インタビュー

社長以下をフラットにすると会社はどうなるのか…

投稿日:2013年12月12日 / by

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根本からの会社組織変革を目指す

(株)スピードリンクジャパン代表取締役 西田祥氏

会社に所属し、正社員として働くというのは、安定の一方で窮屈でもある。緩和策として自由を掲げた制度をつくり、その活用を促し、活性化を図る企業もある。(株)スピードリンクジャパンでは、そうした枠組みありきの概念とは一線を画す“新しい働き方”の構築に果敢にチャレンジしている。従来型の組織構成をひっくり返す「L-STYLE」と名付けられた挑戦。その目的と狙いを同社西田祥社長に聞いた。

従来型組織と一線画す「L-STYLE」とは

選挙ポスター

リーダーを決める社内選挙は本物さながら

「L-STYLE」は、役職を完全に取っ払った組織構築プラン。社長以外の人材を全てフラットとし、代わって、プロジェクトリーダーとなるディレクターを立候補制による社内選挙で選出する。社長は、リーダーが必要な部門の提示をするのみで、あとは完全な民主主義。全社員が、候補者の中から下に付きたいディレクターに票を投ずることで、リーダーを決める。

「このシステムを導入した狙いのひとつには、帰属意識を高めるためという部分があります。というのも我々の業種はエンジニアが客先へ張り付いて作業をするのがメインなので、正社員ではあってもどうしても帰属意識が薄れやすい。そこで、社員が共同で何かすることで意識が会社に向くのではないか、というところから導入に至りました。しっかりと機能させるためには、より自由度を高める必要もあり、私以外の役職は全て取っ払ってしまったというわけです」と西田社長は説明する。

トップ以外は平社員に弊害はないのか

実は、この「L-STYLE」には前身となる「S-STYLE」がある。「S-STYLE」は、選出するのが部長という以外は基本、「L-STYLE」と同じ。それでも十分に民主的だが、組織としての自由度、共同意識をさらに高める目的で、よりオープンで独創性のあるカタチとして「L-STYLE」が発案された。従来の会社組織の象徴ともいえるピラミッド型の下層部分をゴッソリなくし、トップ、その他は平社員というフラットな組織構成。旧態依然としたサラリーマン脳ではとうてい思いもつかない、大胆な組織変革だ。

もっとも、権力の分散やガス抜き機能もある幹部・中間管理職をなくすことで社長の権力が強まり、組織の混乱は生じないのかという懸念もある。だが、現実はむしろ逆のようである。なぜなら、社員にとっては選ぶ対象が上司ではなく、同僚となることで、投じる一票の重みが自身にものしかかることになるため、自ずと会社全体の利益を考える意識に頭がスイッチする作用が働くからだ。社長にとっても、事実上の幹部となる“右腕”が、社員の総意で決まることで、理不尽な権力行使をしようものなら、会社の統制を乱すことにもなりかねず、独裁体制など築きようがない。

社内選挙では堂々の“社長批判”

象徴的な“シーン”がある。社内選挙では、公約発表、討論会などがSNS等を通じ、全社員に公開され、投票日までにさまざまなアクションが行われるなど、本格的だが、昨年行われた討論会のテーマは、なんと「西田社長で本当にいいのか」というもの。かなり刺激的な内容だが、形だけの議論で終わることなく、各候補者がフランクにトークバトルを展開。ピラミッド型組織ではまず実現不能なこの討論会だけをみても、「L-STYLE」導入の意義がにじみ出ているといえるだろう。

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公約のアプリもいよいよリリース

実際に“民主制”で選出され、現在、管理ディレクターとして活躍する郷忠雄氏は「とてもありがたい制度。選ばれることで自分のやりたいことにより近づけると思い立候補しました。なったことでやることが増え確かに大変ですが、それ以上にやりたいことができる喜びが大きいので、全く苦はないです」と目を輝かせる。

教育ディレクターとしてエンジニア教育や新規事業推進のタクトを振るう志村直人氏は、公約に掲げたアプリ開発を、通常業務外の時間を活用してSE陣と精力的に進めており「このプロジェクトを成功させることでこうした文化を会社に根付かせたいですね」と使命感に燃える。

社員による社員のための組織づくり――。従来の会社では、既に決まった枠組みの中で、上司によって仕事ぶりが評価され、ポジションが上がっていく。一方、「L-STYLE」では、意志のある人間が、自ら動き、仲間の支持を集め、地位を獲得し、公約の実現によって、やりたいことを実行する。両者を比較することに意味はないが、より多くの社員の潜在力を存分に引き出す仕組みとしては、後者が圧倒的に優れているといえるだろう。

社員にとって会社とは何か

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ディレクターとして奮闘する志村氏(左)と郷氏

「会社ではともすれば社員が自分の持ち場だけをやりがち。でも、それでは仕事としては回っていったとしても本当の意味での会社全体の利益にはつながらない。何とかそうしたことを是正したい、というのもこの仕組みの導入と役職撤廃の狙いとしてあります。だから、ディレクターに選ばれた人間は、自らの意志とはいえ、大変だと思います。一社員から一気にマネジメントから予算管理からいろいろとやらなければいけなくなるわけですから。もちろん、私もいろいろアドバイスはします。ノウハウも経験も人脈も一番持っているわけですから。その意味では私にとっても大変な制度ではありますね」と西田社長は苦笑しつつ、「L-STYLE」に込める熱い思いを明かす。

社員にとって会社とはなにか――。終身雇用制が崩壊しつつある中でいま、会社員として働くことの意義が改めて問われている。単なるパーツとして働くだけでは、いつ解雇されてもおかしくない。自発的に業務に取り組みたいがやり方が分からない…。多くの会社員が苦悩し、企業もその解消への模索を続ける中で同社が選択した、従来の会社観とは真逆からの変革アプローチ。明確な成果がみえてくるのは、まだ先となりそうだが、正解が見つかりづらいテーマだけに、時代にフィットした“新しい働き方”への取り組みの一つとして、大いなる可能性を秘めた挑戦といえそうである。


【社員観激変の理由】
社員のモチベーションアップに最大限配慮する西田社長だが、かつては真逆ともいえる考え方だったという。「以前は、社員なんてカネを稼ぐ人間、みたいな感じでみてました。でも子供ができて考え方が一変。教育って結局、やりなさい、じゃなくやりたいことをやらせることが一番有効。押し付けてもやる気なんて出るわけないですよね。目線が遠くになった感じです(笑)」という西田社長は、6人の父親でもある。

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