働き方

働き方改革に取り組まなかった企業の末路

投稿日:2017年7月28日 / by

識者が明かす、働き方改革に取り組む意義とは

政府の牽引もあり、働き方改革に取り組む企業が増えている。一方で、そんなことをしている余裕はない、という企業もあるだろう。そもそも必要ないという企業もあるかもしれない。だが、取り組まないその先に待ち受けるのは、厳しい末路だ。そうだと分かっていても、我関せずを貫けるのか…。

左から島田氏、小室氏、高橋氏、高橋氏、元榮氏

あしたのチームがさきごろ開催した「あしたの働き方改革シンポジウム2017」。同社代表の高橋恭介氏の基調講演で幕を開けたプログラムは、バルセロナ、アトランタ五輪で2大会連続のメダルを獲得した元マラソンランナーの有森裕子氏の熱いマネジメント論でヒートアップ。そして、働き方改革を実践する4人の識者のパネルディスカッションでピークを迎える。

登壇したのは、ワーク・ライフ・バランス代表の小室淑恵氏、千葉ジェッツふなばし代表の島田慎二氏、弁護士ドットコム会長で参議院議員の元榮太一郎氏、ベアーズ副社長の高橋ゆき氏。そしてファシリテーターを高橋社長が務めた。

事業として働き方改革に取り組む小室氏はまず、働き方改革をおざなりにする企業の末路を厳しく予告。「2019年春といわれる法改正を前に、企業はどれくらい残業するかの時間を公表する必要が出てきます。ここで、どんな数字を出すかで企業の行く末に大きな影響が出ます。当然、残業時間が多ければ、イメージは悪化し、優秀な人材から敬遠されることになるでしょう」と引き続き当たり前のように長時間労働を続ける企業は今後、生き残ることが困難であるとズバリ指摘した。

弁護士であり、経営者でもある元榮氏も、法の専門家の観点から、従業員をいい加減に扱う企業に待ち受ける末路を見通す。「これまで労働分野はどちらかといえばやり得が許されるかわいそうな分野だった。だが、今後は、パワハラなどはもちろん、長時間労働など、法が絡んでくることをないがしろにする企業は生き残ることが難しくなるでしょう」と明言。これまで以上に労働者に対する違法な行為が、人材離脱や採用難など、企業へのしっぺ返しとして取り返しのつかないものになると通告する。

島田氏は、劇的に働き方改革を推進した実践者としてアドバイス。「ウチは、とにかく日本一労働時間が短く平均給与の高い会社を目指し、ムダを徹底排除していった」と具体例を示した。雑談禁止、喫煙禁止、スマホ禁止、SNS禁止…。息が詰まりそうになる禁止のオンパレードだ。当然、最初は社内の反発もあったというが、トップである島田氏がひるむことなく断行。明確な目標があることで、徐々に融和し、結果、残業体質を見事に改善した。

高橋氏は、仕事好き企業にありがちな悩ましい課題として「残業を苦にしない」ことを挙げ、その上で、それでも改善しなければ、企業の成長はないことを力説。残業を減らす努力は当然として「いい会社をつくる」というトップとして方向性を明確にすることで、少しずつでも体質改善していくことの重要性を指摘した。

働き方改革に取り組まないことによる大き過ぎるダメージ

働き方改革というと、残業を削減することと捉える企業も少なくないだろう。だが、4人の話しからみえてきたのは、その肝はそうした次元を超えたところにあるということだ。つまり、表面的に定時帰宅を実現するのではなく、法や企業存続といった観点から全員が当事者の意識で強い危機感を持って抜本的に改革しなければ、その先に厳しい末路が待ち受けているということだ。その軸となるもののひとつとして、4人は人事評価制度の重要性を説く。

テレワークや在宅勤務、フレックス制など、働きやすさをサポートする仕組みや制度を導入する企業は増えている。それも確かに有効だが、重要なことはその本質を理解した上で取り組むことだ。制度によってどれだけ生産性が向上し、社員のモチベーションが上がるのか。そうした、業務とその成果の可視化による評価が連動しなければ、どんなに耳触りのいい制度も画に描いた餅でしかない。

企業にとって、売上げはもちろん重要だ。だがもはや、かつてのようにがむしゃらに頑張るだけでは十分な売上げは上げづらい。そうしたかつての成功法則を変革することが働き方改革の根幹にある。その意味では、売上げを上げる以前に、より質の高い成果を出すための職場づくりや優秀な人材の採用、仕組みづくりが重要となる。それらを成し遂げた企業が恩恵を受けやすくなるよう、法や価値観も変質しつつある。もはや、働き方改革に無頓着であることは、没落とイコールといっていい状況にある。その取り組み方は各社各様だが、取り組まないことによる代償の重さは共通している…。

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