インタビュー

残業厭わぬOLが、なぜ残業ゼロ会社を起業したのか

投稿日:2016年1月18日 / by

ランクアップ
岩崎裕美子代表

長時間労働こそが女性の就労継続を妨げる元凶--。ランクアップの岩崎裕美子代表は、長時間労働も厭わないバリバリのOLから、一念発起して起業。いまでは、女性社員がイキイキ働くホワイト企業の創業社長だ。酸いも甘いも知る氏だからこそ分かる、「女性が幸せに生きる社会」実現のために大事なこととは…。思わず唸る、体験に基づく明快な忠告を4回に分けて、お届けする。

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長時間労働当たり前の働き方の問題点

時間より成果。この言葉に同意して、すぐにでもワークスタイルの変革に取り組む企業の経営者はどのくらいいるだろうか…。おそらく、ほとんどいないだろう。問題意識を持っていればましな方かもしれない。前職の広告代理店でバリバリ働く女性社員として、会社の売り上げに貢献してきた岩崎氏はその実態をこう証言する。

「私は仕事人間でしたから、バリバリ働くことにはむしろやりがいを感じていました。長時間労働も当たり前と思ってやってきました。でも、そんな状況だと女性社員がどんどん辞めていく。そんなことが繰り返されるとさすがにまずいと危機感を覚えますよね。当時、私は取締役だったので、さすがに社長に進言しました。でも、聞き入れられることはありませんでした…」。

<企業は人なり>、という言葉があるように、会社にとって社員は宝だ。それが次々に離職すれば、真っ当な経営者なら危機感を覚えそうなもの。だが、そうはならなかった。なぜなら、人が辞めてもすぐに代わりが入ってくるからだ。原因が長時間労働にあると気付いていても、経営者はそれを止めることができない。労働時間を削ることは、大きなリスクと感じているからだ。

離職率が高まっても経営者が長時間労働を止められない理由

「人が辞めていくことに危機感を感じたとします。でも、代わりがすぐに入ってくる。私の立場からすると、せっかく育てた人材が辞めていくことはすごく大きな損失。ところが、育てる当事者ではない社長にとっては、そんな実感はない。だから、どうしても分かってもらえませんでした。そして、なにより問題は、長時間労働でないと売上げを上げられないビジネスモデルであるということ。それを止めることは即、売り上げ減、という頭。ですから受け入れられるハズはありません」と岩崎氏は、力を込める。

長時間労働で疲弊し、社員が離脱する。それでもクライアントは残るし、もちろん商材もある。売り上げをキープする最低限の環境が整っているから、即戦力でなくともなんとか水準はクリアできる。しかし、だ。この時点で会社は、落ちない売上げとは裏腹に、もはや“危険領域”に突入している。何とか生き残れているのは、戦力ダウンを長時間労働でカバーしているに過ぎないからだ。多くの企業がこうやって、不幸にも長時間労働のスパイラルから抜け出せないでいる。

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長時間労働と決別するための痛快な答え

この負のスパイラルからの脱却に対する岩崎氏の忠告は痛快だ。「営業職に関して言えば、売りづらい製品、つまり差別化できていない製品を売っているから、たくさんテレアポをしなければいけない。だから時間がいくらあっても足りない。売れる製品、つまり明確に差別化された製品やサービスを生み出すしか、テレアポの数を減らす手段はないんです。向こうから問い合わせが来る商材なら、テレアポにかける時間は大幅に減らせるんです」。

反論のしようのない回答だろう。実行するのは簡単でないが、健全な会社運営をするなら、すぐにでもやるべきなのは明白だ。とはいえ、もとは長時間労働をいとわないバリバリの営業ウーマンだった岩崎氏。なぜ、こうもそれに反することを考えるようになったのか…。それは、「女性」だからだ。30歳を過ぎ、出産のことやこれからのことを考え始めると、この長時間労働至上主義は、女性が働き続ける上で大きな弊害として圧し掛かってくるのだ。

「私自身は、実はどうしても子ども産みたい、結婚したいという人間ではなかったのです。でも、やはり、いつかやってくる出産のことを考えると、こんな状況では働き続けられないと目の前が真っ暗になる。産休で数か月でも席を空けたらいつクビになってもおかしくない。それまでどんなに活躍していてもですよ。ブランクは売上げの妨げでしかないからです。それが、長時間労働で成り立っている会社における女性社員の宿命なんです」と岩崎氏は打ち明ける。

女性と長時間道の間にある決定的なミゾ

実際に、前職では女性同僚の多くが「このままでは、ずっと仕事を続けていけない」といって、離職していった。長時間労働こそ売り上げの源泉、という残念な仕組みになっている会社では、そうやって女性が働きながら仕事を続けることは到底無理だ。

女性社員を代表し、自らが盾になり、トップに改革を進言するなど長時間残業の軽減を訴えた岩崎氏。だが、社長との議論はいつまでも平行線をたどる。「長時間労働でなければ成り立たない会社は、これからますます人材不足が深刻になる時代に生き残れない。危機感を覚え、むしろそうしたモデルからの脱却のチャンス、と思わなければいけないのに…」。もはや、岩崎氏の頭には、あるべき会社像姿も浮かびはじめていた。そして、我慢が限界に達した時、ついに決起する。「いまの会社でできないなら自分でつくる!」。理想を求めての起業。同士とたった2人のスタートだった――。

第二回では、長時間残業と無縁の会社を立ち上げた岩崎氏の苦難のプロセスといま、そしてこれからについて、をお届けします。


【会社概要】
maNaraホットクレンジングゲル| 公式 マナラ化粧品会社名:株式会社ランクアップ
設立:平成17年6月10日
所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座3-10-7 銀座東和ビル7F
資本金:10,000,000円
代表取締役:岩崎裕美子
事業内容:オリジナルブランド「マナラ化粧品」の開発および販売

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