情報処理技術者はIT社会に素早く対応
ITシステムの専門家「情報処理技術者」
「情報処理技術者試験」とは、情報技術(IT)に関する知識・技能の有無を図る資格である。
ITの変化に柔軟に対応できるよう、エンジニアの技術向上や、学校・職業などで指導者の確保を目的に創設されたIT系の資格で唯一の国家資格である。Word や Excel のような特定のソフトウェアに対するスキルではなく、情報技術の幅広い知識や技術を総合的に評価する試験となっている。
この資格は、情報システムを構築・運用するエンジニアから、情報システムを利用するエンドユーザ(利用者)までを対象とした幅広い人が対象となっている。IT業界でスキルアップしたい人にも、昨今の社会人に求められる基礎知識を学びたい人にも是非おすすめしたい。
情報処理技術者の試験体系
情報処理技術者の試験は、ITに関係するすべての人が活用できる試験として実施されているため、受験者の知識や技術のレベルに応じて難易度を選択することができる。また、年齢や国籍等を含めて受験する上での制限もなく、どの試験区分からでも受験ができるので、自信のある人は最初から高いレベルに挑戦するのもよいだろう。
レベル1「ITパスポート試験」
社会人に必要とされるレベルのIT知識を学習するのがITパスポート試験である。試験にはIT管理、IT技術、経営全般に関する基礎的な問題のほか、コンピューターの仕組みや、簡単なセキュリティの問題なども出題される。一番下の区分とされる試験だが、常識とされるIT知識を備えているかどうかの指針となるため、就職や転職活動の際にも役立つ試験だ。
レベル2「基本情報技術者試験」
ITに関する技術的な基礎を学ぶのが基本情報技術者試験だ。試験には、先に紹介した基礎的な知識や技術に加えて、プログラム言語やアルゴリズム(問題解決の手順)に関する問題が出題される実践的な内容になっている。システム開発やプログラミングを行うIT業界には必須の試験だが、IT化の著しい現代においては、一般企業でも需要が高まっており、4つの試験区分の中ではもっとも人気が高い試験である。
レベル3「応用情報技術者試験」
IT業界に携わる高度な人材となるために必要な応用的知識・技能を学ぶ試験である。試験には基本情報技術者試験をより深く掘り下げた問題や、経営戦略の立案、コンサルティング技法の問題も出題される。高い知識と技術を持ち、プロジェクトのリーダーを任せられる中心人物になるための試験といえるだろう。
レベル4「高度試験」
レベル3までの試験とは異なり、高度試験は特化したカテゴリごとに細分化されている。セキュリティの専門家を目指す「情報セキュリティスペシャリスト」や、データベース運営やシステム構築のプロになるための「データベーススペシャリスト」など、合計9種類の試験から受験したい区分を任意に選ぶことができる。自身が志す職種において、必要とされるスキルに見合ったものを受験するのがおすすめだ。
※レベル4の高度試験は、ほかにもITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、ネットワークスペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験、ITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験が存在する。
情報処理技術者試験の合格率(2014年)
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
レベル1「ITパスポート試験」 | 36,478 | 17,974 | 49.3% |
レベル2「基本情報技術者試験」 | 100,879 | 23,953 | 23.7% |
レベル3「応用情報技術者試験」 | 62,746 | 12,655 | 20.1% |
レベル4「情報セキュリティスペシャリスト」 | 36,104 | 5,071 | 14.0% |
レベル4「データワークスペシャリスト」 | 21,358 | 3,516 | 16.4% |
レベル4「ネットワークスペシャリスト」 | 26,503 | 3,731 | 14.0% |
レベル1のITパスポート試験は全国47都道府県で随時実施しているが、レベル2以降の試験は年2回の4月と10月に行われるため、試験日を考慮した上で学習計画を立てるのが望ましい。また、応用情報技術者試験に合格している場合は、2年間に限りレベル4の試験が一部免除される制度が整っている。
普段は何気なく使っているパソコンやスマホに限らず、現代社会においては学校や会社のオフィスなど、様々な場所でIT技術が活用されている。情報処理技術者は、常識になりつつあるこれらのIT知識を身に着けるにはとても役立つ試験である。加えて、採用に試験合格を考慮する企業や、試験の合格者には一時金・資格手当などといった報奨金制度を設ける企業も数多く存在することも、資格取得の上ではひとつのメリットといえるだろう。