インタビュー

なぜ、理想の「働く」は、手に入れるのが難しいのか

投稿日:2016年3月23日 / by

既定のレールから外れたからこそみえたもの
イベントプロデューサー
フジモトタイチ氏 <前編>

<働くとは…>。ビジネスパーソンにとって、最も身近でありながら、あまり意識されないテーマかもしれない。明確な解はないだけに無理もないが、見方を変えれば、みえないものがみえてくることもある。一般的な学生からの就職パターンにそっぽを向いた、イベントプロデューサーのタイチ氏。「生粋の天邪鬼」が、あえて選択した“規格外”の道のりの先にあったのは、意外にも「働く人」と「仕事」の理想に近い関係性だった…。

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“逆回転人生”で切り開いたポジション

同氏のこれまでの人生は、一般的な学生が就活を経て社会人へと進む過程と逆行するような独特のコースを歩んでいる。日本の大学を卒業後、ロンドンの大学院へ留学。卒業後、現地で起業し、失敗。“ホームレス社長”として人とつながりながら生き延び、帰国。その後、フリーの企画屋として活動。そして、30歳を目前にして、再び起業し、社長となる。七転び八起きというより、気ままに動き続け、どんな困難もポジティブに捉え、切り開いた末にいまがある…。

「学生時代、面白かった仲間たちも就活をすると丸くなっていく。自分はそうなりたくないと思ったんです」。学生時代、就活に励む仲間が、すっかり常識人になっていく姿を横目にみながら、タイチ氏は、空しさのようなものを感じていた。本当に誰もが無条件で通らなければいけない道なのか…。日本で社会人になることは、イコール自由から遠ざかる――。タイチ氏の心のどこかに、そんな漠然とした思いがあった。当たり前のように視界に入ってきた既定路線から外れる選択をするのもごく自然だった。いよいよ就活となるころには、毛髪を金色に染める。就活しない“決意表明”だ。

社会人生活のスタートはロンドンでの起業だが…

大学卒業→就活→企業へ就職という定番コースを拒絶しタイチ氏が、その進路に選んだのは海外の大学院。英語が得意だったワケではないが、型に収まらない自由さを求め、あえて海外を目指した。なんとか語学もマスターし、滑り込んだのは英国・ロンドンの大学院だ。仲間は就職し、会社で汲々とする同じ時間、タイチ氏は、伸び伸びとロンドンの学生生活を謳歌する。そして卒業後、当初から目標としていた起業を実現。日本での就活を蹴った金髪学生の社会人生活は、「ロンドンで起業」という耳触りのいい形で、とりあえずスタートする。

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ロンドンでの大学院卒業までは順調だったが…

だが、異国での起業がそう簡単にうまくいくわけもない。ポツポツと仕事は来るが、スズメの涙。みるみる資金は尽き果て、事業はあえなくとん挫する。2年間のビザの期限も残り半年に迫っていた。常人なら、ほぼ迷わず、無念の帰国を選択するシチュエーションだろう。ところが、タイチ氏の辞書に「後退」の2文字はなかった。なんと、資金がないことを逆手にとり、“ホームレス社長”として、チェンジメーカーの話を聞くという活動を始める。まさに宿無しで路上や空港で寝泊まりしつつ、知り合った人の家に泊めてもらうなどで食いつなぐという図々しさの極みだ。それでも、ロンドンっ子の懐が深いのか、文無しのタイチ氏があまりに哀れに見えたのか…。その数は、約400人にもなった。

イベントの大成功で訪れた転機

土壇場で、海外での人脈という大きな財産を得て帰国したタイチ氏は、「人のつながりで生きられることを体感したが、自分は与えてもらっただけ。この財産を生かし、大きなインパクトを残すなにかを出来る人にならねば」と一念発起。フリーランスの企画屋として、得意の人を驚かすことに知恵を絞ることになる。そして、ホームレス社長時代に知り合った海外人脈から「早朝フェス」の創始者に突き当たり、すぐに交渉を開始。権利を獲得し、日本版として開催。これが、多くのメディアの注目を集めるイベントとなり、タイチ氏のイベントプロデューサーとしてのキャリアがスタートする。

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早朝フェスに続く、スライドザシティも大きなインパクトを残した

手探りで始めた早朝フェス。特別、音楽に造詣が深いわけでもなく「面白そうだから」、という軽いノリだったが、注目度の高まりと比例して、動きは加速する。企業とのコラボが実現するなど、順調に成長し、ノウハウも蓄積。勢いに乗り、次に手がけた、「スライドザシティ」というアメリカ発の超巨大ウォータースライダーを設置し「道路を滑りまくる」という大スケールのイベントは、年間で1万人規模を集客。大成功を収める。まさに世間に「大きなインパクトを残し」、タイチ氏は、イベントプロデューサーとして、それなり胸を張れるところまで辿り着く--。ところが…。

インタビュー後編(やりがいの追求とビジネスとして成立させる分岐点にあるもの)では、イベントプロデューサーとして本格的に活動することを決めたタイチ氏のこれからと「働くこと」についてお届けします。


【プロフィール】フジモトタイチ
たいち(株)がんばれタイチ(法人設立準備中)社長。「楽しくチャレンジする」をモットーに、国内外問わずイベントや様々なクリエイティブ分野で活躍するクリエイティブチーム(現在、1人)であり、世界と日本の面白いコトをつなぐ仕事をしている。2013年11月に5年間の英国ロンドン生活を終え帰国。その後、通勤通学前に参加できる平日の早朝フェス「Morning Gloryville Tokyo」や、全米で話題沸騰の街中巨大ウォータースライダー「Slide the City JAPAN」を仕掛けたりと東京を中心に様々な話題のイベントや企画を作り出している。

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