インタビュー

やらないよりやろう。経験が人を変えていく。

投稿日:2015年12月9日 / by

阿部氏第10回の今回は前回に引き続き、名刺というツールを用いて、人と人との関係を創り出す男の物語です。


人生で大切なこと

人生で大事なことってなんでしょうか

阿部
人生で後悔することはやらないことです。やらなかったことだけ後悔が残ります。月並みの言葉ですが、やって失敗したことに後悔はしません。「もっと若ければ」とか「あの時時間があれば」とか「忙しいから」とか出来ない理由を言う人は多いです。相田みつをさんはこういっています。『やれなかった、やらなかったどっちかな』という詩を残しているんです。大体みんな、やれなかったというんです。僕はお金もなかったし、会社の規模も小さいし、忙しかったから、どうしてもやれなかったんです、って。でも、そんなことないんですよ。どんな状況でもやる人はやる。だから、やれないことはなくて、やらなかったんです。全部100%責任は自分にある、と僕は思うようにしてます。

そこに気づくか気づかないかというのは大きく人生を左右しますよね。

阿部
まさしくそうです。ぼくは大学時代にそういうことに少し気づいていたので、ずっと行きたかった海外に行こうとしました。でも、お金が必要じゃないですか?だから、お金を稼ぐために色んなバイトをしていました。夜中の除雪のアルバイトが一番時給が高かったのでやってましたね。夜中バイトをして昼は学校にいって。ためたお金で海外を旅したり、遊んだりしていました。人の二倍働いて、人の二倍遊ぶってことをやっていました。

旅で得た自分の考え

旅からどんなことを学びましたか

阿部
単純ですけど、旅をして世界ってすごいなとそのとき思ったんです。みんな心が豊かで、日本の概念とかそういうものは全くなくて。ハワイに行った時に、アロハスピリッツというものに出会ってね。エレベーターで会ったら気軽に話しかけてくるといったような。ぼくは世の中をこうしたいんです。環境問題もこういうところに繋がってくるんですよね。思いやりがないために、ポイ捨てが普通におこるわけです。アロハスピリッツは人も大事にするし、先祖への感謝を忘れない、こういった思いが僕の根幹にもあります。旅から得たことはここでは話しきれませんね(笑)

苦手な営業で学んだこと

大学を卒業してどんな道に行かれたんでしょうか

阿部
一回、普通に就職したんです。そこがいわゆるブラック企業で。ある専務の私利私欲だけで動いているといった組織でね。で、あるとき専務に土下座して謝っている僕の上司の姿を見て自分の将来を考えてね。ここでは無理だって。その会社を辞めて、父にやってみないかと言われたこともあり、今の会社に入りました。でも、最初は1か月だけのつもりで働いていたんです。自分で起業したいなと思っていたので。

今の会社に入社してからはどんな仕事をしていたんですか

阿部
初日に、父から千枚名刺を置かれて、営業してこい、仕事をとってこい、って。何の知識もない中、札幌の会社に営業していったんです。で、そのとき僕が使っていた名刺はごくごく普通のもので、相手に覚えてもらえない、興味を持ってもらえないわけです。あるとき、お客様から出逢いが広がる名刺を作ってくれと言われて作ったんです。
少し変わった名刺をつくって営業に行ってみると、今まで100件まわって1件しか興味をもってもらえなかったのが10件に増えたんですね。というのも、まず会話が増えるわけですよ。この名刺はなに?と。いままで営業に行って何を話したらいいかわからなかったのに、相手から質問がくるんです。会話が楽しくなると営業自体が楽しくなって、成績もあがっていきました。そしたら、お客さんがついて辞めるに辞めれなくなってしまってね。それで今に至っています。

名刺がコミュニケーションを生む、と。

阿部
名刺というのは、人と人が出会うきっかけをつくるコミュニケーションツールとして非常に素晴らしいものだ、と思っています。昔の僕と同じように、コミュニケーションが苦手な人が世の中には多いんじゃないなかぁと思って、そういう人に力になれるよう工夫した名刺を作りたいと思っています。

仕事についてどう思いますか

阿部
どんな仕事も素晴らしいんです。どんな人でも同じように接しなければいけない。大学生でも経営者だろうがただの役割なだけでなにも変わらないですから。誰も同じ。だから、ぼくはお客さんのことをお客だと思っていない。ある意味でね。親友だと思ってる。だから、良くない製品だったらおすすめしないんです(笑)そういう裏も表もない、信頼できる関係が理想だと思っています。

バナナの皮から作られる名刺

バナナから名刺を作る活動もおこなっており、注目されている。

若者たちへ

これからの社会はどうなっていくと思いますか

阿部
いままでは登りエスカレーターで無難に生きていけたんです。でも、三年前から下りエスカレーターになって。がんばっても毎年給料も減っていくわけです。昔のような、頑張れば報われるというのは幻想になっています。こんな時代に大切なのは、コミュニケーション力だと思っています。何かひとつの技能を身に付けても機械にとってかわる時代がくるかもしれません。でも、人との関わりが持てる人はいつの時代でも生きていけます。だから、変化に対応できる人がこれから求められていくんじゃないでしょうか。また、積極性とかポジティブとか優しさとか思いやりとか。そういう心を持てる人は魅力を感じます。

人間の幅はどうやったら広がる?

