企業風土

特許法改正がもたらす社畜化と日本空洞化【ほぼシューイチ瓦版】

投稿日:2014年10月18日 / by

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社員の手柄は会社の手柄か

クイズです。「社員の手柄は社員の手柄」。「社員の手柄は会社の手柄」。どちらが正解でしょう。答えは、前者です。ただし、「仕事上の発明については」という条件が付きます。

特許庁が、現行の特許法の改正する方針を固めました。仕事上の発明は「社員に帰属する」とのこれまでの定めを「会社のもの」へと変更するのです。つまり、「社員の手柄は会社の手柄」となります。来年の通常国会への法案提出を目指しているそうです。

なぜ、こんな動きが起こったのでしょうか。背景には、企業の社員からの訴訟リスク回避があります。現行法では、企業は、社員に帰属する特許を、発明の価値に見合った対価を支払うことで譲り受けることができます。しかし、社員が不満を抱き、訴訟へ発展した場合、莫大な費用を請求される可能性があります。場合によっては、企業の存続にもかかわりかねません。

そこで、昨今の事例も鑑みつつ、企業側がお上に働きかけ、“策”を講じたわけです。こうした側面だけをみれば、今回の法改正の動きは、企業側の一方的な言い分の様でもありますが、改正という以上、一定の配慮はなされています。報奨の義務付け、それに伴う適正な社内報奨ルールの策定などです。これにより、一応、社員側の不満を抑制する作用は期待できます。

時代に逆行した法改正

しかし、発明の対価を「適正に」評価することは非常に困難です。ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、青色発光ダイオードの発明で争い、一審で企業側に200億円の支払いが命じられ、最終的には8億円で落ち着いています。この事例を見ても分かるように発明は、世界を変えるほどのインパクトがある場合には、その価値は膨大なものになります。なにを持って「適正」とするかは、極めて困難です。

訴訟を起こした中村氏は、対価を手にしたものの、企業側の姿勢に失望し、退社。米国籍を取得して、海外での研究の道を選択しました。閉塞感の漂う日本とは違う自由な空気の中で、同氏は、水を得た魚のように研究に没頭し、自らの人生をも満足のいくものへと昇華させました。今回の法改正は、こうした優秀な人材の海外流出阻止という側面もあるようですが、説得力に欠けるといわざるを得ません。

「発明なんて自分には無関係」。多くのサラリーマンがそんな風に思っているかもしれません。それでなくても日本のサラリーマンは、会社への強い忠誠心があります。しかし、頑張ってあげた売り上げの全てを会社が吸収し、社員に一切還元しないとしたらどうでしょう。納得できるでしょうか。少々極端ですが、この特許法の改正は、そうした企業と従業員の関係を考える上で、非常に大きな分岐点となるトピックといえます。

この話題を「会社あっての自分だから当然の流れかな」と何となくやり過ごすようでは、アナタは着実に迫りくる未来の働き方の波にあっさりと飲み込まれてしまうかもしれません…。なによりも、自分が取り組んでいる仕事の価値も考えず、ただこなすだけの社員には、もはや未来すら訪れないでしょう。企業側にしても、個人の力を最大化できなければ、生き残っていくことは困難な時代へと遷移しています。その意味では、企業側に多分に有利な今回の“法改正”への動きは、グローバルという観点からも時代に逆行している気がしてなりません。

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