インタビュー

新しい働き方の“標準形”、パラレルキャリアとは

投稿日:2014年2月4日 / by

ソーシャル・デザイン 代表理事 長沼博之氏 インタビュー〈下〉

長沼氏新しい時代におけるキャリアデザインの描き方

一人が名刺を複数枚持つパラレルキャリア

インタビュー第二弾では働き方の新時代における心構えについて聞いた。では、より実践的に新しい時代を闊歩するにはどうすればいいのか。インタビュー最終回では、新しい時代における働き方の設計図の描き方を伺う。


“新しい働き方”の実践ノウハウ

――新しい働き方がスタンダードとなる21世紀。前回は、そこでの心構えについて伺いました。今回をより実践的なノウハウをお聞かせください。

長沼氏 ズバリ、パラレルキャリアです。一人の人間が、3枚、4枚と複数の名刺を持って様々なプロジェクトにかかわる。そうした働き方が、新しい時代に重要となり、スタンダードとなります。

――パラレルキャリア、ですか。副業ダブルワークとは違うのですか。

長沼氏 パラレルキャリアとは、現代経営学を発明したピーター・ドラッカーが提唱する概念です。簡単にいえば、現役のビジネスマンが、本業を続けながら、同時にそれ以外のことにチャレンジすることです。土日に地域ボランティアに参加、趣味に関連するECショップを運営する、NPOに参加するなどですね。「副業」よりももう少し大きな概念となります。パラレルキャリアでは、目的が報酬だけではないからです。自身のスキル向上や使命と感じられるような活動に取り組むこともしっかりと含まれています。

なぜパラレルキャリアなのか

――なぜ、パラレルキャリアが、新しい時代の働き方に適しているのでしょうか。

長沼氏 前に述べたように、今や終身雇用制が形骸化しているのは、紛れもない事実です。つまり、一生涯、一つの仕事だけに従事するということは、ほぼありえない状況です。元気である限り、何らかの仕事・活動を続けていく時代になっています。仕事における価値観も変質します。働くことの価値が、いかに自分を磨き、心を幸福にし、社会に貢献できるかという軸へとシフトします。より幅広い仕事に携わることで、そうした可能性は大きく広がります。必ずしも安定は期待できない中でのリスクヘッジにもなりますしね。

――いくつもの仕事を横断するということで、「働く」ことに対し、様々な可能性を見出すということですね。

長沼氏 何度も言うように社会構造が大きく変化し、あらゆる評価基準も変わります。「働く」ということの定義さえも変化しています。そんな時代に働く目的を「生活するため」としてしか捉えないというのは、座して死を待つのと同じといっていいくらい、危険な状態だと思います。

――パラレルキャリアについては、簡単なアンケートを行ったそうですね。

長沼氏 クラウドソーシングを活用し、調査しました。その結果、約45%の人がパラレルキャリアを望んでいることが分かりました。その理由は「お金が欲しいから」、「生き甲斐がほしいから」、「今の会社が長く続くと思わないから」がトップ3となりました。お金と生きがいは拮抗していましたね。大衆は、言葉にこそしていなくとも、社会の雰囲気を肌で感じ、ひっそり動き始めているわけです。

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インパクトは文明の変化くらいの大きさ

――“新しい働き方”というフレーズが、ここ最近ブームのように飛び交っていましたが、結局は、現在の会社のあり方への危機感に端を発し、表面化こそしていませんが多くのワーカーももがき苦しみ始めているのですね。

長沼氏 いま起こりつつある変化は、ちょっとしたアクションではなく、文明が変化するくらいのインパクトがあるものです。大企業の大リストラも現実に行われていますし、働いても給料が上がらないことを身に染みて感じているサラリーマンはたくさんいるでしょう。何か行動しなければならないと感じ、実際に動いている人が、意外にいるということですね。

パラレルキャリアマトリクス図

(長沼氏作成)

――そうした人が、ブレることなく新しい時代に適応するために何かアドバイスをいただけますでしょうか。

長沼氏 自分が今行っている仕事・活動をすべてキャリアと捉え、私の考える6つのパラレルキャリアマトリックス(図)上に置いてみたとき、それらが3つ以上散在しているか? 少なくとも、左下のマトリクスのみで一生を送ることはいろいろな意味で難しくなっているので、それを念頭にこのマトリックス上で、自らの仕事や活動を振り返りながら、働き方を自分で選び、実行していく。それが、私の著書である「ワーク・デザイン」。しっかりと自分で仕事や働き方の設計図を描くことが、新しい時代を迷わず歩む近道になることは間違いないです。

――最後に新しい時代のXデーはいつごろになるのでしょうか。

長沼氏 最初に言っておきますが、新しい時代は決してネガティブなものではありません。とはいえ、従来の価値観が喪失しかねないほどのインパクトがあることは確かなので、どうしても不安が伴う。従って、具体的な年をいうことは控えたい。また、Xデーというのはない方がよく、「いつの間にか変わっていたね!」という状況がベストです。社会の幸福量を減少させてまで、変化をさせては本末転倒になってしまいますからね。いいことはカタツムリのようにゆっくりと進む、そういうことでいいのではないでしょうか。
【了】
バックナンバー:
なぜいま新しい働き方なのか(上)
新しい働き方がもたらすもの(中)


naganuma4【プロフィール】
一般社団法人ソーシャル・デザイン代表理事。 経営コンサルタント。企業、NPO、団体、個人に向けて近未来型事業モデル構築のコンサルティングを行う。また、次世代のビジネスモデル、働き方、社会のあり方を提案するメディア「Social Design News~社会をより良くする近未来インスピレーション情報~」を運営。メイカーズ革命、クラウドソーシング、ソーシャルデザイン等についてテレビや雑誌から取材多数。著書に「ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉」がある。

URL:http://social-design-net.com/


◎ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉
いやま組織や事業の寿命よりも、人が働く時間のほうがはるかに長い。会社にぶら下がりたくても、会社そのものが脆くなっている。そうした中で、テクノロジーの進化と人々の価値観の変化によって、「働き方」が大きく変わりつつある。「仕事の未来」には、無限の可能性が広がっている。同書は、そんな時代に、いかにしてしっかりと働き方の設計図を描けばいいのか…。そのヒントを具体的な事例も交え、解説している。

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