働き方

ランサーズ新成長戦略ににじむ、フリーランスに待ち受ける明るくも険しい行く末

投稿日:2017年4月19日 / by

創業10年目へ向け、テクノロジー力をフル活用へ

ランサーズ(株)(本社:東京都渋谷区代表取締役社長:秋好陽介) は、2017年4月19日、新成長戦略「Open Talent Platform(オープン・タレント・プラットフォーム)」構想を発表した。テクノロジーのチカラで個人の働き方の可能性を拡げるという、創業10年目へ向けての大きなビジョン変更を伴う動きで、新しい働き方をより先進的にけん引する。

新戦略を発表したランサーズ取締役(左から足立氏、根岸氏、秋好氏、曽根氏)

「オープン・タレント・プラットフォーム」は、テクノロジーの力で個人の働き方の可能性を広げ、スキルと仕事の効率的なマッチングにより、生産性を飛躍的に向上させる同社の新成長戦略。これまでに蓄積したデータをもとに、AIを活用し、案件とフリーランスを高精度にマッチング。双方にメリットのある高い次元の仕事遂行力を実現する。

導入AIは、京都大学との産学共同で研究し、機械学習によって個人の「働く」データを解析。スキルや仕事のマッチング精度を向上させる仕組みづくりを目指す。その先には、新たな一歩を踏み出した同社の技術力の核となる独自テクノロジー「LANCERS SMART DATA TECHNOLOGY」構築があり、「オープン・タレント・プラットフォーム」構想を支えることになる。

企業が進化する上で、テクノロジーを活用するのは成長を考えても当然の動きだ。今回の進化によって、ランサーズではこれまで、人的であいまいだったマッチングを、AIにより合理的に行うことになる。これにより、企業はより安心して案件を発注できる。依頼主選別の手間も省かれる。クラウドソーシングの課題のひとつだった、低品質問題も改善へ向かうだろう。

AI導入で危惧されるフリーランスらしさの喪失

だが一方で、フリーランスの良さが失われる危惧もある。そもそもフリーランスは気ままに、自身のスキルを活かし、仕事を受ける働き方だった。そこには、いつ仕事が入るか分からない不安定がつきまとったが、それ以上に自由があり、クライアントとの人的つながりがあり、血が通っていた。だからこそ、依頼された仕事から次の仕事が産まれる好循環ももたらされた。

AIでのマッチングが主体になれば、選別は確実にドライになる。クライアントにとっては好都合でも、ランサーによっては受注機会が実質減になる可能性もある。仕事の出来る人に案件が集中することは避けられないからだ。加えて、新成長戦略では、「ランサーズトップ」という優秀なフリーランス向けの新カテゴリーが設置される。

このカテゴリーに選抜されるには、基本、実名で、リアルの仕事も受け、審査基準も設けられる。審査は書類選考、スキルチェック、面談があり、さながら正社員の採用試験レベルだ。その分、報酬は大幅にアップするが、もはやそこにはいわゆるフリーランスらしさはほとんどないといっていい。

マッチングプラットフォームとしてのインフラ目指す進化

こうした戦略について、同社取締役の根岸泰之氏は次のように説明する。「クラウドソーシングがフリーランスのプラットフォームとしてのインフラになるためには、品質面の安全性、マッチング精度、信頼性が必要不可欠。そのためにやるべきことを盛り込んでいる」。多くの企業が当たり前のように案件を発注し、フリーランスが仕事を探す場――。そうなるための大きな一歩が、今回の新戦略には込められている。

総合型のスキルシェアサービス参入でフリーの裾野拡大は維持

フリーランスの引き締め。クラウドソーシングのパイオニアが進む次のフェーズは、どうしてもフリーランスにとっての厳しさが目に付くが、もちろん、誰もが自分らしく働けるサポートは継続する。それを担うのが、新サービス、「pook」だ。スマホで簡単に仕事を依頼できるスキルシェアサービスで、Uberのような使い勝手で、チャットと位置情報により、手軽に確実にマッチングを実現する。本人認証も厳密に行うため、安全性も高いという。

ワンランク上のクラウドソーシング経済圏を構築

トップカテゴリー新設による質の向上を目指し、pookでは家事手伝いやDIYサポートなど、副業との相性抜群の手軽な案件も創出する。さらに、マーケティング力を駆使した高単価案件受注を目指す同社100%出資の新会社「QUANT」では、トップランサーとの協働を見据えながら、大企業との案件を確保。これらにテクノロジーという楔を打ち込むことで、同社は、ワンランク上のクラウドソーシング経済圏を構築する。

複数事業の展開でフリーランスの新たな拡大フローを構築

2008年にランサーズがパイオニアとしてスタートしたクラウドソーシングは、その後急拡大。追随企業も増大した。ランサーズも2016年の売り上げが21億円となり、この3年で7倍の成長を果たしている。一方で、誰もが登録できることが、品質低下を招き、結果、単価下落につながり、さらには、間接的ながらも無責任なライティングが社会問題になる事件が発生した。

9年前、時間と場所に捉われない新しい働き方をつくるというビジョンを掲げ、創業したランサーズ。様々な側面から大きなターニングポイントを迎えた同社は、今回の新戦略に伴い、そのビジョンを「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」に刷新した。新戦略は、低空飛行が続いたクラウドソーシングの地位向上に大きく貢献しそうだが、一方でその先には、フリーランス選別が加速する光景も浮かんでくる。その意味では、良くも悪くもフリーランスそのものの意識変革を呼び込むメッセージが込められたシフトチェンジともいえそうだ…。

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