インタビュー

女性ワーカーの正しいキャリアデザインの描き方(1)

投稿日:2014年4月22日 / by

熊平美香氏新時代の働く女性の心構えとは

 

昭和女子大学キャリアカレッジ

学院長 熊平美香氏

少子高齢化を背景に女性の活用が叫ばれている。具体的に女性管理職30%という数値目標も掲げられている。しかし、そこには実際の女性ワーカーの意思はみえてこない。そもそも、女性にとって会社での昇進にどんな意味があるのか…。日本初の女性専用ビジネススクール「昭和女子大学キャリアカレッジ」の学院長を務める熊平美香氏に、女性ワーカーが正しいキャリアデザインを描く上での心構えをうかがった。


女性にとって「管理職」増は微妙

――政府が「女性管理職30%」を掲げ、女性の活用を声高に叫んでいます。実際のところ、そこまで女性に昇進意欲があるようには思えません。

熊平 最新のジェンダー・ギャップの国際ランキングで日本は先進国ながら、100位以下(105位)です。グローバル化が進む中で、女性の活用においては後進国であり、少しでも世界標準に近づこうという国の意思表示なのでしょう。でも、女性からすれば管理職については、「どうなの?」というのが正直なところだと思います。

――なぜ政府の思惑と働く女性の間にこれほどのギャップがあるのでしょうか。

熊平 ジェンダー論の観点からいいますと、男性が3人が集まれば、人を縦に並べ、女性はフラットに並ぶ傾向があるといわれています。つまり、男性にとっては、ヒエラルキー社会で上にのぼっていくことがモチベーションになる一方、女性にはそうした視点がありません。ですから、女性にとっては管理職を増やすといわれても「はぁ」となるわけです。

時代の流れとのギャップは埋まるのか

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女性活用のアプローチは男性視点でなく女性視点で考えること重要と話す熊平氏

――どうすればこのギャップを解消できるのでしょうか。

熊平 女性を活用しようということ自体は悪くないわけですから、アプローチの仕方を変える必要があるでしょう。つまり、男性視点でなく、女性視点で考えるということです。女性にとって働くモチベーションは何かと考えると、ポジションが上がるというメッセージよりも、より多くのお客様の満足を実現するために、あるいは、より多くの社員を成功に導くために貢献して欲しいと言われる方が、俄然やる気が出る訳です。

――なるほど。しかし、それを管理職増と結びつけるのは困難に思います。

熊平 組織での昇進においては、女性側にも、これまでの枠の外に出る必要が有ります。この仕事については彼女に任せておけばよいという優秀な部下という立場から、多様なステイクホルダーをマネジメントする役割に変わることは、女性にとっても大きなチャレンジです。知らないことをマネジメントしたり、知らない人から信頼してもらうことは、これまでの女性ワーカーには、なじみの少ない仕事のスタイルだと思います。

これからは働き方の変革が必要なフェーズ

――となると、単に女性管理職を増やすという次元でなく、根本的な、かなり大がかりな変革が必要になるということでしょうか。

熊平氏

女性管理職増を圧力でなく「チャンス」と捉えることが大事と力説する熊平氏

熊平 ジェンダーギャップレポートにおいて、「健康」、「教育」、「政治」、「経済」の4つの指標のうち、日本女性は「政治」、「経済」について参画の割合が低い結果が出ています。これが何を意味するのか…。若い女性に私が言うのは、意思決定の機会に私たち女性が全く参画していないということです。女性に関することが、それとは全く無関係の政治家の視点で決まってしまっているわけです。これまでに結婚後や育児中も女性が働ける環境は整備されました。次は、それこそ働き方の変革が必要になってくるのだと思います。今の働き方では女性は楽しくないと思います。もちろん、そのためには男性自身のマインドの変革と協力も不可欠になってくることは言うまでもありません。

大事なのは「圧力」じゃなく「チャンス」と捉えること

――女性ももっと意思決定の場に参加し、社会を変えていかなければいけないということでしょうか。

熊平 女性管理職を増やすという流れを「圧力」と捉えるのでなくチャンスととらえることは大切なのかもしれません。なかには昇進することに喜びを感じる人もいるでしょうし、そうでない人にとってもチャンスが増える状況ではあると思います。大事なことは、自分にとっての幸せが何かをしっかりと見極めながら、前進することです。外野の声に惑わされる必要はありません。もちろん、時代や社会に逆らっても幸せにはなれませんから、どういうことが求められているのかをしっかりと見極めることが大切です。(第二回に続く)


〈熊平美香氏 プロフィール 〉  一般財団法人クマヒラセキュリティ財団 代表理事
ハーバード大学教育大学院MBA修了後、銀行の金庫扉を製造する家業 熊平製作所の新規事業開発に従事。藤田商店にて、日本マクドナルド創業者藤田田会長と共に新規事業を立ち上げた後、1997年に独立。エイテッククマヒラ 代表取締役就任。TSUTAYAの親会社CCC社外取締役を経て、現在は、「戦略を実現する強力な組織」に必要な学習デザインを中心にコンサルティング・サービスを提供。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科MBAでは、アントレプレナーシップとソーシャルアントレプレナーシップの講義を行う。


career-c【昭和女子大学キャリアカレッジ】
前身は2007年に採択された文部科学省の「社会人の学び直しプロジェクト」支援事業の「元気にママチャレ!」。社会人として数年の実務経験を持つ方から起業を目指す方まで幅広い年代、職業経験を持つ女性を対象とする。キャリアカレッジでは前進のプログラムを発展/充実させ、より現実的なニーズに応えることができるよう、継続就業中の女性、起業を目指す女性も対象とした内容となっている。hp:http://career-c.swu.ac.jp/

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