働き方

この1年で働き方改革は前進したのか…

投稿日:2017年6月9日 / by

全国就業実態パネル調査の2回目の結果

働き方改革は三歩進んで四歩下がる? リクルートホールディングが開発したワークスインデックスの2回目の「全国就業実態パネル調査」の結果が公表された。全国の15歳以上の男女約4万人を対象としたパネル調査で、毎年実施。量的側面に加え、質的側面もあぶり出することで、働き方改革の進捗を明確にする。

2015年版では平均値が52.38だった同調査。1年が経過し、その数値はどう変化したのか。前回から上昇したのは、就業の安定(+1.7)、ワークライフバランス(+1.1)、学習・訓練(+1.1)の3項目。この点だけをみると、労働環境は安定し、労働時間も適切でワークライフバランスも充実しているようにみえる。

だが、マイナス項目に目を向けると雲行きが変わってくる。生計の自立はマイナス1.2ポイント、ディーセント・ワークはマイナス1.2ポイント。このことから分かるのは、収入の不安定と健全な職場環境が保たれていないということだ。プラス面と矛盾するようだが、その要因について同社では次のように分析する。

「ディーセントワークが低下している背景として、指標の内仕事量や負荷が適切であるが落ち込んでおり、職場における業務負荷増加が課題となっている。人材不足や採用難もあいまって、既存の従業員が担当する業務量が増加しているといえる。差別のない職場である、ハラスメントがない職場であるについても指標を押し下げる要因となっている」。

経年比較でみえてきた働き方改革の実像

ディーセント・ワークは、最低限保証されるべき就業条件が満たされているかを示すインデックス。改善という観点でも、ワークライフバランスは分かりやすい一方で、ディーセント・ワークは、表面上は分かりづらい項目ではある。働き方改革の文脈でも、それほど力点が置かれておらず、悪化の遠因となった可能性はある。

別の見方をすれば、長時間労働是正を実現すべく時間への意識は高まった。だが、変わらぬ業務量をこなせるだけの生産性の向上がまだ追いついていない。そんな悩ましさが透けてみえる結果ともいえる。

改善傾向のみられるワークライフバランスについても、企業規模によって差異があることは見逃せない。「残業時間がない、短い」という指標では、従業員が299人までの規模ではスコアがマイナスで、残業が増えている。一方、1000人以上の大企業ではスコアがプラスとなっており、残業が減っている。働き方改革が加速する中でも「実感がない」という声が目立つ元凶が、ここに透けてみえる。

全体としては、今回の調査結果からは改善の傾向がみられた印象だが、目を凝らせば実質的には悪化しているようにもみえる。これはまさに、現状のビジネスパーソンの肌感覚を象徴しているといえ、同調査だからこそ見えてくる実態といえる。

「残業は確かに減った。でも、業務量は減っていない」。こうした悩ましい声もよく聞かれる。それがそのまま反映されたような結果も出ており、2回目の調査終え、今後の調査継続により、働き方改革がどんな足跡をたどるのかが、より鮮明にあぶり出されていくことになりそうだ。

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