インタビュー

夢を追い続けることで、つかんだ今という現実

投稿日:2015年10月21日 / by

連載第3回 植松電機 植松努

NASAより宇宙に近い町工場第3回の今週は、北海道から世界へ、いや宇宙へと挑戦する一人のあきらめない男の物語です。


自分は何に夢中だったんだろう?

本日はよろしくお願いします。
さっそくですが、いままでの経歴をおしえてください

植松
うちはね、父さんも母さんも樺太なんですよ。
で、父さんの方の父さんと母さんは樺太で会社をやっていたんです。樺太は寒かったからモータリゼーションが発達していて東京より車があった。だから、父さんと母さんは車会社を経営してのびのびと暮らしていたんです。

でも、その後、、、

植松
そうなんですよ、ソビエト軍が8/11に侵攻してきて樺太はロシアのものになった。そこで父さんと母さんは北海道に帰ってきて北海道で会社をおこして、そこに僕が生まれたんですよ。

どんな幼少期だったんでしょうか

植松
この会社は父さんが一人で働いている会社だったので、父さんが働いている姿を見ながら、また仕事を手伝いながら育った。でも、学校ではもの作りをしている人達に対して、「ちゃんと勉強しないとああなっちゃうよ」と陰口を言われることもあったんです。作業服を着て汚れて仕事をするなんていうのは、勉強しなかったひとがする仕事です、って。え?そうなの?って。それがすごい子供ながらにショックでしたね。

学校でそういわれたんですか、驚きです

植松
お父さんは「なかったら作れ」という人だったんだけど、学校の先生は「なかったら買え」なんですよ。「お金がなかったら諦めなさい」と。だから、お金がほしかったらちゃんと勉強していい大学に入っていい会社に入りなさい、という論理なわけです。だから勉強が大事だっていうんですよ。

この論理は私たち世代にも刷り込まれている意識のような気がします

植松
でも、父さんとか親戚の話を聞いている限り、物を作る力と勉強は同等の力があると思ったんだけど、でもそれが通用しなかったのが小学校の頃ですね。先生と全然うまくいかなくてね。嫌な思いもずいぶんしました。それから中学校いっても高校いっても、先生がもってくる常識というものと自分が育った世界との常識との違いに苦しみながら、受験対策をさせられ続けてきたなぁという感じがしますね。
でも、小さい頃から宇宙や飛行機が好きだったという部分は変わらずに持っていたので、そういうことが勉強できる大学に入学したつもりだったんです。

つもり、ですか?(笑)

植松
そう、大学に入って教授から飛行機の仕事は無理だよ、って言われてうそーんって思いました(笑)知らんかったーって(笑)そのときは絶望するんだけど、ある日、車でドライブしていた時にウルトラライトプレーンという飛行機が飛んでたんですよ、これは日本では珍しくて特殊な扱いをされている飛行機で個人で作ったり買ったりできるんですね。それが飛んでいるのを見て、衝撃を受けて。それが着陸するところまでずっと、車でついていって、そのあとその飛行機に乗せてくれたんです。

あこがれの飛行機、どうでしたか?

植松
足の下はパイプ一本で回りは全部外っていう変わった飛行機でした。空からはすごい美しい世界がひろがっていて。そのとき、やっぱり空の仕事がしたいって改めて思いましたね。そこからずっと周りの人に飛行機の話をして、名古屋で飛行機の仕事に就きました。周りの人に話しまくってたというあの行動が、今思えば大切だったのかもしれません。
uematsu-denki

『先生』へのお願い

自分がしたいことに嘘をついてはいけませんよね

植松
そうだね、そして、ずっと自分がしたいことを信じていられたのは、先生が言っていることは間違っていると心のどこかで、思っていたからだろうな。先生は、職業のことを何も知らない、自分の常識で話してる、って。僕の周りの人や伝記に出てくる人たちはみんな物作りの価値は低くないと言っていたからね。ずっと自分の気持ちを信じていました。

植松さんから、度々「先生」というワードが出てきます。なぜでしょうか

植松
いうまでもなく、先生というのはとても大事だということだよね。先生という職業の人が持っている常識が100%本当であると強制される世界というのは恐ろしいなぁとね。先生という人には、職業のことをもっと知ってほしいと思っています。そして、教える先生方はみんな公務員だから、公務員の常識を教える人が多いんだよね。だから「勉強しなかったらああなるよ」なんて言っちゃう。僕たち大人がもっと多くのことを知らなくてはならないよね。

知りたがりのやりたがり

植松さんは、どんな人に魅力を感じますか

植松
「知りたがりのやりたがり」こういう人には魅力を感じますね。例えば工場見学に来てくれた子達に「やってみたいひと!」というじゃないですか。その時に真っ先に手があがるタイプの人は学びがある、魅力があると思います。

そういう方は、そんなに多くないですよね?どうしてでしょう?

植松
おそらくね、学校の先生が関わんなかったら大丈夫。うちでは、幼稚園生から中学校になるまで市内の子は見学にくるんですよ。幼稚園の頃は普通のスイッチがついた棒でも、殺到してくるんですね。でも、小、中と年齢が上がるにつれてどんどん遠ざかっていくんですよ。あのスイッチを押したがっていた子供たちが、ね。成長の過程で”知ることを阻害する”誰かがいるよねと思っているんです。もちろん、学校の先生だけでなくて保護者だったり、大人ですよね。とにかく「知りたがらない、やりたがらない」っていう状況を誰が作っているんだろうって。これはね、後天的なものだろうと思います。小さい頃は、みんな知りたがりのやりたがりですから。誰がその気持ちを奪ったんでしょうかね。

それは鋭いご指摘です

植松
時々、ロケット教室にいってPTA会長さんから「子供たちに夢と希望を与えてください」って言われるんだけど、ぼくは「与えないよ」って。だって元々持ってるもん。それを奪う人がいるだけの話であって、奪わなきゃいいんだよって、ぼくは思うね。小さい頃って夢っていっぱいあったじゃない?それがいつの間にか出来そうな夢しか選べなくなってる。できるかできないかの判断はどうするのかっていったら誰かが教えてくれた常識で判断をしてるんだよね。自分でやってみなきゃ分からないって要素がそこになくなっていることが多くてね。

*後編は来週の(水)です。
前編では、主に教育論を語っていただいた植松さんですが、後編では教育論を通して、若者やこれから挑戦したいと思っている人達へのメッセージをお聞きしました。さて、どんなメッセージを我々に与えてくれたのでしょうか?乞うご期待!!


植松氏
<プロフィール> 植松電機 植松努

1966年北海道芦別生まれ。

子供のころから紙飛行機が好きで宇宙にあこがれ、大学を経て、名古屋で航空機設計を手がける会社に入社。5年後の1994年に父が経営する植松電機へ入社し、今に至る。「TED×SAPPPORO」に登壇したことでさらに広く知られるようになり、「どうせ無理という言葉をなくしたい」と日々、業務に励んでいる。


山口氏
[著者情報]

氏名: 山口佳祐

所属: 中央大学法学部

「仕事とは何か?」という素朴な疑問のもと「地方で活躍する方々に会う」日本一周の旅を今年の夏に行う。人に影響を与えることを人生の目的とし、将来何をするか模索中の大学生。来年2月から3ヶ月間は世界一周の旅へ。 長崎日大高校~中央大学法学部2年
Twitter: @Naganichi54

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