
深化するクラウドソーシングが加速する“正社員解体”
弾力化する職場と雇用のカタチ
クラウドソーシングの質向上の先にある次代の働き方
職場の弾力化が進む中で、クラウドソーシングも深化している。これまで、主にフリーランスと案件をつなぐプラットフォームとしてその役割を担ってきたクラウドソーシングは昨今、正社員の副業を促進する場として機能を増強し、人材不足や人生100年時代に対応した次世代の“仕事斡旋プラットフォーム”へとシフトしつつある。
ランサーズが新たにリリースした「ランサーズトップ」は、主に、副業や独立へ向けたチャレンジを視野に入れる優秀なエンジニアやクリエイターをその対象とする。フリーランスも対象だが、目的はランサーの質向上。そのため、登録には書類審査はもちろん、スキルチェック、面談をクリアする必要がある。匿名利用も可能な通常版とは、敷居の高さが段違いだ。
審査をそこまで厳格に行う分、案件は、いわゆる副業の域を超えた高報酬のものが紹介される。もはや、ちょっと得意を活かして手軽に行う副業ではなく、正社員が業務で培ったプロのスキルを時間で切り売りし、スポットながらも本業並みに力を注ぐ。まさに正社員の「複業」を促進する側面を色濃くにじませるサービスとなっている。
正社員のスキルを有効活用してベンチャー支援
クラウドワークスの新サービス「BRAIN PARTNER(ブレーンパートナー)」はそこをさらに踏み込んだカタチの内容といえる。ハイスキル人材の副業を斡旋する点は同じだが、同サービスでは、ノウハウやスキルをベンチャー企業の支援に活用してもらうことに特化している。
こうしたサービスは、大企業の元役員などが、ノウハウやネットワークを活かし、サポートするスタイルが多いが、同サービスでは、現役バリバリの社員の活用を見込み、ベンチャー企業の現場でチームメンバーと協働し、課題解決に伴走できる点を強みとしている。すでに類似サービスもいくつかあるが、クラウドソーシング大手が参戦することで、こうした動きを一気に加速させる可能性はある。
同社では、「現在は元社員(独立・フリーランスの方など)の方が登録の7割以上を占めていますが、今後働き方改革やテレワークの普及によって、現役社員も増えると見込んでいます。これまで副業を認められている会社でもビジネス系職種で活動できる選択肢が少ない方に、本サービスにより、スキルやノウハウのあるビジネス系職種の人材の副業を促進できるようサービス開発していきたい」としており、副業解禁の流れを受け止め、その受け皿の整理を進めながら、日本産業の復興を底上げしていく意向だ。
安定した仕事のないフリーランスの仕事探しのインフラとして拡大するクラウドソーシングが、副業解禁の流れを受け、正社員のスキルにも着目。その最適化を目論む先には、自ずと人材不足と人生100年時代を乗り越える道筋がみえてくる。弾力化する職場を踏み台にして、人生の充実を手繰り寄せられるかは働く人次第だが、経済の閉塞感に反比例するようにそれを可能にする選択肢はどんどん拡がっている。(続く)