働き方

働き方改革に挑むヤマト運輸はどこまで切り込んだのか

投稿日:2017年4月13日 / by

現場疲弊が深刻なヤマト運輸の働き方改革基本骨子

ヤマト運輸の働き方改革の基本骨子が決定した。サービス維持が困難になるほど、需給バランスが崩れ、労働現場が疲弊していた同社。遅きに失した感はあるが、改革の言葉に見合う、課題に大きく切り込んだ内容となっている。

基本骨子として挙げられたは5点。(1)労務管理の改善と徹底、(2)ワークライフバランスの推進、(3)サービスレベルの変更、(4)宅急便送料のコントロール、(5)宅急便の基本運賃の改定。(1)、(2)は当然だが、それ以外は、サービス内容に切り込んだもので、デリバリー産業の在り方に一石を投じるものといえる。

(3)については、指定が集中する「20時から21時」を「19時から21時」の2時間枠に変更。社員の昼休憩にあたる「12時から14時」の枠は廃止となる。顧客にとってそれほど重要でなく、宅配側にとっては重荷となるいわば過剰サービス。現場を疲弊させる元凶のひとつだけに、バッサリとメスを入れた形だ。

(4)は、特に大口や低価格のクライアントに、依頼荷物量の抑制を依頼するというもの。ズバリ、アマゾンとの契約が低価格で大量の荷物を抱える元凶となっただけに、そこに切り込む決断を下したということだ。売り上げを考えれば悩ましいが、従業員の労働環境を考えれば、無視できない大きな問題。今回の決断の中でも、難しい判断が迫られた項目だろう。

(5)は、(4)とも連動し、新しい収益モデルの確立につながる施策といえる。基本運賃の値上げは、実に27年ぶり。このことが、同社の顧客を増やしたのは確かだが、同時に従業員を疲弊させたとすれば、あまりにも遅い決断だ。一方で、値上げによる増収分は、IT基盤の拡充やオープン型宅配ロッカーの設備拡大などへ投資するとしており、あらゆる側面から労働環境の改善を実現する覚悟がにじむ。

同社は、こうした取り組みについて「私たちはお客様の満足を高めるための便利を、これからも提供し続けます。また、社会の満足を高めるために、パートナーや業界の環境を改善していきます。そうすることで事業を事業を持続的に発展させ、株主の満足を高めていきたい。そのためには『社員がイキイキと働ける職場を作り直し、社員の満足を高めていくこと』が最優先事項であると考えています」と決意表明している。

労働環境の改善は、企業だけの取り組みでは限界がある。取引先との関係性も密接に絡んでくる。利用者の理解も不可欠だ。そうしたことにまで踏み込んでいる点で、同社が打ち出した改革案は、「改革」の名にふさわしい内容といえる。それだけに、これら施策によって、企業がどう深化するのかは、働き方改革がもたらすことを占う意味でも、注目される。

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