インタビュー

「知りたがりのやりたがり」が語る夢の向こう側

投稿日:2015年10月28日 / by

連載第4回 植松電機 植松努

NASAより宇宙に近い町工場先週に引き続いて、植松電機の植松努さんにお話を伺います。自分の体験からにじみ出る言葉の数々は必見です。前回よりさらに、植松さんの物の見方や捉え方が垣間見えるのではないでしょうか?


夢の向こう側

植松さんにとって、夢とは何でしょうか

植松
夢とは、大好きなこととかやってみたいことです。「知りたがりのやりたがり」がすでに夢です。
具体的な夢というのはステップの一段階に過ぎないんだと思う。夢の向こう側というのが必ずあるはずなんだよね。到達しちゃう夢は夢じゃない気がするんだよね。到達しないもののような気がします。ただのベクトルかな。

夢の向こう側、ですか

植松
そう、手段と目的を間違えないように、ということです。例えば受験で良い学校に行かなきゃいけないって思っている人はたくさんいるんだけど、なぜですか?って聞いたら答えられない人がたくさんいて。「良い会社に入れるから」って答える人に、良い会社ってなんですか?って聞いたら答えられない。そういう人がたくさんいるんですよ。
ほんとは、より良い人生をおくるための色んな道があるなかの一本が、受験であったり会社でしかないのにね。その過程で手段と目的がごちゃごちゃになってしまうんでしょうね。おそらくこれは、現在の日本の進路指導やキャリア教育の中にすごい重大な欠陥が隠れていると思います。

『学び』とは、『学問』とは

植松さんは、教育についての進言が多いですよね、「学び」とはどのようなものであるべきなんでしょうか?

植松
学問っていうものは、良い会社に入ったり良い学校にいくためのものではない、ということです。学問は社会の問題を解決するために人類が積み上げてきたものですから。これをしっかり先生方には伝えてほしいです。以前、JST(科学技術振興機構)で理科離れが進んでいるのはなぜかという会議に呼ばれたんですね。大学教授の偉い人たちとぼくと宇宙飛行士の毛利衛さんがいました。大学の先生方は「今の学校の先生が理科離れだからだ」とかいって学校や先生が悪いというわけですよ。そして、最後に毛利さんがこう言ったんです。「みなさんは、理科が何のためにあるか知っていますか?」って。「理科はね、社会を良くするためにあるんです、学問はそのためにあるんです。それを教えていないから誰も勉強をしたいと思わないだけなんです」とね。まさにその通りですよね。自分が学んだことが社会を良くするために役に立つんだってことが体験できたらもっと学びたくなるでしょう。で、毛利さんは「それを実行しているのが植松電機だ」って。

それは凄い

植松
うそーんって感じだよね(笑)「植松電機は科学でお金を稼ぎ、そのお金で宇宙開発をして子供たちにそれを提供し、その子供たちがまた育つってことをやってるじゃないですか」とその会議でいってくれたんです。「学問とはそういうものだ」って。
教育とは、失敗を避けさせるものではなくて、失敗を安全に経験させて乗り越え方を教えるもんだろう、と。そこを間違えないでやってほしいと思っています。
それができない最大の理由は失敗はダメなことだと思っている人がいるからです。失敗はしてはならない、許されないとまではいかなくても、失敗に対して恐怖心があるひとはいるでしょう。そういう人たちが教育をしてしまうとそういう子が育ってしまう。

なるほど、これは感じている人もいるでしょうね

植松
大人には、いかにして知りたがらなくなっていくのかってことを考えてほしい。「こんなこと知っても意味なくね?」って考えている大人も多いでしょう?これをいうのは簡単で、楽な言い訳ですよ。で、楽を選んだ結果、能力を失っていくんだろう、と。
おれはこれしかできねぇというのは、もしかしたら楽を選ぶ、つまりやらない言い訳なのかなと思います。できないと言ったらおしまいです。

