インタビュー

60日で会社員に見切りをつけた理由とその“転職先”

投稿日:2015年10月14日 / by

華麗な経歴からの就職をあっさり見切った意外な思い

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フリーライター
八木彩香氏

どんな会社でどう働くのか…。社会人としての人生は、「会社員」になることが前提となっている節がある。働くことが、会社に属すこととイコールの世の中で、大卒後、わずか2か月で会社員生活に見切りをつけ、フリーランスに転身した人もいる。八木彩香さん(24)だ。女子サッカー界で、中学時代から日本のトップレベルで活躍し、大学でも2度全日本を制した、就活スペックも最高ランクの八木さん。彼女はなぜ、安定の保証された企業への所属に早々と見切りをつけたのか。その真意を掘り下げる。

真剣に向き合うからこそできる決断

「24歳、フリーライター」というと、どんな印象だろうか。かつてほどではないにしても、「不安定」というのが一般的かもしれない。年齢的には正社員もまだ十分に狙えるだけになおさらだ。ましてや、いわゆる就活におけるスペックはかなりのハイクラス。なぜ、あえて、そのレールを自ら外れ、茨にみえる道を歩むのか…。

大学時代、サッカーに打ち込んでいた八木さんが就職を考え始めたのは4年生になってから。日本でもトップクラスの実績を誇るだけにプロからの誘いもあった。だが、なでしこへの道は「天井がみえたから」とあっさり見切った。とはいえ、それ以上に特別にやりたいことがあったワケではない。自分の進む道を考えるため、あえて留年もした。そして、紆余曲折を経て就活をスタートし、ネット系の広告代理店の内定をもらう。

同級とは1年遅れでスタートした社会人生活。満を持して飛び出した社会で、八木さんは、エネルギーを全開する。研修からやる気満々だった。入社一か月目にはいきなり成果を出し、周囲を驚かせる。ところが、そのわずか一か月後には、思わぬ行動で上司を驚かせる。なんと退職を願い出たのだ。期待の大型新人の突然の離脱宣言。上司は戸惑いつつも引き留めに動いたが、その意思は固く、八木さんの会社員生活はわずか2か月で終焉する。

2か月の社会人生活で感じたこと

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さばさばしているのに深いところも見ている八木氏

「留年して、自分と向き合いながらいろいろなことを考える中で、就職に対して非常に考えが浅かったなと反省する自分がいました。正直、内定辞退も考えました。でも、やってみないと分からない部分もあるので、とりあえず飛び込みました。そこは本当にみんないい人ばかりで、結果も出せました。でも、なぜかみんな全然楽しそうじゃない。仕事に追い立てられているんです。これが社会人で、こんな状態がこの先何年も続くのかと考えると、危機感が芽生え、早くここからでないとヤバいと思い、迷う前に即決しました」と八木氏はあっけらかんと振り返る。

わずかの期間で、八木さんが強く感じたのは、会社という存在は成長を妨げかねないという思いだ。業務をこなしていれば給与はもらえるし、おとなしくしていれば居心地も悪くない。いわゆる“温室”というやつだ。一方で、自分が思うように動こうとすると何かと手続きが必要で窮屈だし、売り上げに貢献することだけが喜びという価値観も物足りなかった。

退職後なぜフリーランスの道を選んだのか

電光石火で会社員生活に見切りをつけた八木さんは、退職受理からわずか半月後には、動いていた。やることが決まっていたわけではない。少しだけあったライティング経験を頼りに、フリーライターとして再出発したのだ。もちろん、アテはない。「ライター募集」の文字に片っ端から申し込んだ。幸い、すぐに受け入れ先が見つかり、ライターとしての仕事を始める。フリーライター・八木彩香の誕生だ。

「会社員を経験して感じたのは、枠の中にいては、思うように成長できないし、成果をあげても会社を通したもの。それなら枠を飛び出して、自分でやる方がいろいろな意味で成長できる。それでフリーランスを選択しました。ちゃんとしたライター経験はないのですが、大学時代に自転車で日本一周した時にその様子をブログで発信し、とても喜んでもらえた。同時にその時、いろいろな人に接して人が好きになったんです。両方を活かせる仕事としてライターがいいと思ったんです」と八木氏は、フリーライターの道を選択した理由を明かす。

