
在宅勤務はなぜ、なかなか広がらないのか…
在宅専門社員の採用を開始した企業の狙い
フルタイム在宅可能な求人にIT人材が殺到
ジワジワと広がりをみせる在宅勤務の導入。ハード面での環境が整備されている実状を考えれば、いまだ数%という数字は遅々としている印象だ。そうした中、在宅勤務専門の社員を募集する企業も現れた。CLINKSは、中途人材をフルタイム在宅で正社員採用する募集枠を設置。クラウドソーシングでも派遣でもない、安定と最小限の縛りしかない働き方に、優秀な人材が押し寄せているーー。

在宅勤務専門の社員募集ページも設置
人材確保のために労働環境を改善する企業は少なくない。福利厚生を通り越し、いまやいかに個々の生活を業務と融合させるか、にまでその領域は深化している。在宅勤務の導入はその代表的施策のひとつといえる。子育てや介護といった事情を抱えていたり、マイペースで働きたい人にとって、オフィスという物理的制約から解放される在宅勤務は、自分の都合を優先するには最適といえる働き方だからだ。
なぜ在宅勤務専門の採用窓口を設けたのか
同社がその在宅勤務専門の採用窓口を設けたのには2つの理由がある。ひとつは、在宅勤務人材を企業のアウトソースとして提供するサービスを開発したから。もうひとつは、全社的に在宅勤務を導入し生産性向上を推進するためだ。
在宅専門の人材サービスは「オフィスレススタイル」の名で、企業に在宅エンジニアとテレワークに必要なICT環境を提供するもの。在宅専門の採用枠設置は、このサービスを担う人材確保がその目的だ。会社の利益と働く側の都合をうまい具合に組み合わせた格好といえる。その雇用形態は正社員で、フルタイムでの在宅勤務が可能。在宅可ではなく、フルタイム在宅勤務OKなので、働く側にとっては自由度が高く、正社員なので「安定」もある。家庭事情などの制約がネックでフルタイムでのオフィス勤務が困難な人材にとっては、理想に近い働き方といえるだろう。

在宅専門の人材募集を行う狙いを明かす疋田氏
ITエンジニアの就労環境向上に在宅勤務を取り入れる企業は珍しくない。だが、そのほとんどは限定的なもの。フルタイムで在宅OKという企業はまだ少数派だ。ましてや正社員となるとかなり希少といえる。
同社テレワークビジネスエッセンシャル事業部次長の疋田大輔氏が解説する。「一度、求人広告を出しましたが、非常に反応がよかった。特にフルタイムで在宅OKという部分がかなり刺さったようです」。まだサービス自体への発注は少ないというが、オフィススペースがないという理由で在宅派遣のオーダーがあったともいい、今後、さまざまな広がりをみせていきそうだ。
社会全体の人手不足解消も視野
同社が在宅勤務に着目するのは、人口減少による人手不足対策の意味合いもある。子育てや介護などでやむを得ずフルタイムを諦めている人材にとって、在宅勤務は課題解決の可能性を多分に秘める。同社が、正社員として在宅人材を抱え込み、あてがう案件さえしっかり確保できれば、文字通り埋蔵人材の掘り起しになる。それはつまり、日本全体の人手不足解消をサポートすることにもなる。あえて在宅専門にこだわっているのは、そうした側面もある。
働く側はもちろん、企業にとっても悪いことのない在宅勤務。導入を躊躇する理由の大半はセキュリティ面といわれるが、同社の「オフィスレススタイル」には、その“在宅勤務”を外部へ提供するのだから、当然その対策がしっかりと盛り込まれている。その意味では、企業が制度として在宅勤務導入をする際のヒントが凝縮されているともいえる。

人員の選定や遠隔カメラなどの活用で在宅勤務の運営上の不安をクリアしている
まず、許可するのは専門知識を持った経験豊富な人材限定。顔認証機能を搭載した労務管理ツールの活用などでセキュリティ環境を堅牢にする。勤務状況はPCに設置のカメラで随時撮影し、1時間おきに3枚撮影する。同社が在宅人材派遣で適用するこの3つ仕組みを実践すれば、とりあえず在宅勤務導入は問題なく行えるだろう。
総合的なフォロー体制で目の前にいない不安をクリア
リモート専門社員の採用においては、コミュニケーション不足も課題となりがちだ。この点については、随時チャットでやり取りする。社員専用ポータルで毎週業務報告するなどで、各自が情報共有。リアルでの部活動なども積極的に推奨し、フルタイム不在のデメリットをうまく補完している。
どうだろう。よほどアナログにこだわっていない限り、もはや在宅勤務の導入へのハードルは決して高くはないハズだ。職場環境として、少し頑張る程度で導入できるレベルに達する企業も少なくないだろう。やるか、やらないか…。フェーズはもうそこまで来ている。同社疋田氏が補足する。「在宅専門社員を採用するにあたっては、導入前に各部門でいろいろとテストしましたが、フルタイム在宅でも業務に支障がないことが分かったので、最終決定に至りました」。
いまだ普及率数%といわれる在宅勤務制度。その要因が、安全面や“終日不在”にあると考えているなら、そもそも社内での情報漏えい対策がキチンと出来ているか。そこを検証することから着手した方がいいかもしれない…。
【会社概要】
社名: CLINKS株式会社(クリンクス)
所在地:本社 東京都中央区日本橋人形町1-11-2 川商ビル2F(受付)
設立:2002年12月19日
役員構成 :
代表取締役 河原 浩介
取締役 元木 喜仁
取締役 高野 拓郎
取締役 武田 州平
取締役 中村 純司
従業員数:555名(2017年12月31日現在)
事業内容:ITアウトソーシング事業、システム開発事業、教育訓練事業
URL:http://www.clinks.jp/