インタビュー

会社の常識の捉われない働き方はいかにして生まれたのか

投稿日:2017年11月15日 / by

時間密度の高め方 ~百社百様の生産性向上~

(株)オトバンク【後編】

出社は各自の裁量でOK。それは、当日に急きょ変更があっても許される。出欠の伝達法としては、ややルーズな印象だが、その情報は即座に全員に共有される。ルートは、専用のチャットツールだ。何かするときは基本、このチャットで全社員に情報が行き渡る。

前編→社長はなぜ、満員電車での通勤を禁止したのか

各自に裁量を大幅に委譲する同社のワークスタイル。自由度の高いそのスタイルは、実はこの情報伝達のスタイルが可能にしているといっていい。単にチャットにより情報伝達がスムーズに行えるから、という次元の話ではない。これによって発生するやり取りが、フラットで自由な同社の組織運営の課題をクリアする肝になっているのだ。

課題とはズバリ、評価だ。同社では基本、各自が主体的に動く。会社に貢献することが前提だが、その内容も各自に大幅に委ねられる。もちろん、その前提となる業務プランは上司とすり合せるが、そこに売り上げ目標といった項目は基本ない。いかに同社の行動指針に沿い、設定した目標に対する成果を出せているか。そこが、評価のポイントとなる。直属の上司なら、当然評価はできる。だが、数字を伴わない評価だけに、役員クラスとなると目が行き届きようもない。そこで重要になるのが、チャットでのやり取りだ。

社会人になる前後に生じた就職への絶望感が生んだ常識に捉われない働き方

「役員クラスも共有しているチャットは、評価における大きな参考になっています。チャットへの対応の仕方で業務がうまくいっているかはおおよそ分かります。そもそも、弊社は失敗しないことを評価にはしません。そうしたことも含め、チャットで可視化されたやり取りで社員のかなりの部分は見通せます」と久保田社長は明かす。

それでいて、久保田社長はチャットを介し、社員へのアドバイスは基本しないという。「それをやるとみんな僕の方を見てしまうから。それでは主体性が生まれない」と久保田社長。経営者としては、つい口を出したくなるところだが、そこを踏みとどまれるから、やや特殊な運営スタイルの同社もうまく回っているといえるのだろう。

学生時代にインターンとして、創業間もない同社に合流し、いまに至る久保田社長。その当時は、就職に対し、疑心暗鬼だったという。「学生時代は、普通に就職することに全然前向きになれませんでした。ウツに近いくらいの状態。そこで、いくつかの企業に入って、いろいろ分析しました。儲かっているのになぜか辛そうな人が多い会社。待遇以上に楽しそうにしている人が多い会社…。そういう分析から、どうすればみんなが気持ちよく働けるかを考えていました」と久保田社長は振り返る。

就職前から働き方と真摯に向き合っていた少し特殊といえる久保田社長の経歴。だから、社長として会社づくりにはかなりこだわっている。なにより特徴的なのは、同社には人間関係の問題がほとんどないこと。社員が会社を辞める理由のアンケート調査では常に上位にランクされる問題がないのだ。もちろん「自称」ではない。紛れもない事実だ。その理由はいたってシンプル。「どんなに優秀でもスキルや能力では採用しない。人間を見る時間を長く取って、明確に合わない人間は採用しないんです」(久保田社長)。普通の会社ならついスキルや能力にひかれ、簡単でないが、同社では合わないと判断すれば断固ノーを貫く。

早い段階で、企業に所属して働くことの難しさや悩ましさを悟っていた久保田社長。だから、一般的には正しいとされる経営スタイルに容易になびくことはない。個々の社員が能力を最大限に発揮し、全開で働ける。それが、最も強い組織を創りだす--。感覚的にそれを分かっているから、無用なルールはわざわざ設けない。いわばアンチ会社の常識。創業時からそうした血が流れる同社が、優秀な人材をひきつけながら着実に業績を伸ばしている事実は、働き方が過渡期にある中で、ひと際まばゆく、痛快だ。(続く

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