植松電機 工場

同じ轍は踏ませないように

植松さんの失敗を聞かせてください

植松
会社を経営して最初のうちはひとりでがりがりやってたんです。だから他の人のことが気になって気になってしょうがないんですよ。なんで頑張らないんだろう、なんでやらないんだろう、って。会社の子が電話をしていたら「その言い回しはだめだろう」って言って電話を変わって僕が電話をしていた。どういう人を雇えばいいんだろうぐらいに思っていましたから。でも、そうするとますます考えないんですよ。あるときから私が青年会議所っていう会合に入ったんですよ。そこは無駄に時間がかかる会議で、そのせいで会社にいないことが増えたんですね。そしたら会社の子達は伸び伸びやってるんです。逆に僕が忙しそうにしていると彼らは萎縮していた。そのとき、「あぁおれがとやかく言い過ぎたんだなぁ」って気がついた。で、そのあとぼくが困ってるときなんかに会社の子達が助けてくれてね、ほんとにうれしくて。もっと信じて頼るべきだったんだなぁって、やっと気づきましたね。

やはり、失敗からどう学ぶのか、ですよね

植松
仕事以外にも失敗はありますよ。それは、子供ともっとあそべばよかったと後悔してることですね。子供が小さい頃はとても忙しかったのでほんとに家にいなくてね。今思えば、ものすごいかわいそうなことをしたなって。会社の売り上げをあげることに必死で頑張った時期があって、あんなことにつかわなければよかったっておもいますね。忙しいを理由にぼくは逃げたんだなぁって感じます。だから、会社の子には学校の行事でも会社休んで良いから行けといっています。おれと同じ轍は踏むな、と。

『よりよくを追求する』ということ

植松さんにとって、喜びとはなんでしょうか

植松
知りたいとやってみたいの向こう側にある、「わかった!」と「出来た!」が喜びです。これは人類としての喜びだとおもいます。わかったとできたの喜びを感じるためには知りたいとやりたいがなければだめだから。知りたいとやりたいがないひとは喜べないってことだね、だから喜びをお金で買わなければいけなくなる。
あと、ぼくの父さんは83なんだけど、「おれは今までひとつの仕事しかしてこなかった」というんです。でも、最初は炭鉱で使うモーターを作って、次は車の電機部品の修理をして、次は油圧ホースっていう部品を直す仕事をやってそのあとにマグネットを作っているんです。だから、彼の仕事は一つじゃないんですよ、違うことをやってるんですよ。でも、彼はひとつしかやってないというんです。彼にとっての仕事とは、『よりよくを追求する』ということなんです。それがきっと人間の唯一の仕事だと思うんです。

これからの植松さんの目標を聞かせてください

植松
これからが本番だと思っていて、小学校や中学校の頃に見学に来ていた子供たちがもうじき社会人になりはじめるんですよ。その子達がうちをめざしてきてくれるようになったらうちは良い人材が取り放題になる。そこからが伸びるチャンスだろうと思ってるから。この二年ぐらいかけてうちの会社の更新をだいぶがんばってやってるんですね、だいぶ大きくして、二年後くらいがたのしみだなぁっておもっていて。ゆくゆくは、もっと様々な研究開発ができる会社になったらいいなぁと。今すでに断っている案件がいっぱいあってね、人を増やしてやれることをもっともっと多くしたいなと思います。

プロフェッショナルとは

植松
諦めないことじゃないかな。どうにかして目的を達成する人がプロフェッショナル。投げ出したり諦めたりする人はプロじゃないだろうなって思います。

編集後記

私が植松さんのことを知ったのは、あの有名なTEDの「思いは招く」という話を聞いたからでした。動画上で見ただけにも関わらず、強く心を揺さぶられたのを覚えています。実際に会ってお話しさせていただきましたが、TEDで見た通り、素晴らしい方でした。私も「自分の体験」を語ることができる中身が詰まった芯のある大人になりたいものです。


植松氏
<プロフィール> 植松電機 植松努

1966年北海道芦別生まれ。

子供のころから紙飛行機が好きで宇宙にあこがれ、大学を経て、名古屋で航空機設計を手がける会社に入社。5年後の1994年に父が経営する植松電機へ入社し、今に至る。「TED×SAPPPORO」に登壇したことでさらに広く知られるようになり、「どうせ無理という言葉をなくしたい」と日々、業務に励んでいる。


山口氏
[著者情報]

氏名: 山口佳祐

所属: 中央大学法学部

「仕事とは何か?」という素朴な疑問のもと「地方で活躍する方々に会う」日本一周の旅を今年の夏に行う。人に影響を与えることを人生の目的とし、将来何をするか模索中の大学生。来年2月から3ヶ月間は世界一周の旅へ。 長崎日大高校~中央大学法学部2年
Twitter: @Naganichi54

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