働き方

徹底すればメリットづくし。なぜいま、ワーク・フード・バランスが注目されるのか

投稿日:2016年9月30日 / by

職場を健康にするワーク・フード・バランスとは

健康経営」という言葉に代表されるように、職場での従業員の健康維持が、経営の観点からも重要という認識が高まりつつある。とはいえ、増大傾向にある業務量にまみれることなく、ビジネスパーソンが職場で健康的にいることは簡単でない。そこで注目されているのがワーク・フード・バランスという考え方だ。

いいものをいいタイミングで食べるだけも生産性は上がる

いいものをいいタイミングで食べるだけも生産性は上がる

ワーク・フード・バランスは、仕事と食摂取の最適なバランスの意。仕事の忙しさにかまけ、食事をおろかにしない。その上で、食についての意識を向上させることが、その内容だ。具体的には、次の5つになる。食事の時間を意識する。栄養を意識した食事を摂る。食を意識する環境をつくる。健康的な食事を摂りやすい仕組みをつくる。食事に対する知識を向上させる。

要するに、人間にとっての食事の重要性をしっかりと認識し、体にとって最も自然な形での飲食を実現し、健康な体作りを実現するということだ。職場においては、ランチタイムが必ずある。週休2日なら1週間に少なくとも5回の食事機会が発生する。残業続きのビジネスパーソンでは朝食を抜く率が高く、職場で夜食を食べる可能性もある。そうしたことを考えると、職場で何をどう食べるかを軽視できないのも理解できるだろう。

職場での食の重要性を解説する五十嵐氏

職場での食の重要性を解説する五十嵐氏

東京工科大学産業保健実践研究センター五十嵐千代教授は、ワーク・フード・バランスの有効性を次のように指摘する。「現代は、第三次産業化により業務がデスクワーク中心にシフト。労働形態も多様化し、国際化が進むなど、ストレスフルな社会となっています。その結果、生活習慣病、メンタルヘルスが大きな健康課題となっています。対策には食事と運動がありますが、職場においては運動は現実的でない。そこで食事がポイントになりますが、単にヘルシーな食事を提供するだけは効果は期待できません。働く環境に好ましい食環境があることが、調査などでも効果的であることが分かってきています」。

社員食堂のある企業では、ヘルシーさを前面に出したメニューを提供する事例が増えている。社員食堂を設置するほどの財力がない企業でも、昨今は食材にこだわったヘルシーフードを配置型で提供するサービスが増加している。こうした動きは、まさに従業員の健康を意識した好ましい食環境の提供に他ならない。とはいえ、職場における食事の重要性は、企業にもそこで働く従業員にもまだまだ十分に認識されているとはいえない状況にある。

生産性向上やキャリアップの後押しも

このほど、一般社団法人ワーク・フード・バランス協会を設立した発起人の(株)おかん・沢木恵太CEOは、「『健康経営』というキーワードが急速に社会的認知を高めつつあります。一方で、健康経営における企業による具体的なサポート手法はいまだ未確立です。そこで、職場において、雇用者・被雇用者ともに日常に取り入れやすく、健康改善や未病アプローチへの直接的な好影響が見込める食事に着目し、職場におけるワークフードバランスを推進するため、課題意識を同じくする企業、団体、有識者、行政とともに啓発活動を展開するため、当協会を設立しました」とその目的を明かす。

左から岡村製作所・鈴木勇二氏、ケアプロ・鈴木氏、おかん・沢木氏、五十嵐氏、TABLE FOR TWO・大宮氏、ウエルネスデータ・星野氏

左から岡村製作所・鈴木勇二氏、ケアプロ・鈴木氏、おかん・沢木氏、五十嵐氏、TABLE FOR TWO・大宮氏、ウエルネスデータ・星野氏

同協会では、ワーク・フード・バランスの導入メリットをいくつか挙げている。その中で興味深いものを2つピックアップする。<残業や多忙による欠食や不健康な食事などを回避し、体調管理ができる>。<食意識の変革で、生活意識や労働意識も自立的になり、キャリアップを後押しできる>。当たり前のことのようだが、逆にいえば、多くのビジネスパーソンが食事の重要性を軽視しているといえる。

残業で遅くに帰宅し、夜食を摂取。翌朝は目覚めが悪く、ギリギリに布団を飛び出す。胃が重く、朝食はスルー。10時過ぎに小腹を満たし、昼はようやく3時前に空腹を感じランチ。夜はやっぱり残業で、翌朝は胃が重く、朝食スルー…。結局、摂食のタイミングが乱れていることで、体が不調になっている。もしも、これを7時に起床し、しっかり朝食を摂れば、昼は自然に12時過ぎに空腹になる。美味しくランチを食べればその後の仕事もはかどり、ノー残業で7時前には帰社。夜9時前に夕食を終えれば、翌朝も目覚めはバッチリで朝食もオイシイ…。単純なことだが、食事のリズムは1日の快調さと深く連動している。

タマゴが先か、鶏が先かには答えがないが、適切な朝食が先か、残業が先かには解がある。朝・昼・晩の食事を体に負担の少ない適正なタイミングで摂るだけでも、体調が良化し、生産性が向上。残業削減につながる。これは決して理想の話でも、乱暴な理屈でもない。仕事と食事のバランスを意識するワーク・フード・バランス。結果的にワーク・ライフ・バランスの実現にもつながる、ビジネスパーソンの食の意識改革は、時間より成果が問われ、残業=悪が標準となる時代には、必須の考え方になっていくかもしれない…。

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