インタビュー

優秀なほど正社員が損になる時代のスマートなキャリア設計とは

投稿日:2016年2月3日 / by

正社員減少が加速する本当の理由
BFI代表 安田佳生氏

優秀な正社員はゆるくリタイアしなさい--。40億の負債を抱え、会社を倒産。ドン底に落ちながらも独自の視点は失わず、常識を疑い続ける変人・安田佳生氏。新刊「自分を磨く働き方」では、「働く意味」という永遠のテーマに解を示しつつ、正社員神話にとどめを刺す刺激的な提言を放っている。会社の裏表を知り尽くす氏だからこそのメッセージは、ふんわりと正社員に甘んじているビジネスパーソンの耳に、鼓膜を突き破る“奇声”に聞こえるのか、それとも覚醒へのアドバイスとして届くのか…。

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いまだに正社員信仰が根強い理由

年功序列や終身雇用制の崩壊が叫ばれて久しい。人口が減少局面に突入し、社会や産業構造も変質。「正社員」という雇用形態を維持する前提は、とうの昔に崩壊している。それでも、いまだ根強い、大企業神話と正社員神話。なぜ、多くのビジネスパーソンは、いつまでも幻想にしがみつこうとするのか?

安田氏の見解は明快だ。「求人情報からしか職を探さないからです。求人情報の中に全ての仕事があると思い込んでいるのもかもしれませんが、あれはごく一部。その中から、親が喜びそうな企業、知っている企業を選んでいるのでしょうが、もはや大小問わず、定年まで社員の面倒をみれる企業などありません。ただ、じぁ、どうすればいいの? となった時に、正解がある問題じゃない。だから、右肩上がりの時代の成功事例としての大企業、正社員というものが、安定につながるということで、選択してしまうのでしょう」。

正社員でい続けた方がいい人・辞めた方がいい人

昨今、大企業で次々と大リストラが行われている。まさか気づいていないハズはなく、知らぬふりをしているだけなのかもしれない。それとも、「自分には関係ない」、と言い聞かせているのだろうか…。経営者でもあった安田氏は、そんな事なかれ主義の正社員信者の横っ面を叩くように、生々しい事実を提示する。

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「実は、正社員ほど搾取される働き方はないんです。給与以上に稼ぐ人もいる一方で、それ以下の人もたくさんいる。頑張っても報われない働き方が正社員なんです。実際、月に何百万円も稼ぐのは、決まって正社員じゃない雇用形態の人たちでしょ。もしも正社員にこだわるなら、いかに給与ギリギリのラインで帳尻を合わせて働くかがポイントじゃないでしょうか。その意味では、優秀な人は正社員契約から解放された方が確実に年収は上がります。能力を儲けに最大化できるワケですから。逆に、仕事ができない人、つまり、会社にとって『赤字』の人は会社員にしがみ付いた方がいいでしょうね」。

ぬるま湯正社員にはなんとも痛烈なアドバイス。さらに優秀な社員にとって、正社員であることがマイナスとは衝撃的だ。だが、確かに月給制の正社員というシステムの中では、多少の成果給や賞与があったとしても、“割り損”であることは確かだろう。さらにいえば、すぐれた能力を有効に活用できる雇用形態に切り替える方が、費用対効果もよさそうだ。そうはいっても、現実には、優秀な社員は強力な引き止めも含め、辞めない傾向にあるのもまた事実だ。

不安なく正社員を辞める方法

「それは、なんだかんだいっても正社員=安定という思い込みがまだ根強いからでしょう。それにフリーになれば、やはり会社の看板を背負っていた時のようにはできないのでは、という不安もあるのかもしれません。ですから、いきなり辞める必要はないんです。ゆるく辞めればいい。例えば3年で年収の半分を副業で稼ぐという目標を立て、それを達成したら辞める、とかですね。これからは、間違いなく、優秀な人材がどんどん会社を辞め、正社員自体が減っていくと思います」と安田氏は、ズバリ予測する。

かなり大胆だが、決して荒唐無稽には聞こえない働き方の近未来予測。最新刊ではそのタイトルにあるように「自分を磨く働き方」がこれから重要なると説く安田氏。そうした働き方こそが、正社員減少時代に有効だからだ。では、どうすれば、そうした働き方が実践できるのか。

インタビュー後編【「好きを仕事にする」ことが重要な本当の意味とは】では、その実践のポイントを中心にお届けします。


yasuda5<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)

1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。

 

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