
何事も続けていれば可能性は拓ける
ディナーをご馳走になり、経営相談に乗る企画を始めた意図
一度会社を潰した後、社長に復帰しようと決意して、最初に企画したのが「こだわり相談ツアー」でした。このツアーは、私がビジネスの相談に乗る代わりに、食事をごちそうしてもらうというものです。
自分に会いたい人などいるのか。食事代を払ってまで、来てくれるのか。復帰するにあたって私は、この企画で自分の立ち位置を確認しておきたかったのです。
告知を開始すると、何人かの人が申し込みをしてくれました。でも最初はドキドキでした。本当に来てくれるのだろうか、と。来てくれた時は、本当に嬉しかったです。二人目の人も、三人目の人も、心配をよそに、来てくれました。そうやって段々と、私は自分を信じられるようになっていきました。
何しろ三年も経営から離れていたので、憶えてくれているか不安でした。でも多くの人が憶えてくれていました。そして、もっと驚くことがありました。それは、ワイキューブ時代は知らなかった、という人がたくさん会いに来てくれたことです。多くの人は、「境目研究家」安田佳生に、興味を持ってくれていたのです。
なぜ多くの経営者は相談を持ってこなかったのか
社長でなくなってから、そして、もう社長はやらないと決めてから、私はずっと「境目研究」をやり続けていました。それは自分自身の疑問を掘り下げる仕事。会社、というものに対する疑問。働く、ということに対する疑問。生きる、ということへの疑問。経営への疑問。資本主義への疑問。
そういうものを、頼まれもしないのに、勝手に研究し、勝手に発表する、という仕事。仕事と言ってはいますが、もちろん報酬などありません。単なる趣味、というか、大きなお節介。それを三年間も続けていたのです。
何と、驚くことに、そのお節介によってファンが生まれていたのです。境目研究家のファン。それは私にとっては、衝撃的な出来事でした。こだわりツアーに参加してもらうお返しは、経営相談です。無料で経営相談に乗る代わりに、食事をご馳走してもらう。それが基本的なルールです。にもかかわらず、参加者の大半は、相談を持たずにやって来るのです。
彼らは、なぜ私にご飯を奢ってくれるのか。なぜ、酒を飲ませてくれるのか。最近になって、私にはようやく、その理由が分かるようになりました。彼らは単に、私を応援するために、来てくれていたのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。