
ビジネスの中心が小さな会社や個人へシフトすると何が起こるのか
変人・安田の境目コラム
誰でも簡単に持てるようになったメディア
自分のメディアを持つこと。かつては、そんなこと、夢のまた夢でした。ラジオ、テレビ、新聞、などのメディアを持つ。あるいはそこで、自分の番組や、自分のコラムを持つ。それは一部の人にだけ許された、特別なこと。お金持ちや、有名人だけの、特別な領域。
でも、その状況は、変化しました。最初の変化はインターネットによって、もたらされました。誰のものでもない新しいメディアが、そこに誕生したのです。
とは言っても、ネット上でメディアを持つには、やはり莫大な資金が必要でした。メディアを立上げること自体は簡単ですが、そこに人を集める広告費が不可欠だったからです。結果、ネットメディアも、一部の人のものでした。
そこに、更なる変化が起こる訳です。変化を起こしたのは、Facebook、Twitter、YouTube、インスタグラム、などのSNSサービスと呼ばれるもの。SNSは、広告の価値を、引き摺り下ろしました。一方的な広告よりも、口コミのほうが信用出来る。知り合いの口コミであれば、なおさら信頼出来る。そういう常識を、作り上げてしまったのです。
今や、消費者は、広告を見ない。広告を見ても、信用しない。広告を見ても、買いたくならない。そうなってしまったのです。
でも、そうなって困るのは、従来の会社です。メディアを運営している会社や、メディア広告によって売上を上げている会社。
一方、小さな会社や個人は、一向に困りません。いや、むしろ、生活しやすくなりました。自分で情報を選べるようになったし、自ら情報を発信出来るようにも、なったのです。
ビジネスの中心が個人へ移ることで起こるパラダイムシフト
今や自分のメディアを持つことは、誰にでも出来ます。広告費を掛けなくても、人を集めることも出来ます。全く無名だった個人が、自ら発信した情報や、自ら運営するメディアによって、有名人にもなれるのです。
先日、「ほぼ日」が上場しました。ほぼ日とは、糸井重里さんが運営する、かなりニッチなメディアです。でもそこには多くの読者がいて、色んな商品が売れています。
糸井重里さんは、無名な個人ではありません。とても有名なコピーライターさんであり、テレビでタレント活動もしていた人。でもそれだけが、成功の理由ではないのです。
今後、本当に無名な人が作ったメディアが、上場する日が来るかもしれません。もっとニッチで、もっとマニアックで、1000人にひとりも知らないようなメディア。ビジネスの中心が、大きく動きつつあるのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。