インタビュー

誰もがメイカーになれる時代の到来

投稿日:2013年2月7日 / by

「FabLabKamakura」(ファブラボ鎌倉)

Fablabo入り口

誰もがモノづくりに携われる時代が到来している。2002年から米国から本格的にはじまった次世代のモノづくりがいま、世界中に広がり始めている。PCとデジタル工作機械を揃え、アイディアやデータを共有することで、ほぼ何でもつくることができる――それが、モノづくりの最先端だ。国内でそうした動きのパイオニアとして、普及活動を進める「FabLabKamakura」(ファブラボ鎌倉)を訪問し、その現状を探った。

築120年の建物で繰り広げられる最先端のモノづくり

手作り感溢れる時計

古都鎌倉の風情あふれる街並みに違和感なくたたずむ建物。観光客も思わず歩を止めるその建造物は、秋田県湯沢市で使われていた築120年の酒蔵を移築再生したもの。ここが、最先端のモノづくり工房、ファブラボ鎌倉だ。外観と中で行われていることのギャップは、「ハイテクとローテクの融合を生み出していく」という同工房が発するメッセージでもある。

風情ある建物の内部に足を踏み入れると、そこには個性的な制作物があちこちに並ぶ。全て、同工房で作り出された作品だ。職人レベルの手の込んだ工芸品のようなものもあり、それらが手作業と最新のデジタル機械を活用しながら、試行錯誤して作り出されたというから驚きだ。

次世代のモノづくりの本質とは

仕事風景「ファブラボ鎌倉は、モノづくりの可能性を、そこに集う様々な人と共同で開拓していくための実験工房です。ここが産業構造の合理化によって消費とものづくりの間にできた深い溝を埋める一つの拠点となることを目指しています。思いに共感した人が集まり、知識やアイディアなどを共有し、思い思いのものづくりを実現するきっかけとなる場所になれば」とファブラボ鎌倉のプロジェクトマネージャー・渡辺ゆうか氏は話す。

企業論理を軸にした大量生産大量消費は、安価で高品質の製品を生み出す一方、消費者からつくる喜びと個性を奪った。そしていま、テクノロジーの進化により、誰もが手軽に好みの製品をつくり出せる環境が整いつつある。欲しい人が欲しいものをつくる――。十人十色の個性に対応するものづくり。それが次世代のものづくりの本質といえる。

渡邊氏例えば、自分だけのオリジナル指輪が欲しいとしよう。その場合、PCにデザインデータを入力し、3Dプリンタで加工すれば、製品は完成する。素材によっては別のデジタル機材も必要になるが、とりあえずたったそれだけで、自分の思い描く作品を形にすることができる。しかし、これで終わらないのが、実は次世代のモノづくりの本当の魅力といるかもしれない。

「ファブラボ鎌倉は、毎週金曜日に施設見学することができます。開放日には進行中のプロジェクトをご覧いただけます。施設利用に関しては、現在FabLab機材のスタートアップトレーニングプログラムを準備しています。様々な領域の方が集う場所なので、いろいろなアイディアのアドバイスが得られ、作品は作者の意図を飛び越えて磨き上げられる機会を得る事ができます」と渡辺氏。データやアイディアやスキルが共有されることで、一人の頭では不十分だった部分が、上級者や熟練者などにより修正され、作品はより理想的な形へと近づいてくこともある。ネットによるつながりを最大限に活用したモノづくりならではの理想的な横の連携が、ファブラボの可能性を一層押し広げる。

世界に広がるネットワーク

雰囲気のある作業場そのネットワークは、米国、MITに端を発し、現在までに40ヶ国145ヶ所以上に展開している。取りまとめる大きな組織が運営している活動ではないのが特徴的だ。世界中に張り巡らされたファブラボネットワークは、次世代のモノづくりの魅力をさらに引き上げるものとして、そのムーブメント推進に貢献している。

海外では、データのやり取りを活用した多品種少量生産をビジネスに応用する動きも盛んになってきている。従来の製造業の概念では定義できないため、ゆるやかでありながらも新たなものづくりのあり方を“革命”とみる向きもある。

日本にも迫る次世代のモノづくりの足音

日本でも今後、そうした動きが活発になりそうだが、ファブラボを日本に持ち込んだ慶応義塾大学の田中浩也准教授は「より広く一般に普及するには、デジタル工作機械がもっと誰でも簡単に使えるようになる必要がある」と語り、自身は次世代のモノづくりのさらなる発展のためにデジタル工作機械の新たな可能性の追求に情熱を注ぐ。

革製品インターネットの普及、それに伴うテクノロジーの進展で、働き方は大きく変わりつつある。家に居ながら、あるいはどこにいても業務をこなせる環境はほぼ整っている。もっとも、その範囲は、あくまで事務作業レベルであり、2次元の域を出なかった。次世代のモノづくりの実現により、その領域は急速に3次元にまで拡がっている。誰もがものづくりに携われる時代の到来で、個人が製造者になれるという選択肢が、劇的に広がりつつあることは間違いない――。


Fablaboホームページ◆FabLabKamakura: ファブラボ鎌倉
“FabLab”という名称の”Fab”は、「Fabrication」(ものづくり)と「Fabulous」(楽しい・愉快な)というふたつの意味からなる造語。その後に「Laboratory(研究所)」からとった”Lab”を組み合わせたもの。誰もがものづくりに参加できる社会を目指し、さらに伝統とデジタルを融合させ、現在の技術も活かしながらものづくりを次世代へつなぐ、という目標を掲げ、アジア初のファブラボとして筑波とともに2011年5月に設立された。建物は約120年前の酒蔵で、デジタル制御された工作機械をとり備え、集う様々な人と共同で、次世代のものづくり環境を開拓していくための実験工房として活動している。url:http://www.fablabkamakura.com/

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