進むワーカーの3極化【グローバル化が加速する働き方革命】
スタンスで分かれるワーカーの志向
グローバル化の中で、働き方を変革するには何をすべきか。それ以前に本当にその必要があるのか。この点について、リクルートワークス研究所の戸田淳仁氏は次のように話す。
「確かにグローバル化はもはや不可逆の潮流です。ただし働く人のすべてがグローバルに活躍することを考える必要はないでしょう。労働者のスタンスがゆるやかに“3極化”しており、これからはその傾向がより顕著になっていくと予測しています」。
戸田氏のいう3極化とは次の3つだ。
(1)グローバル志向
(2)ナショナル志向
(3)ローカル志向
(1)は、まさにグローバル化を見据え、世界を視野に働く人。(2)は、あくまで国内を活動拠点として働く人。(3)は、国内の中でも地元に定着して働く志向を持つ人だ。
グローバル資本主義の浸透がトリガーになったわけではないにせよ、国内だけでなく、「世界」がその選択肢に入ったことで、働く人の意識も自ずと明確になるというところだろう。この分類がうまく機能するならば、企業は、適正な人員配置とコスト分散を実現できるのかもしれない。
コアになるのはナショナル志向
おそらくコアとなる(2)の層を基準に、(1)の層には、世界規模のマーケットで競争していくという機会とそれに応じた給与設定 、(3)の層にはローカル相場の給与と「ゆとり」という調整を図り、全体コストを最適化。それにより、企業は、従業員の意思をできる限り尊重しつつも、やりがいや高い満足度を感じさせることが可能となる。
(3)の層は、すでにネット環境の充実により、実現は可能だ。例えば、オフィスが東京にありながらも北海道や九州に住んで働く形でも問題なくプロジェクトの一員として働くことができる。当然、ワークスタイルはリモートワークとなり、交通費が削減できるばかりでなく、給与もローカル相場を適用できるだろう。従来なら、地元Uターンはやる気のない社員として閑職へ追いやられていただろうが、テクノロジーの進化で場所によるハンデはないに等しくなる。
(1)の層は、会社の方向性にもよるが、戦略上世界を見据えているならば、重要な戦力であり、なにより、採用段階から「グローバル枠」として設定することで、効率的で戦略的な採用が可能となる。とってつけたようなグローバル要員が人件費を圧迫している事例も珍しくなく、そうしたことを回避する意味でも理にかなっている。
新卒においては、基本一括採用し、その後、配属を決めるという形がスタンダードとなっている日本企業。そもそも、そうしたスタイルが柔軟性を欠落させ、スキルアップを妨げてきた側面は否定できない。世界では、スキルによって職場とつながるのが標準だ。3極化の流れを、うまく組織運営に活用することが、企業そして従業員にとっても働き方変革への決して小さくはないファーストステップといえるかもしれない。
【プロフィール】戸田淳仁(とだあきひと)リクルートワークス研究所 研究員
慶応大学経済学部卒。2008年より現職。「大卒求人倍率調査」「採用見通し調査」など、民間企業の新卒採用、中途採用に関する調査に携わる一方、インドに進出する日系企業の採用動向ヒアリング、日系企業で働くインド人のヒアリングを担当。インドに関する報告書「インドにおける新卒採用の現状」を取りまとめなど行った経験がある。
・リクルートワークス研究所:http://www.works-i.com/