インタビュー

奔放不羈を地でいく男が成し遂げた偉業と愚行

投稿日:2017年11月17日 / by

株式会社誠/銀河ヒッチハイカーズ代表
星野誠

有言実行。この言葉から受けるのは、<言ったことに責任を持ち、必ずやり遂げる>という非常にデキる人間の印象だ。誠眼鏡の創業者・星野誠も言ったことは実現する。それも半端なことではないレベル。だが、星野にはなぜか別の4字熟語をあてはめたくなる。2014年の瓦版インタビューで「エベレスト登頂」を宣言。3年ぶりに再会した星野は、多くの土産話を携え、大いに語った。相変わらずの“行動先行主義”で周囲をかき回しながら歩んだ3年は、さらに濃密でスケールアップしていたのだが…。

3年前のインタビュー→行動を優先するとどんな人生になるのか…

奔放不羈な男の3年で成し遂げた偉業

「エベレストに登ります」。前回のインタビューでそう予告していた星野。登頂予定は2019年。ところが、それより2年も早い2017年秋、星野から連絡が来る。なんと7サミットを制覇したというのだ。行動先行主義は十分に認識していたが、前倒しで、さらに大きな偉業を達成したという報告に、星野のポテンシャルの高さに改めて驚かされた。ところが、会って話を聞いてみると、なんとも意外な展開が待っていた。

登山経験のない星野が、たった3年でエベレストどころか、7サミットを制覇。純粋に偉業だ。だが、星野の口からでてくるのは「たいしたことないんです」、「本当にスゴイ人は他にいますから」と謙虚なものばかり。自分の功績をひけらかすタイプではないものの、宣言したことを圧倒的なレベルで達成したのだから、少しは自慢してもいいだろう。それどころか、星野は「7サミット制覇は難しくはない。全てを捨てればいいんですから」と意味深な言葉を口にする。

スペシャリストとの出会いで加速した最高峰制覇

いつもの陽性な雰囲気こそ変わらないが、偉業達成で人間的に一皮むけたのか、ブレーキの使い方をマスターしたのか…。逞しさの様ななものも身につけた星野は、この3年の出来事をいつもの軽快な口調で語り始めた。まず実行したのが、エベレストへ登るための手がかりの調査。といっても、やったことはシンプルに登山家・三浦雄一郎氏へのコンタクトだ。さすがに本人とはつながらなかったものの、その流れから星野は、初心者向けのエベレスト登頂トレーニングに参加する機会を得る。ここで、エベレスト登頂のスペシャリストと出会い、少し遠い先の予定だった最高峰登頂は一気に現実味を帯びる。星野のエベレスト登頂への本気度を感じ取り、同氏が強力にサポートしてくれることになったのだ。

思わぬ形で強力なパートナーを得た星野は、完全にスイッチが入る。サポートを約束した同氏の力強いけん引に夢中で食らいつき、手始めにヨーロッパ最高峰のエルブルース(5,642m)にアタック。見事、制覇する。エベレスト登頂を宣言してわずか1年後のことだ。しかし、世の中そんなに甘くはない。実は、ここで星野は山登りの怖さをまざまざと体感する。「ホントにヤバかったです」と登頂こそ成功させたものの、死にそうな目にあったのだ。結果的にこのことが、星野のエベレスト登頂への思いを一気に加速させ、先述の意味深発現へとつながっていく。

最高峰制覇の順調さの裏で下した非情決断

いきなり7サミットのひとつをクリアした星野。だが、あくまで目標への1プロセスでしかない。エベレスト登頂のトレーニングはしっかりと継続しながら、星野は起業家としての活動もしっかりと行っていた。エイブルース下山後には、誠眼鏡の香港店に続き、長年の夢だったアトリエを同地にオープン。もちろん、いつもの行動先行主義で、実現まではドタバタ続きだ。それでも、2人の協力者の献身的なサポートを受け、2か月ほどのDIY改造の末、開店にこぎ着ける。2015年夏のことだ。ところが、苦労の末にオープンしたアトリエを、星野はわずか一か月で閉鎖。さらに香港店も縮小してしまう。

「エルブルースでの苦い経験から、中途半端な状態ではエベレストはもちろん、事業を成功させるのさえ到底無理と判断しました。それで事業の方はスッパリと捨てることにしました。2人の支援者には本当に申し訳ないと思っています。ひど過ぎますよね。いつか必ず恩返ししなきゃと思っています」。本当に申し訳なさそうに振り返った星野。「全てを捨てる」といった真意はまさにこの出来事のことだ。自分の目標達成ために身を粉にしてくれた支援者を斬り捨てる。そう捉えれば、非情極まりない男。夢のために断腸の思いで、現実を諦めた。そう捉えれば、究極の“バカ”、だ。

これまでも人を巻き込み、振り回す傾向は強かったが、さすがの星野もこの件は深く反省した。ところが、そのほんの数日後、星野はありえない行動を起こす。知人起業家との会合の中で、海外進出のハナシが浮上。その流れで、星野が東南アジア地区の現地法人代表に就任することになったのだ。まさに舌の根も乾かぬうちの大暴走。香港での支援者2人が聞けば激怒しそうな、信じられない非礼な展開だ。悪びれながらも星野は、インドネシアのIT企業の現地代表としての顔を新たに持つことになる--。(後編に続く)


<星野 誠 Makoto Hoshino>
(株)誠/銀河ヒッチハイカーズ代表。ほぼ思いつきで書き込んだ「人生のやったら面白そうリスト」に従い、前後関係無視、人間関係グダグダにしてでも突き進む“盲進”男。アイアンマンマラソン、宅建20日間合格、ゴビ砂漠250キロ…どれも未経験で無謀だが、結局達成してしまうから恐れ入る。2017年5月のエベレスト登頂は、予定の2年前倒しに加え7サミット制覇のオマケつき。もはや「無謀」というのは不適切な域に足した感のある有言実行男はいま、復活させた宇宙旅行社の代表として「いまできる人類最高地点に足跡を残すこと」を宣言し、宇宙産業での火星オリンポス山制覇を目指す。星野誠

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