フリーランスとして、コツコツとライティングの仕事を積み重ねた八木さんは、徐々にスキルアップし、単価の高い仕事もこなせるレベルになりつつある。未経験から始めたものの、いまでは月の報酬は、同期の新卒以上はもらっている。2015年6月にはフリーライター転身から丸一年が過ぎた。運動センス同様、社会でも抜群のスキル獲得センスを発揮する八木さん。その表情には不安などみじんもなく、イキイキとしている。

不安定な生活に不安はないのか

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前だけを見据えるのは元ストライカーの本能か

「不安は全然ありません。むしろ、いまはストレスフリーでとても充実しています。もちろん、いまは若いからお仕事いただけている部分もあると思うので、もっとスキルを磨き、さらにプラスαの付加価値も必要になると思います。でも、それを自己責任で出来るのは本当にいい環境ですし、願ったりですね。もしもうまくいかなくて、食べていけなくなったら工事現場で働くでもなんでもやりますよ。なんとかなります。人間なんていつか死ぬんだし、恐れることなんてないんです。私はただ、やろうと思えばできることをやっているだけ」と八木さんは、元ストライカーらしく、前だけを見据える。

八木さんの年代では、どうしてもまず「安定」が頭をよぎる。先の長い社会人人生を考えたとき、守ってくれる大きな器があれば、ひとまず安泰だからだ。若者にいまだ大企業信仰が強いのは、そうした理由も大きい。親や友人の目もある。いわゆる王道から外れたルートに乗ることは、本人にその意思があったとしても止められがちだ。残念ながら、八木さんのように固定概念にとらわれない発想を持つ人は少数派なのが現実だろう。

 やれることをやっているだけ。「はくなまたた」

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スワヒリ語で「どうにかなるさ」の意味の「はくなまたた」。最後はなんとかなると思っているから常に泰然自若だ

「3人姉妹なんですが、実は会社員は一人もいないんです。その意味では育て方の影響はあるかもしれません。自分の責任においてはなにをやってもいいという方針だったので、こんな私に対しても親は『あなたがいいなら』と容認してくれています。でも、私と同じ世代の人だって、出来ないハズはない。やらないだけ。『海外に行きたいけど、お金がない』とか『親が反対するから』とか。結局、なにかしら言い訳いをつけて、やりたいことから目を逸らしたり、埋もれさせているだけだと思います」。

社会人の周辺には、上司への愚痴や仕事への不満があふれている。やりたいことと業務がずれていたり、やったことを正当に評価してくれない…といった類のものだ。実際に他社へ新天地を求める人もいる。忘れてはならないのは、会社に雇われている以上、その枠内の価値基準からは基本、逸脱できないということだ。社畜になるしかない、というわけではない。愚痴をいうヒマがあるなら、会社の利益に貢献するしかないということだ。わずか2か月で、そんな会社員生活に見切りをつけた八木さんの主張は、枠外にいるからこそ、発せられるものであり、説得力をもって響いてくる。


<プロフィール>
1991年生まれ。早稲田大学卒業。学生時代はサッカーに励み、U17日本代表候補に選出。早稲田大学時代には、女子サッカー部で副主将を務める。大学女子サッカー選手権優勝2回、準優勝1回の実績を持つ。大学在学中に、自転車一周の旅に出て、人が好きになる。大手上場企業を2ヶ月で退社し、現在は様々なメディアでフリーライターとして活動中。

次を目指すか停滞するか逃げ出すか

八木さんのように次の道を自分で見出して折角入った会社から飛び出した人もいる。これは大きな前進だ。先行き不安な社会を自ら切り開くために、さらに不安定なところに飛び込み自分を高めようとする彼女の生き方は、これからの働き方をする人にとって大きな道しるべとなるだろう。

しかし、誰もが彼女のような働き方ができるわけではない。今自分がいる会社に対して不安や不満に思っている人は、自分の生き方について考え直してみてはいかがだろうか。特に新卒で入社して3ヶ月ぐらい経ったとき。自分の働き方、仕事について一つ悩む時が来るはずだ。

新卒で入社して働く中で「辞めたい!」と少しでも感じたことがあるなら、こちらの記事を読んでみて欲しい。
心の切り換え方のヒントになるはずだ。
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