インタビュー

“ナルシスト”がうまく就職する方法

投稿日:2014年7月16日 / by

narsis0

はみ出し者の就職最適化プロジェクト

NPO法人 キャリア解放区

代表理事 納富順一氏

うまく言えないが、社会の何かが気持ち悪い…。横並びの社会の中で、なにか違和感を抱きながら就活している学生は少なくないだろう。NPO法人キャリア解放区は、そうした学生や就職希望者に特化した「ナルシスト採用」をスタートする。社会の“はみ出し者”を最適な形で企業へ送り込もうという実験的要素も含む、同サービス。そのスタイルもやはり、一般的な採用スタイルからははみ出している…。


ナルシストにはナルシストにふさわしい就活がある

鏡付きのエレベーターに一人きりで乗った時、テンションが上がる。ハマった時のパフォーマンスは半端ない。自分をおざなりにして、人生など語れない。社会システムや制度に馴染めず、就活を辞めた。人に優しくできる美しい自分も、これまたたまらなく好きだ。なんか、虚しい…。

ナルシスト

ナルシストこそ社会に風穴を開けるエネルギー

どうですか。どれかに当てはまりますか。一つでも当てはまったアナタ、立派な“ナルシスト”です。キャリア解放区はこうした人材に注目し、就職支援を行うNPO法人。「社会システムへの違和感やバカらしさを押し殺せず、制度や文化を俯瞰し、自分の感性や感覚を軸に物事を捉え判断していくこができるマニアックな若者を集め、企業社会との新しい接点を模索したいと考えました。それが『ナルシスト採用』です」と同法人代表理事の納富氏は説明する。

対象は、大学4年、修士課程2年の新卒者、29歳までの就職経験のない既卒者。ナルシストについては「何が正しいのかもわからない激変の時代に個性や偏りを圧殺し、社会や組織に没入することに疑問を持つ人」と定義し、同法人独自のフローで就職へと導く。

あえてズレを共有することで信頼関係を構築

ナルシストぶりを共有することで信頼を高めていく

ナルシストぶりを共有することで信頼を高めていく

具体的には、(1)参加者同士で互いの価値観や偏屈さを共有し、新しいナルシストを模索するワークショップ(2)企業担当者・経営者を交えた自由議論(3)参加企業と相互理解を提案・実行するマッチング、の流れで、採用へとガイドする。

各プロセスにおいて、あくまでも指導は行われず、全員がフラットに対等に対話し、ズレを共有する“場”として機能するのが特長だ。あえてズレを肯定しながら信頼関係を築いていくことを目的とする。

「このナルシスト採用は、人材紹介サービスでも、職業訓練サービスでもありません。自意識過剰でマニアックな若者たちが社会とのズレを共有する“場作り”が基本。その上で、若者と企業が信頼関係を築き、個性を活かすための働き方を模索します。その結果、双方合意・納得の上で採用となります」と納富氏。メガサイトを活用した通常の採用フローと比較すれば、最初にグッと距離を縮め、じっくりと信頼関係を築いてから採用となっており、まさにナルシストにフィットした採用スタイルといえる。

いまの就活スタイルへのアンチテーゼ

企業の採用スタイルもここへきてようやく変化の兆しが見え始めている。とはいえ、主流はまだまだメガサイトを軸にした大量一括採用に変わりない。だが、大きな問題として、日本社会が、すでにそうした採用スタイルにはマッチしない構造変化を起こしているという事実がある。右肩上がりだったGDPはすでに下降曲線を描いており、頑張れば報われる時代は終焉。自己責任の時代へとシフトしている。そうした中で、個性が薄れがちな一括採用方式は、入った学生も不幸であり、採った企業にもメリットがないアンハッピーな結果を招きかねない…。

企画全体のプロデュースはあのNEET株式会社の仕掛け人

企画全体のプロデュースはあのNEET株式会社の仕掛け人

「この採用プログラムには既に20社以上の企業が参加表明してくださっています。いままさに新しい人材採用のかたちが生まれようとしています。この取り組みは、単に人材採用の制度や就職システムを問題にしているのではなく、『個』と組織社会の関わり方そのものを根本的に見直し、当事者同士の議論と試行錯誤によって人材育成や組織開発のあり方を再設計していくことを目指しています」と納富代表理事。人材流動化が進み、多様性が求められる昨今の労働市場にあって、まさに重要な役割を担う可能性を秘めるのが、同プログラムというワケだ。

企画全体のプロデュースは、“全員がニートで取締役”のNEET株式会社の仕掛人で慶應義塾大学特任助教の若新 雄純氏。それだけに社会的弱者やはみ出し者の有望な人材への転換ノウハウは蓄積している。多様性の重要性が叫ばれながら、その有効な活用法の開発が放置される中、尖がった人材が、その居場所を見つけられる仕組み構築への挑戦が、いままさに動き出した。


【団体概要】
団体名:特定非営利活動法人 キャリア解放区
代表者名:納富 順一
設立:2013年9月
事業コンセプト:成熟社会におけるライフキャリアと組織の再開発
研究・支援パートナー:アクセンチュア株式会社、慶應義塾大学SFC研究所
プロデューサー:若新 雄純

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について