悲劇
もちろん私も、人の役には立ちたい。とくに身近な人の役に立ちたい。だから社員をグリーン車に乗せ、給料もたくさん払ったのです。
でも結果的には、役に立ちませんでした。高すぎる給料も、度を過ぎた福利厚生も、誰の為にもならない。私はそれを、思い知らされました。
才能のない人には、お金を持たせてはならない。器を超えたお金は、本人のみならず、周りも不幸にする。それが私の得た教訓です。それは会社のお金だけでなく、個人のお金でも同じなのです。
自分には、どのくらい、稼ぐ才能があるのか。自分には、どのくらい、使う才能があるのか。稼ぐ才能と、使う才能の、バランス。それを知ることが、とても重要なのです。
経営者として使うお金。個人として使うお金。社長に復帰するにあたり、私はその上限を決めました。どんなに稼いでも、それ以上には使わない。それが世のため、人のため、そして、自分自身のためなのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。