阿部
これは経験です。いかにチャレンジしたか。チャレンジして壁にぶつかって、もうどうにもならんとあきらめそうになってから一歩を踏み出せるか、ここが大事だと思います。ぼくの人生理念は、関わる人すべての人を豊かに幸せにすることです。お客様も社員も仕入れ先も皆が笑顔になる三方良しを目指しています。誰かが犠牲になるような仕事だったらぼくはしない。ぼくは決して大きな会社にしようとおもっているわけではないんです。目指すのは自然と大きくなった、という状況です。

若者へ伝えるとしたらどんな言葉をかけますか

阿部
一歩目から千歩目までよりも、絶対に0から一歩目を踏み出す方が大切です。一歩踏み出したらあとは勝手にいくんですよ。思いがある人はたくさんいるんですね、でも99%は行動しません。だから、簡単なんです。一歩を踏み出せば良いんです。世の中や将来に対して漠然とした不安を抱いている方もいると思うんですけど、それは行動しないから不安なんです。

行動しないから不安。なるほど。

阿部
さらに、10代でしか感じれないこと、20代でしか、ということがあるんですね。いまを大切にしてください。今しかできないこと、感じれないことがあります。失敗したら人からどう見られるか分かんないから怖いという人もいるかもしれないけど、10代20代はどんな失敗をしたって大人は笑わないですよ。大人から見ると失敗の数は魅力と比例します。みんな面接では優秀に取り繕うんです。なんとでも言えるんですね。でも、大丈夫です、取り繕ってもばれますから。魅力ある人になってください。

若いときの経験が人を作る、といえるでしょうか

阿部
まぁそうだね。感性は大人になればなるほど、年をとればとるほど鈍くなっていくと思うんですね。よっぽど衝撃的な経験をしたり努力をしたりしない限りですね。だから残念ながら感性は若いときにしか磨けないんじゃないでしょうか。若いときに「うわぁ」と思えた量が将来に出てくると思います。

感動した数か重要だ、と。

阿部
理解するんじゃなくて感じるべきです。海外にいくというのは素晴らしい手段だと思いますよ。異国の常識に触れることで自分の幅は否応なしに広がります。例えば、日本では人を傷付けることは完全なる悪ですが、イスラム圏にいけば、盗みを働いた人の手を切るという習慣もある。受け入れる幅や感性はそういうときに強くなります。広がります。自分が心地よい場所ばかりにいてはいけません。若い人には、「なんだこれは!」と思えるようなものや人に出会って欲しいし、そんな体験をいっぱいしてほしいですね。

編集後記
まず阿部さんと最初にお会いした瞬間に、「この人のことは忘れないだろうな」と感じました。というのも、一風変わった名刺と相手をリラックスさせる社交性、話しやすい雰囲気を出すなどなど、誰にでも同じ姿勢が貫かれているんだろうなと感じずにはいられませんでした。相手の第一印象に残るか?これはとても重要なことですよね。金言もたくさんいただいた素晴らしい時間でした。


阿部氏
<プロフィール> 丸吉日新堂印刷株式会社社長 阿部晋也

北海道札幌市出身。大学卒業後に就職した企業の「人を大切にしない社風」に疑問を抱き退社。
父親が創業した印刷会社の2代目経営者となる。
丸吉日新堂印刷は、主に出逢いの最初のツールとなる名刺を作っており、またバナナの茎を用いたエコ名刺は、地球環境保護と途上国の雇用創出の両面から注目を集めている。
人と人との出逢いを作る、大切にする丸吉日新堂印刷株式会社の社長。

URL:http://www.nissindou.co.jp/


山口氏
[著者情報]

氏名: 山口佳祐

所属: 中央大学法学部

「仕事とは何か?」という素朴な疑問のもと「地方で活躍する方々に会う」日本一周の旅を今年の夏に行う。人に影響を与えることを人生の目的とし、将来何をするか模索中の大学生。来年2月から3ヶ月間は世界一周の旅へ。
長崎日大高校~中央大学法学部2年
Twitter: @Naganichi54

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